2人⑪
洗濯物をタケルの濡れた服と混ぜて洗濯機に入れた。最近買い替えた乾燥機能付きの洗濯機が役に立った。
熱冷ましのシートを買いにコンビニへ出かけた。明日は土曜だ。こんな時間に来るならタケルも明日は休みなのかもしれない。
いろいろ話したい。でも、明るい気持ちになったのは一瞬で、蓮のことが浮かんだ。
それにしても2人はあまりに似ている。物静かな雰囲気、話しをするときの目もそっくりだ。タケルも蓮も互いに会ったらきっと驚く。
蓮は、どうしてあんなに変わってしまったんだろう―――――
家に帰るとタケルはすっかり眠っていた。買ってきた熱冷ましのシートを箱から出して額に貼った。寝顔を見ていると昨日もここにいたかのような感覚がする。
お風呂に入ってから敷布団を出し、それから暫くテレビを見ていた。洗濯機の方から音が鳴って洗濯物を取り出した。すべて畳み終えて布団に入り、時々ベッドを見ながらそのうち眠りについた。
朝、目を覚ますとタケルがいなくなっていた。置いてあったタケルの服もなくなっている。
携帯電話を手に取りアドレス帳からタケルの番号を探した。2年前、新幹線に乗って行ってしまった倉前恭也は私からの電話に一度も出なかった。発信ボタンを押すと呼び出し音が鳴り始めた。まだこの電話番号は繋がる、そうわかると動揺した。タケルは会いに来てくれた。恭也の人生を邪魔したくない、そう言っていたのに。諦めたはずの想いが鼓動を立てて蘇ってくる。
電話はガイダンスに切り替わり切れてしまった。タケルはまた何も言わずに姿を消した。
あれからタケルが家を訪ねて来ることはなく、連絡も返ってこない。私は胸に燻るものを消せずにいる。
蓮に何度か会いに行った。変わらず冷たい表情で、決して目を合わせようとしない。そして、手話をすることもなくなってしまった。来るなと言われないだけまだ救いだ。
蓮の様子に変化が見られるようになったのは8月に入ってすぐのことだった。日曜の昼間、病室を訪ねると蓮はどこかへ行っていた。少し待つと看護師に車椅子を押されて戻ってきた。
「こんにちは」
「こんにちは。青谷さん、今日あんまり暑くないし、一緒に散歩でも行って来たらどうですか?」
蓮は頷かない。
「蓮、行こう」
看護師は私に目で合図すると、それじゃ、と言って去っていった。蓮はただ宙を見ている。思い切って車椅子を押して病室の外へ出た。
「ちょっとだけ外の空気吸いに行こう」
エレベーターで1階に下りた。それから敷地内の垣根の横を歩いて一周した。話しかけることもせず、ただゆっくり歩いた。たったそれだけなのに、病室に戻ると蓮の目にはなぜか涙が浮かんでいた。




