2人⑩
インターホンのモニターを見に行くと男の人が立っていた。その顔を見て疑問が浮かんだ。
「…蓮?」
モニターに映るその人は少し俯いてから声を出した。
「夕夏」
「なんでここにいるの?」
「…」
「とりあえず開けるね」
オートロックの解錠ボタンを押した。蓮がここにいるはずがない。それに、喋っていた。
少ししてからもう一度インターホンが鳴った。胸の音が体に響いている。そっと歩いて玄関の覗き穴から外を見た。
蓮じゃないなら、この人は……
「タケル?」
ドア越しに問いかけると返事がきた。
「うん」
手が震える、鍵を開けてドアを押した。
「久しぶり」
タケルは寂しそうに笑った。傘を持っているのに随分濡れている。
「どうしてそんなに濡れてるの?」
「途中で降ってきて、ここに来るとき傘を買ったんだ」
「そうなんだ?あがって」
「ありがとう」
タケルは玄関に入ると濡れた服を気にした。
「お風呂沸かしたところだから入って。風邪引くよ」
「いいの?」
「うん。着替え置いとくから」
「着替え?」
「…ほら、前うちにいたとき着てたやつ」
「まだあったんだ」
「うん」
タケルは私の顔を見たまま立ち尽くした。寂しそうなその表情に戸惑う。
「急に来たからびっくりした。元気だった?」
「うん。夕夏は?」
「元気だよ。ほんとに風邪引くから早くお風呂入って」
「わかった」
タケルは浴室へいきドアを閉めた。
シャワーの音が鳴っているのを確認してから浴室の前にタオルと服を置いた。そこにタケルがいる。なんだか変な感じだ。
タケルは浴室から出てくると部屋の中を眺めた。
「懐かしい?」
笑って見せた、タケルは何も言わず微笑んだ。
「コーヒーでいい?」
「うん、ありがとう」
台所で電気ケトルのスイッチを入れた。カップにインスタントの粉を入れながらどんなことを話そうか考えた。タケルはどうして突然来たんだろう。
カップを2つ持って部屋へ運ぶとタケルは座ってベッドにもたれかけていた。
「コーヒー淹れたよ」
タケルは目を瞑ったままだ。
「タケル?」
うっすら開けた目はぼんやりとしている。
「もしかして、体調悪いの?」
「大丈夫」
額を触って温度を確かめた。熱い。
「びしょ濡れでどこにいたの?」
「…」
「ベッドに寝たほうがいいよ」
腕を持ち上げるとタケルはぐったりとしたままベッドに座り横になって目を閉じた。
「…会いたかった」
タケルは弱った声で言った。布団をかけて顔を見る。すぐに返せそうな言葉を私は飲み込んでしまった。




