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2人⑤

時々、変な夢を見る。擦りガラス越しのようなぼやけた光景、音はなく、色が散りばめられている。同じ夢を何度か見た。それが気になってパステルを手に取りスケッチブックに描いてみた。けど、何を描いてるのかわからない下手さに気を落としてやめた。

次の日、理久が面会に来てくれた。最近店が忙しいらしく会うのは髪を切ってくれたとき依頼だった。理久はベッドに置いてある本を見て手話を勉強してるのかと聞いた。文字ボードを膝に置き、きっかけを話した。髪を切ってくれた日に僕を見ていた子が柳瀬さんの知り合いだった、一緒に面会に来てくれて仲良くなって、指文字の表を持ってきてくれたと伝えた。説明が長くなると文字を探す間に話がまとまらなくなる。

夕夏も勉強してくれて手話で会話してると言うと理久は「その子、優しいな」と言って感心したようだった。理久はベッドの脇に入れていたスケッチブックを見つけた。最近見る夢のことを話して絵を見せた。何に見えるか聞いてみると理久はわからないという顔をした。僕は笑ってスケッチブックを閉じた。それからも暫くぼやけた視界の夢が続いた。夢なんて覚えていないことのほうが多いのに、なぜかその類の夢はいつも僕に何かを訴えかけるように現れる。



夕夏が会いに来てくれることが嬉しい。でも、仕事帰りに来ることもあって疲れている様子が気になる。本を読んでいるのもきっと話題を作るためだと思う。気が滅入っている日はそれがわかるのか、励ますように明るく振る舞ってくれていた。そんな夕夏を心配させたくなくて会うときはいつも不整脈が出ないよう願ってた。けど、とうとう出てしまった。夕夏はショックを受けたようだった。

どうしてこんなことになったんだろう。倒れる前は風邪引くこともほとんどなかったのに、手足は自分のものじゃないみたいに動きが鈍く、声すら出せない。

そんな感傷を引きずっていた時、医者から外泊許可が出た。兄貴の車に乗せてもらい柳瀬さんの家へ食事しに行った。理久がいて、驚くことに夕夏もいた。

2人は並んで座っていた。柳瀬さんは夕夏と僕が手話で会話できるのを知っていて、夕夏と向かい合わせになるように席を用意してくれた。

久しぶりに集まって食事をするのは賑やかで楽しかった。自分から話ができなくても、みんなが楽しそうに話しているのを見ると嬉しくなった。柳瀬さんと奥さんは相変わらず仲が良くて、初めて子供にも会えた。帰り、理久は車を修理に出していて兄貴の車に乗った。夕夏は家が僕達とは反対方面で、柳瀬さんが送ってくれることになった。

その日は兄貴の家に泊まった。寝る前にいろんなことを考えた。リハビリのこと、退院のこと、これからの生活について。そして頭から離れないのは言葉を交わして笑う理久と夕夏の姿だった。

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