2人②
カットモデルのお礼にと、理久君からご飯に誘われた。仕事がある日は遅い時間になるらしく、行くのは月曜の夜になった。私は蓮の体調が気になっていた。詳しいことを聞きたいと思ってタイミングをみた、でも、楽しそうに話をしている理久君の顔を見るとなんとなく聞きづらかった。
水族館行かない?そう言って理久君は携帯電話の画面を見せた。ネットで紹介されていたのは最近ナイトショーを始めて話題になった水族館だった。日曜日が早番で、夕方早くに出られそうだからどうかと誘われた。その日の昼は蓮のところへ行く予定だった。
日曜、蓮は見た感じから機嫌が良かった。どうしたのか聞くと、外泊許可が出て水曜の夜は柳瀬さんの家で食事することになったと話した。その後はお兄さんの家に泊まるらしい。嬉しそうに手で語る蓮を見て安堵した。会っている間、顔色が悪くなることはなかった。もしかしたらこれから良くなっていくのかもしれない、そう考えることにした。
帰り際、今から理久君と水族館に行くと話した。蓮は“ 楽しんできて ”と言ってその手を振った。
夜の水族館は幻想的だった。夜景をバックに観るイルカショーから始まり、色とりどりのライトに囲まれたクラゲの水槽、ペンギン達はくつろぎ、青が色濃く見える大きな水槽にはカラフルな魚たちがふわふわと漂っていた。蓮はここを気に入るかもしれない。そう思ったのは初めて指文字で会話をしたとき “ なにいろが すき? ” と聞いた私に “ あおいろ ”と答えたことを思い出したからだ。蓮は歩けるように頑張ると言っていたけど、ここなら車椅子でも大丈夫そうだ。
「連れてきてくれてありがとう、楽しかった」
「うん、俺も。これあげる」
そういって理久君はさっきから持っているお土産コーナーの袋をくれた。
「これ、私にだったの?」
「うん。開けてみて」
テープを剥がして袋の口を開くと白くて丸いものが見えた。取り出してみるとアザラシのぬいぐるみだった。
「可愛い…」
「だろ?なんかモチモチしてるんだ、それ」
「ほんとだ~」
「気に入った?」
「うん!ありがとう。ごめんね色々」
「ごめんって、何で?」
「カットモデルって言っても私は何もしてないし、水族館まで連れてきてもらって、お土産まで」
「いいよ、俺がそうしたかっただけだから」
「ありがとう」
「元気出た?」
「…え?」
「ご飯行ったとき、元気なさそうだったから」
「あー、あれは…」
「悩みとかあったら聞くし、いつでも連絡して」
「うん。ありがとう」
理久君は疲れた顔ひとつ見せず私を家の前まで送ってくれた。
家に着いて携帯電話に充電コードを挿すと、柳瀬さんからメッセージが入っていることに気が付いた。内容は、蓮が言っていた食事会への誘いだった。




