出会い⑱
外に出ると水色の軽自動車が停まっていた。
「乗って」
「はい」
車のロックが開いて助手席に乗った。
「すいません、急に」
「気にしないで」
エンジンがかかって車は動き出した。
「夕夏ちゃんだよね?」
「え」
「蓮が話してたから」
「あー、そうだったんですね」
「普通に喋ろうよ、タメなんだし」
「…うん」
蓮がどんなことを話してるのか気になった。
「蓮さ、夕夏ちゃんが来るようになってから明るくなった気がするんだ。ありがとう」
「ほんと?」
「うん。手話教えてくれたって」
「私は最初に印刷して渡しただけなんだ。あとは蓮が覚えるの頑張ったから」
「……そっか。そういえばさ、夕夏ちゃんって柳瀬さんの職場の後輩なんだよね?なんで蓮と知り合いになったの?」
「それは」
自分から説明するのはなんだか変だと思った。迷っていると駅が見えてきた。
「駅、こっち側でよかった?」
「うん。ありがとう」
車は階段前の路肩に止まった。
「あのさ」
ドアに手をかけようとした途端だった。
「俺、美容師やってんだけど、よかったら今度カットモデルやってくれないかな?」
「カットモデル?」
「うん。ダメかな」
「いいよ。ちょうどカット行こうと思ってたし」
「え、まじ?」
そう言って後部座席に身を乗り出し鞄を取ると、小さなケースから名刺を取り出して私にくれた。
「これ、俺の名刺。携帯ここに書いてるけど、メッセージいま交換してもいい?」
「うん」
私は携帯電話を取り出してアプリを開いた。読み取りをすると"Riku"と表示された。
「もしかして、この間蓮の髪切ったのってリク君?」
「当たり」
「病院でカットってできるんだ」
「できるよ。個室だったから病院にお願いしてみたらOKだった」
「そうなんだ。すごいね」
「カット、夕夏ちゃんが都合いいときに合わせるからまた教えて」
「わかった。送ってくれてありがとう」
「うん。またね」
車を降りて手を振った。クラクションが軽く鳴って車は真っ直ぐに進んで行った。
電車を待つ間、名刺を見た。河崎理久とフルネームで印字されている。アシスタントじゃなく、スタイリストの肩書がついている。店は家から電車で2駅のところだ。
携帯電話が震えて画面を見ると、理久君からのメッセージだった。
引き受けてくれてありがとう。
施術料は取らないし、お礼にご飯奢るから!
またメッセージの通知がきた。蓮からだ。昨日私が送ったメッセージの返信だ。
リハビリすすんでるよ 歩くのはまだ無理だけど
手すりを持って長く立っていられるようになった
いつ退院するんだろう、ふとそう思ってリハビリはどんな感じかと聞いた。
直接退院のことを聞くのは少し気が引けて、そんな聞き方をした。蓮に返信を打った。
退院できる日が早く来るといいね。また遊びに行くね
送信してから今度は理久君に送るメッセージを考えた。電車が着いて乗り込み、シートに座ると急に眠気が来て携帯電話を鞄に入れた。




