出会い⑭
「本、好きなんですか?」
私が聞くと彼は頷いた。
「2人とも連絡先交換したら?」
柳瀬さんが言った。私たちは目を合わせてそれぞれ携帯を出した。
「私が読み取りの方しますね」
メッセージアプリを開いて操作した、彼を見ると指を動かすことがあまりスムーズにできないようだった。それで私は言った。
「代わりにやりますよ」
手を差し出すと彼は自分の携帯をのせた。コードを読み取ると青谷蓮の名前が表示された。アイコンにはロードバイクの写真が設定されている。
「よし、これで2人は友達だ。蓮、今度外出許可もらって家に遊びに来いよ。リクも呼んで久しぶりにみんなで飯食おう」
柳瀬さんが誘うと彼はやや明るい顔つきで返事をするように瞬きをした。
斜め前に座って話していた女性3人が立ち上がった。時計を見るともう5分で8時になろうとしていた。柳瀬さんも気が付いてテーブルに出していた本を袋に直し立ち上がった。
「今日は時間なかったけど、またゆっくり来るよ」
彼は車椅子を押そうとした柳瀬さんの手を断ってボードを車椅子の内側に差し込むとホールの方へ向かった。
エレベーターが来るのを待つ間、柳瀬さんの話を聞く彼の横顔を見ていた。急に目が合ってつい視線をそらした。
エレベーターに乗り込み振り返ると彼は微笑んで手を振ってくれた。
「じゃあな」
柳瀬さんがそう言って私も小さく手を振った。
「センパーイ、最近よく携帯見てますけど何かありました?」
弁当の卵焼きを口にした途端、宮園さんは聞いた。卵焼きをよく噛みながら時間を稼ぐ。
「…別に」
いい返事を思いつかなかった。
「先輩ってごまかすの下手ですよね。いい感じの人でもできたんですか」
「いや、そんなんじゃないよ。ただの友達」
「それって男ですか?」
「うん…」
やっぱり、という顔になる宮園さんを見て困った。
「進展あったら私にも教えてください」
語尾にハートをつけて宮園さんは笑った。
「先週行った柳瀬さんの家楽しかったなー。美蘭ちゃん可愛かったし。また行きたいですね」
「そうだね。そういえば美蘭ちゃん宮園さんに懐いてたね」
「はい!私親戚に小さい子が多いから慣れてるんです」
「そうなんだ?宮園さんって妹タイプに見えるのに意外」
「これでも結構小さい子からモテモテなんですよ」
「へえ」
休憩室のドアが開いて柳瀬さんが入ってきた。
「お疲れ様です」
「お疲れ様、外暑くなってきたね」
「ここ座ってください!」
宮園さんが荷物を寄せると柳瀬さんは座った。
「柳瀬さん、また先輩と家に遊びに行ってもいいですか?」
「うん、来てよ。沙織もたまに人が来てくれた方が気分転換になるみたいだからさ」
「本当ですか!?嬉しい!」
「まだ美蘭が小さいから家にいる時間が長くてね」
それから宮園さんは柳瀬さんと次のご飯会について話し始めた。
私は弁当を食べ終わり携帯を持って給湯室へ向かった。
冷蔵庫に入れてあったフルーツ牛乳のパックを出して飲んだ。携帯の画面をつけるとメッセージが来ていた、送り主は青谷蓮だ。




