高2病勇者、 パーティーから追放される。
勢いだけで作ってみました。
後悔はしています。
僕こと、桐谷たけるが召喚されたのは、インターハイ予選の最中だった。
大会の最中に急に霧が出てきて、嫌だなと思った瞬間に違和感を感じた。
「あれ、急に石畳になったぞ? もしかして、道に迷った?」
「もしかして、街中で集団遭難?}
近くを走っていた他校の選手たちも、困惑しながら全員が立ち止まった。
「伝説の勇者殿たちよ、よくぞ聖女の召喚に応じてくれた。
朕は、インター聖帝国、7代皇帝、インター7世だ。 姫よ説明を頼む 」
「初めまして、勇者様方、突然の召喚で驚いていると思いますが、自己紹介させていただきます。
と私は、インター聖帝国、インター7世の娘にして当代の聖女を務めさせていただいております、クラウディアと申します。」
「勇者様方には、魔王を討伐してこの世界を救っていただくために、女神様の導きの元,召喚いたしました。」
霧が晴れたと思ったら、絵本に出てきそうな王様とお姫様が、そんなことを言い出した。
「やれやれ、勇者召喚かよ、自分の世界の命運を他の世界の人間に託すなんてどんな神経してるんだか」
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召喚されてからの1年は、ひたすら訓練と座学に日々だった
勇者召喚で喜んでいたのは、最初の数日だけで、そのあとは本当につらかった。
何が一番つらかったって、勇者召喚はいろんな国で、年に数回行っていて、僕が特別選ばれた訳じゃなかったことだ。
なんてことはない、過去に何度も勇者が魔王を討伐しているから、呼ばれているだけだった。
朝は日の出とともに起床、剣や武術の鍛錬。 お昼からは、魔法と一般常識などの座学。
日の入りとともに、どのように眠る。週に1回ぐらいの割合で休日と行軍訓練はあったけど、
基本的には、城内の宿舎、訓練場、食堂、教室をぐるぐるまわるだけの単調な日々が続いた。
単調な日々に嫌気がさして逃亡する勇者もいたけど、だいだい1週間から10日くらいで戻ってくる人が多かった。
どうも勇者はかなり大切にしてもらっているらしく、宿舎は貴族みたいな偉そうな人と同じ場所、食事も元の世界には負けるものの高そうなものが多かった。
冒険者にあこがれたはいいものの、中世レベルの生活に耐えられずに戻ってくる人が続出していた。
僕たちの1月前に召喚されたサラリーマン勇者が「こんなホワイト環境を逃げ出すなんて」と社畜丸出しの言葉をいっていたのを聞いて日本の労働環境の悪さを馬鹿にしていた。
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今日は訓練終了の式典とともに、国から紹介された人材とパーティーを組んで、魔王討伐に出発する日になった。
「たける、訓練完了おめでとう。 剣も魔法も攻撃力こそそぼしいものの、盾の扱いや補助魔法や勇者に相応しい素晴らしいものに成長してくれた。」
「魔王を討伐して、平和な世界をつくってくれることを期待しているぞ‼ 」
この国の筆頭騎士であり、勇者指導の責任者であった、ブラン隊長から暑苦しい祝辞をいただいた。
「はいはい。ブラン隊長ありがとうございます。 まぁ魔王は他の人が倒すと思いますので、せいぜい勇者の名を汚さない程度にがんばりますよ。」
「たける、君のそういう諦観を治せなかったことは残念だった。素質だけで言えば、かなりの伸びしろがあるだけに残念だ。」
「その素質も俺より上は吐い捨てるほどいるでしょうに。」
ブラン隊長は僕の言葉に苦笑いしながら、パーティーメンバーが待機している部屋の場所を教えてくれた。
部屋にはいると、赤・青・黄の信号みたいに髪色が分かれた女の子が3人椅子に座っていた。
「知っていると思うけど、自己紹介させてもらうよ。 僕の名前はたける。君たちと勇者パーティーを組むことになった。適当によろしくお願いするよ。」
「適当? わ、わたくしは、セーリィーア・ブレイブと申します。インター聖帝国の第14番目の姫です。皇位継承順位は57位です。
王位継承者といえど、パーティーメンバーに上も下もありませんので、気軽にセーラとお呼びくださいませ。
職業は神官で、癒しと光の魔法を得意としております。護身術程度にナイフと格闘術を収めております。
勇者様とご一緒させていただくこと、誠に光栄です。魔王を討伐し、この国の平和に平和をもたらしましょう。」
まず金髪の女の子、セーラが僕の言葉に引っ掛かりを覚えながらも、見惚れてしまうような笑顔で自己紹介をしてくれた。
「あたしは、アリアリーゼ・リア・グリフォニアよ。 宮廷魔術師グリフォニア子爵の娘であたし自身も見習いとして城に控えさせてもらっているわ。
アリアでいいわ。
職業はローブでわかると思うけど、魔法使いよ。炎、雷の魔法をとくいとしているわ。他の属性も苦手ではないから、魔法で困ったら相談して。
近接戦闘は得意としていないから、浮遊魔法で飛びながら、小さい魔法を乱れ打つという戦法を好んでいるわ。範囲魔法は足を止めないと
打てないから、前衛のたける様には頼ることが多くなると思うわ。よろしく。」
次に、赤髪の一番小柄な女の子、アリアが自信満々に挨拶してくれた。
「最後は某か、ミオだ、スラム育ちなので姓はない。職業はサムライだが、長年Aランク冒険者をやっていたので、
刀以外の武器もおおよそ使えるが、メインは剣術だ。弓や盾も使えるがこのパーティーでは必要なさそうだ。
勇者パーティーのお目付け役と指導役も兼ねている。特定のパーティーを長く所属するのは初めてだが、魔王討伐して英雄になるつもりだ。
よろしく頼む。」
最後の、青髪のいろいろと一番大きい女、ミオがまるで演劇役者のように凛々しく宣言した。
自己紹介もそこそこに、僕たちは魔王討伐の任務にあたることにした。
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パーティーを組んでからの、僕たちはまさしく破竹の勢いで、活躍した。
初めての、任務はゴブリンに占領された砦の奪還だった。
実力からすると簡単な任務のはずだったけど、魔王の精鋭部隊 カオスサーペントが視察にきていたせいで、一時は全滅寸前だった。
アリアの全魔力を込めた、自爆同然の魔法で砦ごと爆破することで、何とか撃退することができた。
でも鬱陶しいことに、カオスサーペントに目を付けられることになり、幾度も交戦する羽目になってしまった。
勇者パーティーの任務は、魔王軍との戦い以外にも、治安維持活動も任務に含まれていた。
一つの山ひとつを要塞化していた賊討伐の際は、ミオが単身要塞に乗り込んだ。
食糧庫に毒を混ぜる、武器庫に火をかける、退路を破壊すると、獅子奮迅の活躍をしてのけた。
魔王軍に、町一つが呪われて、体力と魔力が回復できないようにされたことがあった。
セーラを中心として、勇者パーティーの神官や賢者なんかが力を合わせて呪いに対応し、呪いの元凶であるイビルタワー攻略の要となった。
その際、セーラは魔王軍に裏切っていた副町長のたくらみを看過し捕縛している。
僕は、福引で伝説の盾を手に入れた。
数ある勇者パーティーの中でも、指折りに成長した僕たちは光の風<シャイニングゲイル>なんて呼ばれるようになった。
名前を聞いた瞬間、あまりにも中二病なセンスに、吹き出してしまった。」
僕たちが活躍していく中で、死んでしまうものも少なくない中、戦いについていけなくなる勇者も多数存在した。
実力のない勇者のほとんどは、過去の勇者がもたらした莫大な資金やコネクションを活用して創立された<勇者ユニオン>の活動に
従事する者が多かった。
勇者ユニオンの活動は、一線級の勇者も活動しているものが多く、僕自身も決起集会やボランティア活動の依頼が来ている。
面倒で一度も参加したことないけど。
そんな感じで、僕の勇者人生は想像以上に順調なものだった。
あのときまでは……
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転機は四天王のひとり、<炎のハザル>を倒して、「俺は、四天王最弱、これからが魔王軍の真骨頂だ。」なんて、
テンプレを聞いて、サーラたちが深刻そうな顔をしているのをみて、あきれていた時だった。
「もー我慢なりませんわ、勇者様! 敵とはいえ、死力を尽くした相手の死ぬ間際の言葉を聞いて、その態度はどういうことですの!」
いつも穏やかなセーラが、珍しく感情的に僕に文句を言ってきた。
セーラの言いたいことがわからず、だまっているとアリアが胸倉をつかんできた。
「たける! 炎のハザルの最期の言葉を聞いて、勇者としてどいう行動をとるつもり、教えて頂戴!」
「どういうつもりって、いつも通り適当にやっていくだけさ、戦場において個人ができることなんて些細なことさ……。」
僕の言葉を聞いて、アリアとセーラはすごく悲しそうな顔をした。
そうだろ、光の風<シャイニングゲイル>なんて持ち上げられているけど、運や偶然に頼っている部分が多く
個人で戦況を変えることなんてできる訳がない。
そんなことを考えていると、それまで腕を組んで黙っていたミオが、胸倉をつかんでいたアリアの腕をはずした。
「ありがとう、ミオ」
「たける様、 光の風<シャイニングゲイル>を脱退してもらいたい。」
「はあ、急になんだよ。」
いきなりのミオの言葉に僕は少しいらだったものの、3人の顔を見て本気なのが分かった。
「僕の活躍は3人に比べたら、そりゃ地味だけど勇者として、それなりにやってきたはずだが、なぜパーティーを首にならないといけないん。
理由を説明してくれ! 。」
僕の言葉に3人はさらに悲しそうな顔になり、理由を説明してくれた。
理由をおおまかにすると3つらしい。
ひとつは、勇者としてネガティブな言動が多くて場当たり的な態度
自主訓練のひとつでもしていれば、もっと活躍できていたはずだと。
ふたつ目は、勇者ユニオンの活動に非協力的なとこと。
勇者ユニオンは世界最大級の影響力をもっているらしく、一線級の勇者である僕がユニオンの活動を行わないのは、許されないことらしい。
今まではセーラが代理として対応してきてくれていたが、ユニオンの集会で糾弾されたり、減らされた支援金をインター聖帝国が補填してくれていたらしい。
みっつ目は、パーティーメンバーのだれにも、手を出さなかったことらしい。
ちなみに、僕に魅力を感じているわけではないとのことだ。
勇者パーティーは、魔王討伐後に勇者を世界に留める役目もあるらしく、恋仲になるのは栄誉なことらしい。
特に、出世欲の強いミオは失望していたようだ。
このとき、僕のおかずや自家発電の回数まで調査済みだったことは、辛かった。
僕は何度も反論したが、論破されて、しぶしぶパーティーを追放された。
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追放された僕は、ミオと勇者ユニオンの紹介で、Sランク冒険者として暮らしている。
勇者としての能力は、冒険者として活躍するには十分すぎるほどだった。
僕は追放されたことが悔しくて、毎日酒場で愚痴をいう毎日だったのだけれど、
「だからね、マスター、僕はね勇者っだったんですよ。 毎日毎日、訓練して、魔王軍と戦って、少しは感謝してくても、
いいと思うわけですよ。」
仕事以外では、毎日こんな感じだった、
それでも、少しずつ追放された理由が納得できるようになっていった。
冒険者の生活は厳しい、体が資本の肉体労働が基本だし、失敗すれば命を含めてすべてを失う。
モンスター1体倒すのも命懸けだ。
冒険者ギルドは、勇者ユニオンやインター王国とは違いサポートは最低限で保障はなにもしてくれない、
確かに、報酬は勇者時代とは比較にならないくらいもらえる。でも、支出も比較にならないくらい多い。
勇者時代とは比べものにならないほどランクの低い消耗品や、移動費用などクエストを完了するための湯水のようにかかる経費で、
僕の手元にのこるお金は、勇者時代よりも少ない。
圧倒的な強さの僕でこれなのだから、一般的な冒険者の暮らしはもっと慎ましい。
将来の不安を夢とお酒で塗りつぶす、それが冒険者だった。まぁ考えていないだけの人も多いから、本気で楽しんでいる人も多いけどね。
僕は、恵まれていたし、恵まれている。
パーティーのみんなの指摘はその通りだった。
そのことに気付いた僕は、いたたまれなくなり、後悔しながら、訓練所で鍛錬や戦術の研究を行う時間が増えていった。
転生前のこと、勇者時代のこと、冒険者でのことなど僕は後悔ばかりだった。
後悔し続けた僕に3度目の転機が訪れた
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訓練所通いも板について、筋肉がつき体が一回り大きくなったぐらいの時だった。
元勇者でギルド会長でもある、圭人さんから話かけられた。
「たけちゃん、いつもながらナイスな筋肉ね。」
「ありがとうございます。筋肉と対話しているとなんというか幸福になるんですよね。
圭人さんも、訓練所が好きでよく筋肉談義で盛り上がる筋肉仲間だ。
今日はなにか御用ですか?」
「さすがに鋭いわね。 実はたけちゃんの古巣のことよ。」
「勇者たちと光の風<シャイニングゲイル>ですか? 確か新聞では、四天王の一人であるドラゴニュート討伐にいったんじゃなかったでしたっけ?。」
「ええ、そこで勇者たちは敗北したって速報が今は言ったの。光の風<シャイニングゲイル>を含むトップ層の勇者パーティーが生死不明らしいわ。」
圭人さんの言葉を聞いた僕は、不思議なほど落ち着いていた。
「勇者たちが、敗北した以上この町も魔王軍の襲来に備えないといけないわ、たけちゃんも指名依頼を出すから、一時的に自警団に所属してくれないかしら?。」
「圭人さん、ごめんなさい。 その依頼は受けられないよ。」
僕の言葉に圭人さんはかなり驚いているようだった。
「理由を聞いてもいいかしら? 」
「勇者たちを、いえ、パーティーメンバー3人を助けに行ってきます。」
「たけちゃんが、勇者パーティーを追放されたことを後悔しているのは知っているわ。
それでも、命を懸けて助けに行く理由はないんじゃないかしら?」
「もう後悔したくないんです。 だから僕は自分のできることをやりたいんです。」
「たけちゃんのやりたいことって、勇者なの?」
「いいえ、愛の告白です。」
僕の言葉に圭人さんは、一瞬驚いたような顔をしたが、すこしニタニタ顔をしていた。
「そう、本当にいい男になったわね~~♪ ギルドの総力を挙げてフォローしてあげる。
ドラゴニュートの城は元々はこの国が建設したものだから、建設に携わってきた人を呼んであげる。」
正直反対されると思っていたのだが、圭人さんは僕の言葉を聞いて即準備に取り掛かってくれた。
その後、1時間ほどで会議が始まり、2時間ほどで会議の内容が決定し、6時間後には僕は、ドラゴニュートの城の近くに潜伏することができた。
会議で決まった作戦は単純そのものだった。
僕が一人で潜入して、人質を解放し、余裕があればドラゴニュートに痛手を与える。
作戦決行は、ドラゴニュートたちの活動はじまる前、深夜3時。
侵入方法は、手抜き工事で薄くなっている壁を静かに破壊して、潜入する。
あまりに単純な作戦に少し弱気になってしまった僕は成功率を聞いたところ、
”筋肉で補え”とのありがたい言葉をいただいた。
精鋭部隊である、勇者たちとの勝利の後だから、敵も消耗しているし浮かれているはずだと
自分を説得しながら、少しでも成功率を上げる方法をぎりぎりまで考えていた。
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四天王のひとり、ドラゴニュートの城は、山間にある城のため、障害物に紛れることで簡単に接近することができた。
「ここが、ドラゴニュートの城か、簡単な修復はされているけど、改修はされてないみたいだ。」
改修されていないことに安堵しつつ、敵の目をかいくぐりながら、壁が薄い場所に近づいて行った。
「風の魔法で、消音してから蹴破るっと。」
作戦通り壁を蹴破った僕は、壁をカモフラージュして、牢屋を目指した。
朝方ということもあり、城の中は人がまばらだったため、容易に牢屋前にたどり付くことができた。
「看守はリザードマンが2匹か。 装備は腰の短剣だけか、防具は軽鎧だけみたいだ。」
装備を確認した僕は、リザードマンの背後をついて、1匹づつ剣で胸を貫いた。
鍵を奪って、牢屋をあけていると想定以上に勇者たちの捕虜の数が多いことに気付いた。
「新聞では捕虜になった勇者は8人って話だったのに、40人近くはいるな。」
この時の僕は知る由もなかったが、被害を少なく報道されていた。
「いくら勇者たちでも、この人数を敵に見つからず逃げるのは無理だ。どうしたらいい?」
悩みながらも、勇者たちを牢屋から解放していると、懐かしい顔ぶれ光の風<シャイニングゲイル>の3人を見つけた。
3人ともドラゴニュートとの激戦がうかがい知れるほどのボロボロだった。
ミアは、かなりの深手を負ったらしく、全身が包帯まみれだった。
包帯も装備を破って包帯にしたみたいだった。
アリアは、大きな外傷の後はないものの、魔法の使用を阻害する<魔封じの腕輪>が痛々しかった。
セーラも、<魔封じの腕輪>がついていたが、ミオの治療をしていたらしく、一番ボロボロだった。
3人を見つけた僕は、駆け寄って声をかけた。
「セーラ! アリア! ミオ! 大丈夫か!」
「勇者様ですの? なぜ、なんで?」
セーラは、助けが来たことに喜んでいたが、僕が来たことに驚いていた。
「セーラ、話はあとだ。 今はとにかく城を脱出することを考えてくれ。」
「勇者様、・・・・・・ わかりました。でも、ミオはドラゴニュートから受けた傷が大きくて動かすことができないです。」
セーラの言葉を受けて僕は、持ってきたポーションや薬をミオに片っ端から使用していく。
僕が、ミオの骨折している足を固定していると、アリアが声をかけてきた。
「たけるって医術の心得あったっけ?」
「おぼえたんだよ!」
「ご、ごめんなさい。すごく手際よくやってたから驚いて」
応急手当中に、アリアに声をかけられた僕は、少し強い口調で反論してしまった。
少し気まずい空気が流れるなか、ポーションの効果が表れたのかミオが目を覚ました。
「ん・・・・・、ここはどこだ? 私は確かドラゴニュートの槍にわき腹を突かれて?」
「ミオ! 説明は後だ、とにかくここを脱出するぞ。 動けるか?」
「たける様? どういうことだ なz「時間がないんだ。 質問に答えてくれ、助けに来たんだ、脱出できそうか?」
ミオの言葉を遮って、脱出が可能かを聞いた。
「なんとか立ち上がれそうだが、動けそうにはない。助けにきてもらって申し訳ないが、某は見捨ててくれ。
ミオは、自分を見捨てていくように言うと、アリアが僕に懇願してきた。
「たける。 厚かましいのはわかってるけどお願い、ミオは私とセーラを庇ってケガをしたの、助けてあげて、私なんでもするから!」
アリアの涙と血と汗でドロドロな顔を見て、僕は覚悟が決まった。
「アリア、安心してくれ、ミオを含めて全員脱出できるよ。作戦はあるんだ。」
「え?」
「本当ですか、勇者様?」
僕の言葉に、泣いて懇願したアリアと、黙っていたセーラは僕に問いただしてきた。
僕は、3人に脱出経路を伝えて、アリアとセーラがミオを背負っていくように指示を出した。
「僕は殿だ。先に行ってくれ。」
捕虜になっていた勇者と別れた僕は、玉座のある場所に駆け出した。
僕の作戦は、一騎打ちでドラゴニュートして、どさくさに紛れて勇者たちを逃がすこと。
おとりといえば、作戦みたいに聞こえるが、実態はただの力押し、成功確率はとても低い。
玉座に向かいつつ、少しでも勇者たちの発見が遅れるように、警備のリザードマンを殺していった。
玉座にはドラゴニュートはいなかったが、10匹程度のモンスターがいた。
「僕は、インター聖帝国ルド所属のSランク冒険者桐谷たけるだ。 勇者を破った猛将四天王 ドラゴニュートと一騎打ちがしたい。」
ぼくは玉座の前で大きな声で、敵を威圧した。
襲い掛かってきたモンスターと戦闘して、しばらくしていると、威圧間を出しながら1匹のモンスターが玉座に入ってきた。
そのモンスターは、赤褐色の肌に、人間用の黒い鎧と使い込まれた槍を持った戦士だった。
身長は170CMほどと、ほかのリザードマンよりも2まわりぐらい小さかったが、すざましいほどの眼光と、威圧感を備えていた。
「お前が、噂のドラゴニュートか?」
「そうだ。 人間の戦士よ。 一人で城に忍び込んで来て、俺と一騎打ちがしたいとは本気か?」
威圧感たっぷりに、ドラゴニュートは僕に問いかけてきた。
「ああ、勇者を破ったお前を倒しに来た。」
「話を聞いたときは、どのようなバーサーカーが来たのかと思ったが、なかなか良い顔つきをする。
良いだろう、そなたの申し出、受けよう。 皆の者、下がれ。」
ドラゴニュートの言葉を受けて、モンスターたちは、僕への攻撃を止めた。
「ドラゴニュート、まさか一騎打ちを受けてもらえるとは思わなかったぞ。」
「覚悟を決めた戦士が一騎打ちを求めているのだ、受けない理由はない。どんな理由があろうとも・・・な?」
僕の目的はバレバレみたいだ。 その上で、一騎打ちを受けてくれるようだ。
「・・・・・・感謝する。 僕の名前は、桐谷たける 命を懸けてお前を討つ!」
僕は盾と剣を改めて握りなおして、ドラゴニュートに宣言した。
「俺は、 魔王軍 四天王のひとり、 ドラゴニュートの<ドラちゃん>だ、桐谷よお主の覚悟もろとも、穿ってくれよう。
先に仕掛けてきたのは、ドラゴニュートのドラちゃんだった。
音速以上のスピードで、僕の喉元を狙って槍をついてきた。
僕は何とか、盾でいなして距離を詰めようとしたが、2撃目、3撃目の攻撃が来て、近付くことができなかった。
「ドラ、勇者を破っただけあって強いなっと。」
攻撃をいなした僕は、近付くのを諦めて距離を取り、投擲用のナイフを投げる。
「ドラ”ちゃん”だ”ちゃん”を付け忘れるな! ふんっ。」
ドラちゃんは、投擲したナイフを尻尾で払いのけた。
「やたら、可愛い名前だな」
氷の魔法効果のある爆弾をドラちゃんは、囲むように投げつける。
「主より賜った魂の名だ、」
ドラちゃんは、槍を周囲に振り回して、爆弾できたつららをぶち壊した。
「子供のペットじゃあるまいし、主に抗議しなかったのか?」
槍を振り回してできた隙をついて距離を詰めた僕は、心臓めがけて剣を突いた。
右手でガードされた。 ダメージは与えたが、致命傷には遠い。
「その通りだ。 もともと俺は人間の子供のペットだったからな。名に感謝こそすれ、不満などないさ」
ドラちゃんは、尻尾を振り回して距離をとり、簡単な止血を行っている。
ダメージはほとんどなさそうだった。
「かわいいペットが何で、四天王やってんのさ、とりゃっ。」
止血を邪魔するために、ラッシュを仕掛けたが、槍でいなされる。
「よくある話だ。俺の主はお前たち人間に騙され、汚され、ごみのように捨てられ、殺された。」
ドラちゃんは、フェイントを交えながら、突いてきた。
「・・・・・・・・」
何とか距離をとろうとするが、ラッシュが鋭いため、ダメージを受けないようにするだけで、精一杯だ。
「主大好きな、トカゲは復讐を誓って魔物となり、人間を皆殺しにするために魔王軍に入っただけだ。ぐっ。」
ドラちゃんが大振りになった瞬間に、イチかバチかシールドバッシュで、ドラちゃんを防御の上から吹き飛ばした。
「人間としては、申し訳なさ過ぎて言葉もなにね。 というか、元はドラゴンどころか魔物ですらなかったのかよ。
なんて執念だ。尊敬するよ。」
再度距離をとり、ドラちゃんの攻撃を抑えるために、防御力がアップするアイテムを使用する。
勇者たちを破ったのだから当たり前だけど、ドラちゃんは強い。
人間とほぼ同じサイズにも関わらず、圧倒的な膂力から踏み出される槍の攻撃はいなすのも命懸けだ。
人間への恨みからか、魔族にありがちな高慢な態度が無く鍛え上げられた槍の攻撃は、只々するどい。
完全な格上相手に僕の勝ち筋は、長期戦しかなかった。
敵の本拠地でモンスターに囲まれている中で、長期戦。負ける要素はいくらでもあったが、、それでもやるしかなかった。
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僕とドラちゃんの戦いは、泥沼になった。
ドラちゃんの攻撃はぼくがいなし、僕の攻撃はあまり聞かない。
正確な時間はわかないけど、太陽の傾きからして、3時間ぐらい戦っていた。
最初は、軽口を言い合っていた、僕とドラちゃんだけどお互い疲れ果てて、攻防のみに集中していた。
何回目の攻撃かわからないぐらいのとき、僕の攻撃でドラちゃんの左手を断ち切った。
「ドラちゃん勝たせてもらうぞ。」
僕は態勢を崩したドラちゃんの心臓に、必殺の突きを繰り出した。
「ぐっ、不覚。 だが、まだ終わらせん。」
ドラちゃんは、胸を貫けれながらも、右手で今日一番の攻撃を繰り出してきた。
僕は、盾でいなそうとした。しかし、長期戦でボロボロになっていた盾は、貫かれて、槍は僕の下腹部を貫いた。
致命傷を負った僕は今までの人生の走馬灯を振り払いながら、ドラちゃんの心臓を抉った。
ドラちゃんが死に絶えるのを確認した僕は、大きな音と光に包まれながら、意識がなくなっていった。
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僕が目を覚ましたのは、1週間後の勇者ユニオンの病院のベットだった。
僕は、解放された勇者たちが派遣してくれた勇者ユニオンの救助隊に助けられていた。
気を失う前の、音と光はスタングレネードだった。
病院に運びこまれた僕は、エリクサーと回収された、ドラちゃんの内臓を移植することで何とか助かったらしい。
事情を説明してくれた勇者ユニオンとインター聖帝国からは、びっくりするほどの褒章もらい、勇者復帰も行うことができた。
退院の日に、圭人さんが光の風<シャイニングゲイル>の3人をつ連れて来ていた。
圭人さんはニヤニヤとしており、セーラ・アリア・ミオは顔を真っ赤にしていた。
変な雰囲気に疑問を覚えつつも、僕は改めて3人にパーティー復帰をお願いした。
「3人とも、改めてお願いするよ。 僕は勇者としてこの世界で戦う。僕を支えてほしい。」
「勇者様、もちろんです。あなたが帰ってくるのとお待ちしておりました。
ただ、その、なんといいますか。再結成の段階で明確にしておきたいのです。
圭人様から、拝聴したのですが、私たちを助けに来たのは、魔王を討って告白をするためという
認識でよろしいでしょうか?」
セーラはもじもじしながら、そんなことを言ってきた。
ぼくもつられて顔を赤らめながら、肯定した。
「恥ずかしいな。その通りだよ。勇者の動機としてはどうかとおもうけど。」
「そんなことありませんわ、勇者の愛が世界を救うとてもすばらしいですわ。
ですが、ひとりのおんなとしては、はっきりさせておかなければならないのです。」
「たける。あなたが変わってくれて本当にうれしい。まあそのなによ。
私たちも、あそこまでの強い想いをだしてくれた以上、それに応えたいの。
だからお願いここではっきりさせてほしいの。」
今までのアリアからは想像ができないくらい、しおらしい態度だった。
「たける様、あそこまでの覚悟だ。こちらも、操を喜んで捧げよう。」
顔を赤らめながらも、いつも以上に凛々しい顔でミオは言った。
「えっ? 僕が告白したいのは元の世界のマネージャーの麻美だよ?」
空気の読めない僕だけど、その瞬間空気が凍ったのを確かに感じた。
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最悪の雰囲気の中、再開した光の風<シャイニングゲイル>。
あまりの雰囲気に、圭人さんが臨時メンバーとして加入してくたけど、半年くらい微妙な雰囲気だった。
道中、ドラちゃんの細胞が僕に馴染んだことでパワーアップしたり、
雪原を探索中にドラちゃんの細胞のせいで、僕が冬眠しそうになったり、
ドラちゃんの主の故郷を訪問した際に、一時的に意識を乗っ取られたりと、色んな事が起きた。
ドラちゃん関連多いな・・・・
そんな僕たちだったけど、5年かけて本懐を達成することができた。
この度は、下名の愚策を見ていただき誠にありがとうございました。
勢いで作成したため、怖くて誤字脱字チェックもしていないです。
こんな作品ですが再度まで見ていただき、重ねて御礼申し上げます。