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二人のアルフレッド 第三話

更新はゆるゆるです。

 家への帰り道、人間のアルフレッドは一人でした。しかし、川原へ来た時のような、モヤモヤした感じは胸の中にはありません。

 アルフレッドは、長く伸びた影を眺めながら、ムシのアルフレッドと話したことを思い出していました。

「ところでアルフレッド、きみが僕を捕まえたことは、友達には言わない方がいい」

 アルフレッドはそう言われるまで、ムシのアルフレッドを捕まえたとは思っていなかったのですが、なるほど、よく考えてみれば、川を流れてきたヒトガタトビムシのアルフレッドを捕まえたのは自分です。

「いじわるな友達っているだろ? ヒトガタトビムシは珍しいからね、きみが捕まえたなんて言ったら、横取りするかもしれない」

 いじわるな友達と言われて、すぐに村長さんの家のジークが思い浮かびました。確かにジークなら、アルフレッドが捕まえた虫を横取りしそうです。

「他の友達にも話すのはやめた方がいい。秘密をすぐにしゃべっちゃう、おしゃべりな友達っているだろ?」

 おしゃべりな友達もすぐに思い浮かびました。隣の家のハンナです。絶対絶対絶対に秘密だよ、と言って打ち明けたのに、その日のうちにアルフレッドがハンナの姉のミラさんを好きなことをいろんな人(ミラさん本人含む)にバラされました。ヒトガタトビムシを捕まえたことをハンナにしゃべったら、きっとその日のうちにジークの知る所となるでしょう。

「ご両親には……ヒトガタトビムシを捕まえたことは言ってもいいけど、名前がアルフレッドだとは報せない方が良いな」

「どうして?」

「大人っていうのはへんなことを気にするだろ?ムシと息子が同じ名前だなんて、きっと嫌がると思うよ」

 確かに、と人間のアルフレッドは思いました。大人はどうでもいいことを気にします。そうして、子供に理不尽なことを言うのです。アルフレッドも、両親は好きですが、集めていたシロクロマダラのシロクロマダラからもいだものを捨てさせられたことは許していません。

「わかった。誰にも言わないことにする」

「うん、それがいい。賢いんだね、人間のアルフレッド」

 だんだんと日が沈み始めたので、川原でムシのアルフレッドとは別れました。


「この子がアルフレッドかい?」

 月明かりの差すきれいな夜でした。人間のアルフレッドが虫(推定)のアルフレッドと出会ってから三日経った、その晩のことです。

 人間のアルフレッドは毎日、畑仕事が終わった後に、こっそりと虫(推定)のアルフレッドを訪ねてきては世話を焼いてくれました。手頃なモナムの実がなくなれば他の枝、他の木に虫(推定)のアルフレッドを移し、皮袋から水を与えて溺れさせかけ、秘蔵の甘い焼き菓子を分かち合いました。おかげで虫(推定)のアルフレッドはすっかり元気になって魔力を取り戻しました。そして魔法で「恩返しをしたい人間がいるので手伝って欲しい」と里の仲間を呼び寄せました。

「普通だね」

「平凡」

「普通じゃの」

 呼ばれた仲間たちは、魔法を使って人間のアルフレッドを観察しました。彼らにかかっては、将来にわたって丸裸にされてしまいます。人間のアルフレッドは、どこからどう見たって平凡と言ったら平凡なのでした。好き放題言われた人間のアルフレッドはしかし、特に反応を返しません。それもそのはず、半目を開けてよだれを垂らし、熟睡していました。両親と姉と妹と一緒に床に毛皮を敷いて雑魚寝です。一家は誰も目を覚ます気配がありません。

「人間に恩返しだって? 人間は僕たちを捕まえて酷いことをする奴らだぞ?」

 一人の妖精が言いました。ならお前は何をしに来たんだ、そうツッコむ妖精は残念ながらいません。

「そうだね。でも、このアルフレッドは僕を助けてくれたんだ」

 虫(推定)……もとい、妖精のトビーは言いました。

「恩には報いるべきじゃな」

「アルフレッドはいい奴なんだね!」

「恩返しって何するのさ」

 妖精たちは口々に言います。

「わからない。それで、みんなに考えてもらおうと思って呼んだんだ」

 丸投げでした。

「モナムの実でもあげたら?」

「人間といえば金銀財宝じゃろ」

「そんなもんどこから持ってくるんだよ」

 丸投げしたことを責める妖精はいません。わいわいがやがやと意見を口にします。

「今度王都に行くらしいよ?」

「誰が?」

「それでその人、ついに逆立ちしたまま一度も足を地面に着けなかったんだって」

「わしの勝ちじゃな、わしのの方が大きい」

 あっという間に脱線しました。

 そんな中で、それまで一言も発していなかった一人の妖精が口を開きます。

「その子には魔力をあげよう、いつも通りに」

 妖精たちはみんな無言で一斉にうなずきました。

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