第16話ー人族社会の有り様
大きな御屋敷、住んでみてーっす!
コアさんお金ください!
コアの屋敷には夜分遅くに、ガジュマル村の住人が全員おしかける事となってしまった。シュリ中心街から少しだけ逸れた高級住宅地の様な閑静な場所の中でも、一際目立って立派な邸宅こそがコアの屋敷だった。
三階建の屋敷には豪華な門が構えられ、馬車を停めるガレージであろう場所には、二台分のスペースが十分に確保されていた。
黒いタキシードに身を包む品の良い壮年の執事が居て、それとは別にまた身奇麗で美しいメイドが何人も仕えていた。よほどの権威を持っている事は、すぐに理解が出来た。
コアのはからいで、ヨーテモとミコトを除く全員は、屋敷の大浴場を借り、二階の客間を2つほど間借りして、翌朝まで深い眠りについた。
「屋敷の中で灯火の明かりの下だと、お前たちが人族だというのはよくわかって何よりだった。」コアの顔に既に不安は見当たらなかった。
「俺にも聞きたい事はあるんだけど、まずはお礼を言わせて欲しい、仲間が世話になる、ありがとう!」ヨーテモは年長者への敬意を払い、深くお辞儀をした。
コアとミコトと3人のみで、応接間の質の良い椅子にそれぞれが腰を掛けた。
「ヨーテモと言ったな、まずはお前たちは何処の住人だろうか?シュリの民で無い事しか、俺にはわからない。」コアはメイドが置いていった高そうな酒瓶から、直接酒を口に含むと、ゆっくりと語り始めた。
「本部のギルドマスターと、巡回して派遣されるギルド職員しか知らない、ガジュマル村という場所からやって来たんだ。」
ヨーテモは隠す事なく答え、用意された温かい紅茶を口に含み、同じモノをミコトにもすすめるのであった。
(…ギルマスのアキが時々匂わせてたのがこの事か…)コアには思い当たるフシがあった。
冒険者ギルドの本部マスターである、アキなる人物は、当然ウチナーの主要な要職や、屈強な人物たちとはパイプを有していた。
一般的に知られる人族最強である剣鬼コアにも、何かしらの有事に備え、ガジュマル村の将来有望な若者たちといつかは接点を持たせようという、想いにも似た狙いがあったのであろう。
200年前の人族大敗より以降、落ち延びた最南地での人族社会には、形式として、王国や公国といった概念は無く、街や村が点在し、連帯する程度のコミュニティであった。
(当時の複数乱立していた王国や公国、連邦などといった組織の要人達は真っ先に淘汰されてしまっていた。頭を失ったら組織の崩壊が早かったからである。)
過去の利権争いによる自滅を戒めに、権力の象徴を作らなかった。町長、村長、ギルドマスター、連島議会議長、といった程度にしか権力者が居なかった。
それらもまた任期を長期にさせず、民主的な投票を行わせる事により、誰かしらに一極集中する権力を持たせる事をさせなかった。
貴族や国王といった、異世界のテンプレ社会が無いのは、ヨーテモには意外だったほどである。
「俺達の住むガジュマル村は、まだ出来て5年ほどしか経っていない。何もない最北端の森を、俺が開拓して出来た、小さな集落に過ぎない。」
ヨーテモの言を受け、コアは少し驚いた顔をしたが、何か納得したかのようであった。
「なるほど…シュリの北方側から、あまり魔獣が暴れ出ない様になったのが、ちょうどその頃からだ。色んな事象に合点がいくなw」
コアの顔には笑みが浮かぶ。度数の高そうな酒瓶は既に半分ほど空いていた。
「俺達がシュリに来たのには、大きくは3つの理由があるんだ。」
ヨーテモのティーカップが空になったのを見て、コアがメイドを呼び、おかわりを運ばせた。
シュリ来訪の目的…それは⁉︎
仲間の露出が少なくてすみまてんw




