リリスとミンネ
「へーくしょん。」
「リリス隊長風邪ですか。」
「うーん、誰かに噂されているのかな。」
「その可能性はありますね、なんたってこの村に来てからリリス隊長の話をしている人を見ない日はありま せんから。」
「親の七光りとか悪い噂でしょ。」
リリス自身もその自覚はあった。いや、リリス本人こそがその自覚が一番強いといったところだろうか。優秀な親を持ったリリスは昔から周りに多大な期待の眼差しを向けられていた。リリス自身もそれに応えようと努力した。しかしながらリリスには武の才能も統率の才能もなかった。偉大な親を持ったまでにリリスは長らく苦しんでいたのだ。そんなリリスを母親は擁護してくれた。人はそれぞれ得手不得手があると、あなたは自分の特技をいかしていけばいいと、自分を苦しめる原因である親の優しい言葉にリリスは複雑な感情になった。そんなリリスの母も今から3年前ほどに亡くなった。
「どうせ、私は親の代わりにはなれませんよ。皆が言うことなんて親がいたらとか親に似ず不出来な娘だと かそんなんでしょ。そんな言葉聞きたくないわよ。」
「リリス隊長、そんなに捻くれた事言わないでくださいよ。確かにそんな心ない事をいう人もいますけど、 私がよく聞くのは面倒見がいいとかそんなんですよ。リリス隊長子供とよく遊んであげてるじゃないです か。」
「それは暇だからよ、最近は戦争も膠着状態だし、やることないしね、だから仕方なく子供の面倒を見て るの。分かるでしょ、子供の世話が隊長の仕事じゃないことは分かるでしょ。」
側近のミンネの優しい言葉もリリスにとっては嫌味を言われているようにしか感じなかったのだ。
ああ、もうふて腐れちゃって可愛いなあ、ミンネはそんなリリスの事が大好きだったりする。
だからリリスは今のままでいてほしい、汚い仕事はミンネのリリスへの感情は一種の愛である。
ミンネにとってはリリスがいつまでもポンコツでいる事こそが凄く重要だった。
私が一生守ってあげるからね、ミンネはそう微かに笑った。
どうしたんだろミンネ笑ってるけどやっぱり心の中では私を馬鹿にしてるのかなとリリスは思った。
二人のすれ違いは今後も続きそうだ。