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ケモミミ

自我が芽生えた頃から常に違和感があった。

確か体の性別と心の性別が違う病気? があったと思う。

深刻なほど不快感や嫌悪感があった訳でもなくそれが普通なのだと思って生きてきた。

それでも違和感は拭えずに綺麗だと評判の女の子を見て何も感じずに。

大人の階段を上るに連れて力が増し違和感の正体に気付いたけれど。

天変地異がおきて気付いた時には瓦礫の世界に投げ出されていた。



度重なる震災などがあり奇跡的な復興を遂げていて劇的に変化した都市。

直下型地震が起こり首都と呼ばれていた場所は現在では海の底らしい。

網の目状に掘り巡らされた地下鉄や行き過ぎた地下開発のために至る場所で地盤沈下が起き海水が流れ込み。

埋立地は液状化現象により壊滅し昔の首都は海の藻屑と消えた。

泡のように消えてしまった筈なのに今は水上都市が広がっていて夜になれば幻想的な夜景を楽しむことが出来る。

科学の発展の賜物と言うべきか人間の成せる技なのだろう。



そんな水上都市を眺められる場所もそんな悲劇があった場所だとは思えないくらい綺麗になっている。

近未来的な水上都市と比べれば古典的と言うかレトロと言うべきか。ウォーターサイドには煉瓦造りの倉庫風の建物が立ち中は市場の様相でそんな一角の小洒落たカフェが仕事場だ。

店の前には広くはないがオープンテラスがあり歩道の向こうには海に浮かぶような水上都市を眺めることが出来る。

周りには公園なども多いいがオフィス街が隣接しているためにサラリーマンやOLが主な客層で次いで高校生や大学生になり顔なじみも多い。



「なぁ、ここって異世界なのか?」


「ハル店長は寝ぼけているのか? 目覚まさせてやるよ」


「ギブ! ギブ! お客さんが見てるから」


姉貴分でスタッフのリーファにチョークスリーパーを決められ涙目でタップして開放してもらうと客席からヌルい視線と失笑が。

店内にもだが歩道を行き交う女の子の頭にはケモミミが付いていたり中には尻尾まで付けて気合十分と言うか皆楽しそうにしている。


「色々と毒されているな」


「あれだろ。ヴァーチャル・マッシブリー・マルチプレイヤー・オンライン・ロール・プレイング・ゲーム。フルダイブタイプの高度な仮想現実の世界ってやつだ。異世界に召喚されなくても大冒険が出来るらしいよ」


「冒険は仮想世界だけにしとけって」


「凄いよね、人間て」


呆れているとリーファ姉ちゃんが頭に何かを……

モフモフの耳らしき手触りが有り、満面の笑顔で手鏡を向けられた、その中にはイヌミミを付けた自分の顔が。


「中々似合ってるょ、ハルちゃん」


「…………」


親指を立てている常連さんやシベリアンハスキーみたいだなんて声まで。

言われなくても自覚は十分しています。

ワイルドなんて対局にある平凡で地味なメガネ男子ですから。

犬ころって。田舎に帰りたい。


『戻ってきて!』と言うリーファの声がフェードアウトしていく。

ガッツリと抉られた心の傷を残してちょっとした騒ぎになった。

高度な科学は魔法のようだなんて喩えがあるけれど科学が怖い。


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