表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

掌編小説集6 (251話~300話)

真夜中のタクシー

作者: 蹴沢缶九郎

真夜中、駅のロータリーで客待ちをしていたタクシーに一人の若い女性が乗り込んだ。運転手は女性に行き先を尋ね、女性は今にも消えいりそうな、か細い声で目的地を告げた。


「…郊外の森下マンションまでお願いします」


「森下マンションですね、かしこまりました」


タクシーは目的地に向け、ゆっくりと走り出す。


運転手の女性に対する第一印象は「気味の悪い客」だったが、それでも客である事に変わりはない。

運転手は何気ない話題を女性にふった。


「お客さん、こんな遅くまでお仕事ですか? 大変ですね」


「…」


女性から返事はない。


「先程乗せたサラリーマンのお客さんがえらく酔っぱらっていて…」


「…」


バックミラーに映る女性は黙ってうつむいており、疲れて寝ているのか、答える気がないのか様子を伺い知る事が出来ず、運転手はそれ以上声をかけるのをやめた。


車通りの少ない深夜の道をタクシーは進み、前方から流れてきたいくつもの街灯の光が一瞬車内を照らしては後方へと消えていった…。




いつの間にか眠ってしまっていた女性は、タクシーが停車しているのに気づき、運転手に言った。


「ごめんなさい、寝てしまって…。おいくらかしら」


しかし、運転手から返答はない。


「運転手さん?」


女性は不審に思い、運転席に身を乗り出すと、そこに運転手の姿はなく、座席はビッショリと濡れていた。

女性はまたかといった様子で呟いた。


「私が乗るタクシーの運転手は何故か幽霊のように消えてしまう…。もうタクシーを利用するのはやめようかしら…」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ