初めの話
初めて書きました
私は、よく変人と言われる。
『変人―言動や性格に普通の人とは変わったところのある人。変わり者。』
goo辞書で調べたら、このようにでてきた。
なるほど。と、思いつつも、私は、首を傾げる。
変人とは、普通の人とは反対の人らしい。だがしかし。普通とは何だ?
『普通―特に変わっていないこと。ごくありふれたものであること。それがあたりまえであること。また、そのさま。』
またも、goo辞書のお世話になった。紙の辞書よりも、やはりネットの辞書のほうが便利である。
で、普通は、一般的なものをいうらしい。
つまり、あれだろう。人間が、トイレに行ったり、ご飯を食べたり、勉強をすることが普通なのであろう。
では、私も普通だ。
別に、変な人間ではない。
私も、トイレに行くし、今日の朝にオムライスを食べたし、きちんと授業を受ける。
うん、普通だ。
だから、私は変人ではないのである。
私は、普通の人間だ。
「おい、低橋!早く帰れよ。もう暗いし、親にも迷惑になるだろ」
担任の声だ。
目を開け、顔を上げる。
「先生・・・、おはようございます」
「おはようといっても、夜だぞ?もう生徒は帰る時間だ」
教室の時計を見ると、20時近く。
「大丈夫です。家から、学校まで近いんですよ」
「いや、そういう問題じゃないぞ」
私の家から学校まで、歩ってでも帰れる。その距離、徒歩5分。
この高校に入った理由はそれだ。近くて楽だからだ。電車やら、バスやら、そんなものでお金をかけることもない。良い学校選びをしたと思う。
でも、確かにこの時間は危ない。今は、5月。太陽はすぐに沈む。
教室には、カーテンがしてあり、外の様子は見えないけど、おそらく真っ暗だろう。
「わかりました。先生、さよならです」
「おう、さようなら。寄り道するなよ」
私は、先生に別れを告げると、教室を出て、暗い廊下を一人で歩き出した。先生は、私とは反対―職員室のほうへ歩いて行った。
廊下は、本当に暗い。携帯のモバイルライト機能をオンにする。
それだけの明かりや私の足音しか響かない。昼間の、沢山の生徒が歩き、様々なおしゃべりで賑わう廊下とは、百二十度違うものであった。
正直、ちょっとわくわくしている。
まるで、学校の怪談の世界だ。
そういえば、小さい頃、水木しげる先生の漫画をよんだなぁ。先生、もっと長生きしてくれたらよかったのに。あ、やなせ先生も、もっと長生きしてくれたらよかったのになぁ。ロールパンナちゃんの、顔のマスク?的なものをとった顔をみてみたかったなぁ。
「あ」
そういや。あれ?
先生。
先生は、学校の先生も先生。
先生。
「あ」
なんで、私が教室で、こんな遅くまで、教室で寝ていたのか。
―数時間前―
「ねぇ、朱ちゃん」
放課後、HRが終わり、さぁ、家に帰ろうと、リュックを背負うと同時だった。
声を掛けられた方を見ると、三人の女。
えーっと、だれだっけ。名前・・・。
うちの学校は、クラス替えをしない。だから、ある意味皆と深い仲を築ける。
半面、グループは一年にちゃんとしたものを作らないと、スクールカーストやら、体育の時間に『二人組をつくってください』と、言われたときに、屈辱的な高校生活になってしまう。
私も頑張った。頑張って頑張って頑張った。もう、ノベライズ化しても良い位頑張った。
そして今。私達は、二年生になった。
私は昼休み、お弁当を一人で食べる高校生活を送っている。
もう、あきらめてる。色々と。
「ねぇ、朱ちゃん、聞いてんの?」
「・・・・・」
ごめんね。聞いてる。聞いてるよ。でもね、名前がね、出てこないんだ。
誰だこの子ら、えーっと、多分・・・。
「・・・あきちゃん?」
「はぁ?誰それ?」
「・・・で、何の用かな、きょうかちゃん」
後ろの二人は、ニヤニヤ笑っている。
私に話かけた子は、眉間にしわが寄っている。うわぁぁあ。
ごめんね、ほんと。だって、しょうがないじゃないか。君と話したの、多分一回しかないよ。なんか、あれだよ、あの時だよ。えーっと、どの時だっけ?
「・・・契」
「はい?」
「・・・契だよ」
あ、そーだった。
「・・・ねぇ、アタシ本当に嫌なんだけど」
後ろの二人に向かって、コソコソと話しかける契ちゃん。
聞こえてるけどね契ちゃん。
君の名前もっかい忘れるぞ契ちゃん。
「・・・朱ちゃん」
「・・・なに」
契ちゃんは、私を睨みつけながらこう言った。
「アタシ、日直なのね?でも、急な用事が入っちゃって。でも、日誌まだ書いてないの。だから、書いといてくんない?」
同時に、学級日誌を渡される。
「あとさ、まだ出来てない日直の仕事やって置いてくんない?」
―そして、今―
あぁ、そうだよ。
あの後、まだ終わってなかった、日誌を書いたり、まだ残っていた日直の仕事をやって、そして、学級日誌を届けようと、先生に会いに行ったら、ほかの先生と長話をしていて、しょうがないから、ちょっと教室で待つかと思って、教室行って、待ってたら眠くなって、5分だけと思って寝たら―。
「・・・ガチ寝してしまった」
あの子らも悪いけどね。ってか、やってないってどういうことだよ。小学生でもできるぞこれ。
ってか、三人でいるんだったら、三人で頑張れよ。三人寄れば文殊の知恵っていうだろ。
あー、でもやばいな、これあれだな。
私は、自分の机の中にしまってしまい、いまもそのままだ。
それを、明日までそのままにしたとしよう。
《学校行く→先生に日誌出してない→先生に契ちゃん怒られる→契ちゃんに私が怒られる≫
と、いう式が成り立つ。
うわぁ、めんどくさい。
・・・・・。
まだ先生いるかな?
・・・・・。
いるよな。まだ間に合う。
私は、来た道をまた戻り、先生の後を追った。
続きます