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鬼に恋して  作者: 八神
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4.8:イブの日

 『峠の茶屋』で力也と待ち合わせをしていた士郎は紅茶を飲みながら物思いに耽っていた。

 昨日自分が道案内をした女は平林啓太の最後の内通者だった。

 真美は渡辺を使い小野寺神社へ連絡をした後、女の動向が気になり神社へと向かったそうだ。

 二人が到着した時には鳥居に押しつぶされ潰れている小野寺さんと傍らに佇む真弓を発見。その後真弓は一瞬で二人の視界から消え逃走をしたそうだ。

 気づけなかった。

 何か不思議な感じはしたが緋色の瞳は反応しなかった。真美は真弓がそうとうな力を持った術者だと言っていたが、彼女の行動によって住人を避難させる計画が狂わされてしまった。

 「待ったか。」

 「いや今来たところだよ。」

 店の中は閑散としていた。

 冬休みだからというわけではない。住民の避難命令が市から出ているからだ。

 小野寺さんが死んだことで四方の山の結界が解け鬼が流れ込もうとしていた。今はまだ鬼による被害が出たという報告は受けていないが恐らく今日の昼には情報を聞いていない市民によってパニックが起こるだろう。

 「すまんなデートできなくなって。」

 本来なら今日はデートのはずだった。

 まったく荻窪家といい鬼といいこんな大切な日に問題を起こさないで欲しい。

 「力也が謝ることじゃないよ。あ、そうだ。これ渡しとくね。本当は後で渡そうと思ったんだけど。」

 もしかしたらもう渡せなくなるかもしれないから。

 弱音を吐きそうになり、慌ててその言葉を士郎は飲み込んだ。

 「ありがとう。これ丁度欲しかったんだ。サンキュー士郎、すごい嬉しい。」

 これほどまでに喜んでもらえるとは思わなかった。

 「俺も渡しとこうかな。」

 じゃんという効果音つきで力也はポケットから小さな箱を取り出した。

 「開けてみてもいい?」

 「もちろん。」

 箱の包みをあけ中を開けると綺麗なアクセサリーが現れた。

 「これってピアス?」

 「真美に無理言って作らせた特注のやつだ。」

 「これって両方とも。左側のピアスだね。」

 疑問を感じて力也を見ると箱の中のピアスを一つとり自分の耳にはめた。

 「男性の左側のピアスは愛する人を守るっていう意味が篭められているらしい。ちなみに右側だけをつけるとゲイだってことのアピールになるそうだ。女性なら対になる右側のピアスを渡してもよかったんだが・・・。」

 「いや俺もおまえを守りたい。」

 「そういうと思った。頼りにしてるぜ相棒。」

 笑顔で笑いかける力也に士郎も笑みを浮かべる。

 ピアスを大事にしまい込んだ士郎は紅茶を飲み干すと席を立った。

 「よし、そろそろ行こうか。」

 二人は喫茶店を出て前を見た。

 緋色の瞳が千にものぼる青い炎を映し出す。

 恐らく一筋縄ではいかないだろう。それでもこいつとならどこまでもいける気がした。    (つづく?)

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