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鬼に恋して  作者: 八神
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2.4:調査

 図書館で過去の通り魔事件の記事を調べていた平林拓也は、自分でまとめた通り魔事件の内容が書かれている生徒手帳を見返した。

 驚いたことに通り魔事件の被害者は荻窪弘樹を除き、全員前科ありの犯罪者だった。強盗、強姦、放火などなど罪状は様々だったが、共通しているのはその犯罪者達が全員人を殺しているということである。

 弘樹の話を聞いた限り、鬼道真美は同性愛者に対し妙な偏見を持っていた。

 性犯罪者のみが殺害の対象なのであれば弘樹の殺害の動機にもあてはまりそうである。もちろんゲイは性犯罪者じゃないと断言できるが。普通の人間が誤解することも多々ある。

 しかし通り魔に殺害された人間は性犯罪者のみでは無い。

 それに屋上で弘樹が殺される直前妙な言葉が拓也の携帯に届いていたことを、桂は思い出していた。

 ―あら、こんなに血が出るなんて予想外だわ。自殺で片付けようと思ったのに。通り魔のせいにすれば大丈夫かしら。―

 確かに彼女はそう言っていた。

 通り魔のせいにわざわざ見せかけるつもりだったのなら、弘樹が犯罪者だったという可能性はこは無いことがわかる。

 鬼道力也が八神士郎と仲良くすることを恨み、いじめをしていた所を邪魔され弘樹を殺した。

 弘樹を殺すくらいなら、何故士郎を殺さないのか。

 「やっぱりいけ好かない女だわ。」

 初めてあった時からそうだった。自分が美人だとわかっているからこそとる高飛車な態度。浮世離れした雰囲気。自分が求めてやまないものだ。

 「考察にもどりましょう。」

 思考が横にそれるのを頭の中で軌道修正する。

 弘樹の件は私怨ということでかたがつき。自分の中で納得ができた。あとは何故警察が通り魔事件のことを隠そうとするのかを考えれば全てわかりそうだった。

 彼女は何故犯罪者を殺すのだろうか。

 先日、塾の帰りに河野に連れていってもらった事件は幼女誘拐未遂だった。

 政府の極秘機関のエージェントなんて、とても日本にあるとは思えないし。諸外国の用に性犯罪者に識別機がつけられたなんて話も聞かない。

 何故あそこに犯罪者がいることを知り、大の大人を少女は殺すことができたのか。

 疑問ばかりが次から次へとわいてくる。あまりにもわからなくてイライラしてきた。

 「ストレスはお肌の天敵だから気をつけないといけないのに。」

 皺がよりそうになる顔を抑え調べていた新聞をもとの場所にもどす。

 過去の事件まで遡り調べていたために、かなりの部数を取り出していたので、思ったより戻すのに時間がかかった。全て棚に戻し終わり図書館をでようとすると、振り返り際に本をかかえた少女とぶつかった。

 「あ、すいません。」

 ぶつかった拍子に散らばった本を拾いあげながら、拓也は謝罪の言葉を述べる。

 「こちらこそ、すみません。」

 聞き覚えのある声だった。拓也のぶつかった少女は鬼道真美だった。

 いったい何をしに図書館へ来たのかしら。

 夏休みなのだから夏休みの宿題をしているという可能性もあったのだが、通り魔のイメージが強かったためにどうしても何か企んでいるのでは無いかと疑ってしまう。

 「拾ってくれてありがとうございます。」

 拓也から本を受け取り一礼して去っていく少女は、ごく普通の少女に思えた。入学してきた時に感じていた妖艶な雰囲気は消え去り、今にも消え去りそうである。

 疲れているのかしら。

 心配しそうになる自分を戒める。何があろうと弘樹を殺したことは罪なのだ。

 「あらやだ。まだ一冊落ちてたわ。」

 落ちていた本を拾い上げる。その本はあきらかにBL文庫だった。

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