2 The city of grief
階段を上がると一階と同じような雰囲気の造りとなっていて、主に居住スペースとなっているみたいだ。ここは昔は道具屋か何かであったみたいだが、この店の主人は上の階で生活していたのだろう。しかし壁はひび割れ、床の板は腐っており、天井には蜘蛛の巣が張り巡らされている。いかにも幽霊が出そうな……って、俺が幽霊だったか。とにかく人が住めるような場所ではなかった。
外に出られなくててもちぶ手持ちぶさただったので、二階の部屋を探索することにした。幸い集中すればものをつかむことが出来たので、問題なく漁ることができる。二階には階段を上がって目の前に一部屋、左右に伸びる廊下にそれぞれ二部屋づつあり、計五部屋となっていた。俺は右端から順番に廻ることにした。
一番右にある部屋はどうやら食堂のようなものみたいだ。部屋の真ん中に脚が折れてる大きなテーブルがあり、その奥に厨房らしき作りの一角がある。食材なんてあるわけもなく、厚く埃を被った食器や調理器具たちがあるだけだった。特に面白そうな物もなさそうなので次の部屋に行くことにした。
隣の部屋に入ると、やはり埃だらけでいたるところが朽ちていたが、かろうじて寝室のような部屋だったことがわかった。右側に枠組みだけになったベットがあり、反対側には蝶番がとれて扉が半分無くなっているクローゼットがあった。その隣に机があり、原型を留めていない何かが転がっていた。
「なんじゃこりゃ?」
一見そこらに転がっている石のようなものだが、埃や木屑が張り付いているのを慎重に取っていくと次第に丸々としたガラス球となっていった。
「水晶なのか?」
磨けばもっと綺麗になりそうだったので、そそこらに落ちているぼろ布で磨いてみることにした。この体だと少し気を抜けば手をすり抜けておとしそう落としそうなので結構集中しなければならなかった。
「……ふぅ。こんなもんか」
磨かれた石はやはり水晶であり、どこか不思議な存在感を放っていた。しかしこれがどんなアイテムであるのか皆目見当がつかなかったので、とりあえずアイテムボックスに入れることにした。メニューウインドウを開き、アイテム一覧の項目を開くと初めて自分が何か所持していたことに気が付いた。とりあえずこの水晶をしまってから確認することにした。
所持アイテム:10/50
冒険者の短剣*1
冒険者の布服*1
冒険者の革靴*1
低級回復薬*5
ワールドマップ*1
???(未鑑定)*1
おそらく最後の???がさっきの水晶なのだろう。未鑑定と表示されているので、どこかで鑑定をしなければいけないみたいだ。鑑定スキルを持っていればどこでもできるのであろうが持っていないのでどうしようもない。ほかのアイテムは最初に配られる初期アイテムらしい。とりあえず短剣を装備してみよう。
アイテム:[冒険者の短剣]を装備しますか? Y/N
シュッ……ゴトッ
目の前にこれといって特徴のない短剣が現れたと思ったら、重力に従い落ちそうになったので慌ててキャッチしたのだが、俺の手をすり抜けて床に落ちてしまった。
「……え?」
足元に落ちた短剣を拾い上げようとすると、肝心なところで手からすり抜けてしまうようだ。試しに近くに落ちている木片を拾ってみると簡単に持ち上げることが出来た。
「これって、武器が持てないのか? 」
何だか嫌な予感がしてアイテムボックスを確認すると、不思議なことに『冒険者の短剣』は装備されている表示になっていた。そのままの状態でステータスを見てみると、
《エハイト》
成仏しかけている幽霊
level 1
HP 10/10
MP 50/50
STR 3(+5)
VIT 5
AGI 10
DEX 7
INT 10
LUK 20
種族スキル:【物理無効】【魔法吸収】
通常スキル:【誘いの手】【アイテム生成】【分身】【憑依】【瞬間移動】【冥府の門】
となっていてしっかりと装備されていることになっていた。この状態だと先程より3倍近くSTRが強くなっているはずなので、試しに謎の水晶を再び持ってみることにした。
「!?……おぉ!!」
確信が持てなかったが、さっきと比べて確実に水晶が軽くなっていたので自分のSTRは短剣を装備している状態であることがわかった。つまり、見た目的には武器がそこらに転がっているけどステータス的にはちゃんと装備されているということだ。
「ってことは防具もじゃないのか?」
ふと思いつき、早速防具も装備してみるもやはり現れたと思ったらゴトゴトと音をたてて床に散らばってしまった。ステータスはその分加算されて
《エハイト》
成仏しかけている幽霊
level 1
HP 10/10
MP 50/50
STR 3(+5)
VIT 5(+5)
AGI 10(+5)
DEX 7
INT 10
LUK 20
種族スキル:【物理無効】【魔法吸収】
通常スキル:【誘いの手】【アイテム生成】【分身】【憑依】【瞬間移動】【冥府の門】
となっていた。今のステータスに比べたらすごい上昇率だけど、レベルを考えたら初期装備らしい性能だった。そのうちもっといい装備が手にはいるだろうと思い、今はそのまま使うことにした。
プロットをしっかりと書き直して新しい物語として書き直します。