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【FRE×雷鳴】業火ノ誓イ  作者: 九条智樹
サンダー・アストレイ
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第2章 歪んだ時空 -2-

FREか雷鳴、どちらかさえ読んでれば楽しめるようには作ってますので、お気軽にお願いします。

もちろんこれから本編に入ってもらってもいいと思います


 じっくりと、大輝と美里の話を聞くこと十分ほど。


「――ふんふん。なるほど、つまり大輝たちは二〇一〇年代の超能力者で、いつも通り地下都市なる場所でおふざけをしていて、気が付いたら八十年後のこの世界に飛ばされてきた、と」


「要約するとそうなるな」


「うんうん。良く分かった。――――って、信じられるかぁぁああ!」


 どんがらがっしゃん、とメイがカフェルームのテーブル一つをひっくり返す。


「何だその『超・展・開!』な嘘は! そんなんでミー君は騙せても、このメイちゃんは騙せないぞ!」


「と、言われてもねぇ……」


 騒ぎ立てるメイに対し、金髪の少女――美里は困ったように笑うばかりだ。


「ようし、ならばその金髪の嘘をこのわたしが暴いて――」


「お前はテーブルの上にあったコーヒーカップ等々の弁償を済ませてこい、今すぐに!」


 柊哉はメイの頭に本気で拳骨を落とす。まぁ堂々と器物破損という犯罪を犯しているのだから妥当な制裁だ。


 流石に不味かったと思っているのかメイは抵抗もせずたんこぶの出来た頭を押さえながら、余りの暴挙にただ狼狽えるしかない店員のところへ向かっていった。


「――何を騒いでいるのですか、高倉柊哉」


 そうして一番面倒な少女が離れるのを見計らったように、声をかけてきた少女が一人。

 無表情で、そして小柄な少女だった。平均的な高校一年男子よりも小さい柊哉よりも、更に頭一つ分は小さいだろう。


 茶色の髪をうなじが見える程度の長さのポニーテールに結ったその姿は、見覚えがあるどころか、もうお馴染みでもある。


「シノか。悪い、お前もこの店によく来るっていうのに騒ぎすぎちゃって」


「鹿島メイが騒がしいのはいつものことです」


 さらりとフォローする気の欠片もないことを言いながら、シノはさっきまでメイが座っていた席に座る。


「何か事件に巻き込まれたようですが?」


「あぁ、そうなんだよ」


 シノもまた、メイと同様に天佑高生でありながら既にプロの資格を持っている天才の一人だ。こうして実際に事件が起こった場合に助力してくれるのは、ありがたい限りである。


「でも、確かプロじゃ『自分が遭遇した事件は自分で片付けろ』っていう暗黙のルールがあるんだろ? 関わっていいのか?」


「それは『事件をたらいまわしにするな』という意味の暗黙のルールですので、私が自ら関わる分には問題ありません」


 シノがそう言ってくれたので、柊哉はタイムトラベルなどという突飛もない内容を素直に説明した。

 突然彼らが降ってきたということから始まり、天装もなしに超常現象を操ったこと、ソレスタルメイデンの存在を知らないこと、そして過去から来た超能力者かもしれないということ。

 これをかいつまんで説明すると、シノは一つ小さく頷いた。


「分かりました。では、彼らが本当に過去から来たかを知りたいのですね?」


「あぁ。でも、戸籍は駄目だってさ。元々超能力者っていうのは戸籍がなくて、それをこっそりごまかして作ってるらしいから、それで身分を証明しても怪しく見えるだろうって」


「自ら証明する手を絶つあたり、嘘をついているとは思えませんが。――一つ、簡易的に状況証拠を増やす手があります」


「おぉ、よろしく頼む」


 メイよりもシノはよっぽど頼りになるなぁ、と思いながら柊哉はシノにこの場を任せた。


「では、東城大輝、柊美里。今からいくつか質問します。――あぁ、私が携帯機器を操作していることは無視して下さって構いません」


 そう言いながら、シノはポケットから薄い板状の電子機器――いわゆるケータイを取り出した。もうこの時代はスマホやガラケーというくくりはなくなって、まとめて『ケータイ』と呼んでいるのだ。


「あなた方が来たのは、西暦何年ですか?」


「二〇一三年だ。正確に言うと、その九月二十五日」


 シノの問いに、大輝が答える。


「では、あなた方の年齢を教えてください」


「大輝は十六歳で、私は誕生日がまだだから十五歳」


 今度は、美里が答える。


「では最後に。あなた方の生年月日を、元号で教えてください」


「俺は平成九年の六月二一日だ」


「私は平成十年の二月三日よ」


 すらすらと、当然と言えば当然ながら大輝も美里も答えている。――ちなみに柊哉たちの知ることではないが、大輝は記憶喪失だ。しかし名前同様に唯一手元に残っていた研究所で使っていた焼けたIDカードに記載されていたので、生年月日を知っているのだった。


「ありがとうございました。――高倉柊哉、彼らは本当に過去から来たようです」


 お礼に頭を下げてすぐ、シノは断言してみせた。


「は? おい、ちょっと待て。今のやりとりのどこにその要素があった!?」


「……分かりやすく、彼らが嘘をついていると仮定して今のやり取りを再現しましょうか」


 何故かシノは呆れたように言いながら、柊哉に次の質問を答えるように促す。


「あなたは――そうですね、適当に一九八七年の過去からやってきたと想定して質問に答えてください」


「了解した」


 柊哉が答えると、先程のようにシノは問いかける。


「あなたが来たのは、西暦何年ですか?」


「一九八七年だ」


「何歳ですか?」


「十五歳」


 当然、質問には答えられる。


「では、生年月日を元号でお答えください」


「え? 二〇……じゃない。えっと、さっき大輝たちが平成生まれだったから、え、あれ?」


 しかしシノの最後の問いだけ、柊哉には答えられなくなった。

 一九八七年に一六歳の人間は何年に生まれ、そしてその年は平成だったか、違うとして、その前の元号は何だったか……。


「分かりましたか? 自分やその年代で偽るならともかく、タイムトラベルなどという状況で世代が大きく異なる生年月日を答えるのは困難なのです。逆算を重ねた上で、それぞれの元号が西暦何年まで使用されていたかも計算するとなると、即答できるものではありません。私もインターネットで換算表を見ながら質問をしていましたし」


「つまり、即答できたあいつらは本物……?」


「嘘だとしたら、万全の設定を用意しておきながら、突然天佑高の敷地に現れると言うずさんな計画を立てた訳でしょう? ちぐはぐ過ぎて現実的ではありません」


 なるほど、確かにシノの言うように状況的には彼らが嘘を言っているとは考えづらい。

 柊哉も納得するが、しかしやはり根本的な疑問は残ってしまう。


「でも、タイムトラベルなんてことが可能なのか……?」


「俺たちの超能力じゃあ、まず無理だ。時間操作能力者(タイムトラベラー)はいるけど、レベルが低すぎてそんな大層なことは出来ない」


 大輝の答えに、シノは一度頷く。


「では、私たちの天装ならそれが可能なのか。詳しい人に話を聞いてみましょうか」


 そう言ってシノは立ち上がった。

 ――ちなみに、メイはその間もずっと店長らしき人物に正座で説教を喰らっていた。



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