本の虫〜9月の図書館
部室の灰色の壁にかかったカレンダーをめくり、ため息をつく。
今日は9月1日。
今日は 体育大会。
運動が嫌いな私は毎年この日が憎らしくてたまらなかった。
個人種目を決めるのも憂鬱だし、練習だって大嫌いだった。
8月の夏休み、私は吹奏楽部を退部し野球部のマネージャーになった。
なぜそんな思い切ったことをしたのかというと・・・
「ため息つくと幸せ1つ逃げるらしいね」
私に思い切った行動をさせた近藤君がにっこりと笑ってカレンダーを見た。
8月 退部届けと入部届けを提出したあの日、私はこの人が好きだと確信した。
「じゃあ近藤君に幸せが移るね」
「さぁ?それはどうだろう」
そう言って近藤君はあくびをした。
あくびは私に移り、近藤君が笑い私が笑う。
今日は体育大会だというのに朝早くから私と近藤君は学校へ来た。
グラウンドの隅にある運動部の部室達はみんな汚くて保護者様達が不愉快になる、と誰かが言い出したのがキッカケだった。
野球部の掃除を という話になり、マネージャーの私とじゃんけんで負けた近藤君が掃除をすることになったんだ。
「さて、そろそろ教室に行こうかな。」
「うんっ」
部室のドアの鍵を閉める。
「じゃ、リレー頑張ろうか」
「・・・うん」
私が少し低い声で返事をすると近藤君は苦笑した。
今年、生徒会が提案した『部活対抗リレー』がある。
運動部も文化部も参加できる種目。
そのかわり運動部は女子マネージャーを1人出さなくちゃいけないことになっていた。
そしてじゃんけんで負けた私が出ることになってしまった。
私が走るのは最後から2番目で、近藤君がアンカー。
つまり、私が近藤君にバトンを渡すことになる。
あぁ、バトン落としたり転んだりしたらどうしよう・・・!!
そんなことをもやもや考えているうちに、体育大会が開催された。
吹奏楽部のファンファーレ
全校生徒の行進
自分の子供を撮る親
すでに疲れたような顔をする老人
個人種目 学年種目 PTA種目・・・・・・
ほとんどのプログラムが終わり、部活対抗リレーがトリになっていた。
「よし!がんばるぞー!!」
部長が野球部のみんなに大声で言うけど、みんな部長なんてお構いなしに喋ってる。
私は喋る余裕なんてなくて、ただばくばくと跳ねる心臓をどうにか落ち着かせようと何度も深呼吸をしていた。
ふと近藤君が笑った。
「そんなに緊張しなくていいよ。ビリになったとしても1人のせいにはならないから。」
「う、うん!」
私が返事をしたのとほぼ同時に、選手入場の曲が響いた。
私の元へバトンが届いた時、野球部は3位だった。
少なくとも1人抜きたい!なんて思っていた私は大きくため息をついた。
少なくとも1人『抜くように』じゃない。
『抜かれないように』だ。
そう思い、また深呼吸をする。
近藤君達に迷惑かけたくない!
バトンを受け取って、全速力で走り出す。
1人抜けた。
後1人・・・後1人抜けば・・・!!
一生懸命走るけど、距離が縮まらない。
じわりと視界がゆがんだ。
汗のせいじゃない
どうして私 泣いてるんだろう?
ぼやけた視界の中、近藤君が見えた。
「ごめ・・・ごめん・・・ッ」
私が震えた声で謝ると、近藤君が笑った。
「まかせて」
近藤君が言ったと同時に、バトンが手から離れた。
近藤君が走り出す。
あっという間に残りの1人を抜き、1位でゴールした。
ずずっと鼻をすすった私に、近藤君がにっこりと笑いかけた。
私はぼろぼろと涙を流した。
近藤君が笑いながら私の頭へ手を伸ばす。
1年生で泣いてるのなんて、私ぐらいだよ。
近藤君
大好き
まだ暑さの残る、みんな桜の存在を忘れてしまってる9月のことでした。
一応私の学校では体育大会は5月に終了しているんですが、大体の学校はこの時期みたいなので体育大会ネタにしました!
・・・なんだか、あの漫画に影響されてるような(ボソッ
今回なぜわざわざあとがきなんてやっちゃってるのかというと、一応作者紹介ページにはかいてるんですが・・・
私の年齢を当てたら公開しようなんて馬鹿なこと考えてます;;
●歳じゃないの?なんて思ってる人はぜひ感想かメッセージでお願いします!
『つきあいきれねぇよ』なんて人は無視してください・・・。
どこかのサイトで公開されてるのを見た!という人は遠慮してください。
では失礼しました!