最下層に辿り着きし者
アタシはいつもの『最後の間』の奥の『宝物庫』で待機した。
この宝物庫の中の宝物はミミックは手出ししないことになっている。
ダンジョン内全ての魔物の共同財産だからだ。
(そういえば不味かった冒険者もここで喰ったなぁ)
どうせ気配で直ぐわかる———他の感覚器官が鈍いともいう———のでアタシは待機状態になって来るかもしれない侵入者を待った。
◇
「‥‥‥殺られたか」
『最後の間』のボスであるミノタウロスはやられるとき、いつも馬鹿でかい断末魔を上げるので侵入者がこの部屋に来るタイミングは直ぐ分かる。
でも今回は侵入者が直ぐ来ることなく、『宝物庫』の扉が開いたのはそれから暫く経った頃だった。
「■■■■ー。
■■■■■■■■■■■■■■■■ー。
■■、■■■■■■■■■■■■■■ー」
相変わらず侵入者全般の言葉は分からん。
偶に魔法を撃ってくる奴はちょっと話せそうなんだけどな。
侵入者は金貨銀貨には目もくれず、アタシ達でも使い方がよく分からんものばっかり背負子に積んでいく。
すると侵入者はアタシの方を向いた。
それも鍵開けの道具を持ってだ。
まあ、アタシはこの部屋唯一の宝箱だからな。
(アタシの鍵は簡単に開けれねぇからな?
なんせ物理的な鍵の途中で鍵穴の中で魔法陣を完成させないといけねぇからな。
そもそも中に魔法陣があるって分かる奴自体全然いねぇしな。
ミミックはそこら辺の脆弱性しか無い宝箱とは違うんだよ!)
アタシはこの時、コイツがミスした瞬間に上半分を食いちぎってやろう。コイツはこの前の奴より美味いのか?ぐらいにしか考えていなかった。
(先ずは一つ目———成功。
まあここができなかったら鍵開けの才能が無いレベルだからな。
二つ目は———成功。
ここもかなり難しいが、宝箱レベルだな。
三つ目は———成功。
ここはわざと簡単にして次のトラップに引っかかりやすいようにしてあるからな。)
四つ目に差しかかろうとする瞬間、侵入者の手が止まった。
どうしたんだ?まさかバレたか?
でも問題は無い。
殆どの盗賊は手先は器用だが、魔法を使える者は少ない。
それは魔法使いの領域だからだ。
魔法使いは魔力の精密操作は得意だが手先はあまり器用で無いことが多い。
だから魔法の才能があるのに不得意な盗賊も兼業するということは愚かな行為というものだ。
「■■■■■■■■■■ー
■■、僕には関係無いけどね」
(‥‥‥あれ?アタシ達の言語を?
ちょっと待って、魔法陣が完成して最後の四つ目も成功して———)
その時、一体のミミックの鍵が小気味良い音を立てて開いた。




