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デルタループ  作者:


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2/2

この世の理不尽

ついに僕の時代が来る。

僕は慣れた手つきで窓を小音で開け外に飛び込む。

華麗な着地だ。今のところ親にばれている気配もないし、このまま無事に済みそうだ。

僕は慣れた手つきで森へと向かった。

深夜の森は一層静かで不気味だった。だがそんなことはお構いなしに全力で走る。怖さはどこから来るのか。

否、それは思い込みだ。人々は未知のものに恐怖を覚える。それは至極当然の発想なのだろう。

だが、今の僕にはまだ興奮が収まりきらず、それどころではない。

朝見つけておいたあの湖の近くにある巨木。ここが僕の絶好スポットだ。

湖は静かに水音を立てている。ぽちゃん、ぽちゃん、何の音だろう。それを気にする必要は今ないのだが。

だが、このままここでじっとしておくわけにもいかない。どれ。ここは一つ行ってみよう。

僕が湖に近づくと、対岸のほうで水音がなっているようだった。僕はとても目がいいと自負している。

だから目を凝らしてみてみた。何か動いているようだ。水とは違った、鮮やかな色をしている。

ちゃぷ、ちゃぷ、何かが同じように回っている。人間の腕の細さだった。

僕は流石に少し怖くなってきた。水に濡れたふわふわのタオルのような見た目だった。

動いた。絶対にやばい奴だ。僕は全力を音を立てず、木の上に退散した。

多分僕が見たのは幻覚だ。音は水が落ちる音だろう。そうだ。きっとそうだ。違いない。

僕は震える体を抑え、声を殺した。



誰だ?

足音が聞こえる。親にばれたのか?多分違うだろう。親は平原のほうには行くが、決して僕は親が森へと歩む姿を見たことがない。意図的に避けているのか、用事がないのかは定かではないが。

明らかに男性のような足音だ。音が鳴るたび、木々の葉が揺れ、振動がひしひしと伝わってくる。

恐怖は未知のものからといったな。あれは本当なのかもしれない。事実、僕は何か巨大なモノがいることに恐怖を覚えている。

どし、どし。段々と足音が近づいてきている。こちらを感知したのか。はたまた歩いているだけなのか。

それは僕には知りえない情報だろう。どちらにせよ危機的状況なのは変わらない。

僕はここで二つの選択肢がある。

1.このまま見を潜めて、アレが通り過ぎるのを待つ。

2.全速力で走って、家に帰る。

正直言って選択が迫ってくるこの現状に内心泣いていた。

なぜここに来ると思ってしまったのだろう。

親?自由?違う、違う、冒険だ。

冒険がしたかったんだ。

制御された生活。変わることのない景色。その全てに。

僕は愚かだ。まだ未熟だというのに、自ら好んで不自由に飛び込む。

不条理じゃないか。ほとんどの加護下に置かれている幼児は自由を求める。

だが。だがそれことが罠なのだ。現実は理不尽にこの世の仕組みを知らされる。

僕もその一人だったのかもしれない。親を言い訳にしていたのかもしれない。

その全てのことを決定できるのは少なくとも自分ではないのだから。

何はともあれ、考えていては時間の無駄だ。意味がないことはしないほうがいい。

果たして今の時間が有意義かという話でもない。

今は選択の余地を、無事に命がある行動をしなければならないのだから。



僕は結局アレから逃げた。

それは木々が揺れていることから体重が重く、あまり速く走ることができないと判断したためだ。

幸いその見立てはあっていた。それことが、人生の中で一番幸運なことなのかもしれない。

ともかく、無事に帰れた。さらに、親はもう言い合いで疲れて寝ており、多少の騒ぎは聞こえていなかったらしい。よかった。

もしばれていたら、今後の生活が危うい可能性があるからな。

アレが何だったのかはもうどうでもいい。疲れた。今はただただ寝たい気分だ。

明日も朝は早い。正直言ってもうあんな思いはごめんだ。二度と経験したくない。

僕は巨大荷物を荷ほどきすると、ちょうど月光が窓から差し込んでいた。

深々と森は静まっている。一人の子が居ようが居まいが関係なしというように。

僕はいつか絶対に成功してやる、と思いを嚙み締め、夢へと飛び立った。

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