北関東スリーアローズ疾走!――鬼教官と弟子2人、哀愁のドサ回り五番勝負!
「よし、次のツアーは――北関東五都市・弾丸一日ドサ回りだ!」
太田すみれコーチが言い放った瞬間、
唯奈と結花は同時に固まった。
唯奈(常陸太田市出身の野生児)
「……いま、なんつったっぺ?」
結花(那須塩原の令嬢)
「五都市……いっぺんに……? あらやだ、聞こえ間違いでしてよね?」
しかし、すみれの目は本気だ。
しかもキラキラ輝いている。
“こういう無茶が青春なんだよ!”みたいな顔で。
遥広報官:「すみれさん、さすがに詰め込みすぎじゃ……」
すみれ:「大丈夫! 車飛ばせば間に合う!」
隼人司令補佐官:「その“飛ばす”は法律的に大丈夫なやつですよね?」
返答はなかった。
●茨城県・笠間市
午前9時。
陶芸で有名な静かな街に、北関東スリーアローズが降り立った。
唯奈:「笠間のみんないぐべー!!」
……半分くらい聞き取れた。大進歩である。
結花は昭和アイドルのような微笑みで
「皆さま、ごきげんようでございますの〜」
と手を振ると、
地元の高齢者たちが「まぁ可愛いねぇ」とざわつく。
限定グッズ第1弾(缶バッジ)は即完売。
何故か隣で売っていた
“船橋産の採れたてイチゴ”も爆売れ。
笠間の人々:「イチゴうめぇぇぇ!」
唯奈:「オラたち、関係あんべか?」
すみれ:「細けぇことはいいの! 売れれば勝ち!」
●栃木県・足利市
昼過ぎに到着。
すみれの運転が速すぎて、唯奈と結花は軽く車酔い。
すみれ:「ほら立て! もうすぐ本番だ!」
唯奈:「うっぷ……コーチがラリー選手に見えてきたっぺ……」
結花:「わたくしの優雅な胃袋が……揺られておりますわ……」
ステージが始まると、結花は超回復し、
「足利の皆さま、愛しておりますわ!」
と昭和のアイドル調で投げキッス。
客席のアイドルヲタクたち大歓喜。
唯奈は子どもたちにドローンの操作方法を教えて、
瞬く間に少年たちの心を掴む。
●群馬県・館林市
午後2時。
暑さと疲労で唯奈も結花もヨレヨレ。
しかしステージに上がった瞬間ーー
唯奈:「桐生ぅぅ! 今日も元気だっぺよーー!」
結花:「皆さまの街、風情があって素敵ですのね!」
お客さん:「なんかこの二人、クセになってきた」
すみれは袖でニヤリ。
「……これだよ、これ。
北関東スリーアローズの輝きが見えてきたねぇ」
●栃木県・栃木市
午後4時。
疲労のピーク。
すみれはまだ元気。
唯奈:「コーチ……オラ限界ちか……」
結花:「すみれ様……わたくしの足腰も……そろそろ……」
だがステージに立つと復活。
唯奈の茨城弁は
もはや半分以上標準語に寄っている!
観客:「なんか今日は聞き取りやすくていいな!」
結花のハイブリッド言語も
「皆さま、ごきげんようでごぜぇましてよ!」
という奇跡のバランスで安定。
地元の子どもと高齢者が両方盛り上がるという
謎の世代横断現象まで発生した。
●茨城県・結城市
午後6時。
空は夕焼け。
もはや三人とも魂でステージに立っていた。
すみれ(凛と立つ):
「北関東のみんな! 私たち、今日一日全力で走ってきたよ!」
唯奈:「今日のオラ、なまら強ぇーべ?」
客:「唯奈〜〜!!」
結花:「皆さまに愛されて、わたくし幸せですわ……でしてよ」
客:「結花〜〜!!」
グッズは爆売れ。
イチゴも爆売れ。
すみれは満足げに空を見上げた。
「……よく走ったな、北関東スリーアローズ」
唯奈と結花はヘロヘロになりつつ笑っていた。
唯奈:「コーチ……今日はマジで死ぬかと思ったべよ……」
結花:「でも……たくさんの方々が……応援してくださって……」
すみれ:「そう。人気ってのはな、汗かいて、場数踏んで、
少しずつ掴んでいくもんだよ。」
そして後部座席の二人は
ほぼ同時に眠り込んだ。
すみれはミラー越しに二人を見て、
静かに笑った。
「……よし。こいつら、絶対大物になる」
北関東スリーアローズの弾丸ドサ回り五番勝負。
哀愁と汗と笑いが混ざりあう、
最高に“北関東らしい”一日だった。
三本の矢は、確かに軌道に乗り始めていた。




