すみれ、唯奈、結花──嵐を呼ぶ北関東三重奏
静岡県富士市は、いまも工業の煙が空に描く“働く街”。
社会人野球の大舞台・都市対野球抗で優勝し黒獅子旗を勝ち取ったチームを擁したこともあり、
街全体がスポーツに強く、気質も明るく、土の匂いが似合う。
そんな富士市のほとり、かつて東西の電圧を分けた富士川沿いにそびえる
「国家特務戦隊ヒロイン中央研修複合学習センター富士川分室」。
ネーミングだけは壮大だが、実際は公民館の会議室っぽい地味な部屋である。
今日はここに小春、みのり、麗奈、澪、沙羅が集められていた。
扉が開き、遥広報官が晴れやかに言う。
「今日から心強い新人が入るら? みんな、温かく迎えてねぇ」
その後ろに立っているのは、妙にオーラのある3人。
まず一人目――
手足がやたらと長い、キレのある目つきの女性。
黒髪を後ろで束ね、堂々と腕を組む。
太田すみれ。
上州の鬼代官と言われた、伝説の鬼コーチ。
小春が思わずつぶやく。
「すみれコーチ…ほんとに復帰するんですか…?」
すみれコーチはニッと笑った。
「おう。現役復帰だ。
群馬は寒ぃし、怪人ぶっ飛ばしたくなったんだわ」
その瞬間、
みのり、麗奈、澪、沙羅、全員が
「ええええええ!?」
とどよめき、空気がひき締まる。
「ほれ、唯奈。挨拶しろ」とすみれが背中を押す。
ガタンッと前につまずきながら、
元気すぎる少女が飛び出した。
「どーもだっぺ!茨城県常陸太田から来た山口唯奈っつーもんよ!
今日はみんな、よろしぐ頼むっぺやー!!」
みのり
「…濁点多くない?」
麗奈
「半分くらい言葉の軌道が読めなかったんですけど!?」
唯奈
「え?わかんねぇけ?」
すみれ
「こいつはドローンと農機の扱いは天才級なんだが、
口だけは一生アップデートされねぇ」
唯奈はドヤ顔で
「GPS精密制御の自動追尾トラクターも任せろっぺ!」
と胸を張る。
ギャップがえぐい。
遥広報官に促され、
品よくスカートを整えて前に出たのは――
リゾート開発令嬢にして
栃木弁× お嬢様言葉 という、世界で唯一の存在・結花。
「皆さま、本日はお目にかかれて光栄でございますのよ〜。
わたくし、那須塩原から来た塩原結花と申しますんだっぺ」
麗奈
「後半に突然“だっぺ”!?」
小春
「アクセルとブレーキ同時に踏んでるみたいな言葉だね!?」
結花はにっこり微笑む。
「おゴルフはプロテスト合格レベルと言われておりますの。
どうぞよろしくお願いいたしますのよ〜」
沙羅
「……ヒロインにゴルフって関係ある?」
そこで遥広報官が微笑む。
「いや〜、スポンサーとのコンペもあるし、
大人の世渡りは大事だでねぇ〜?」
全員
「そこ!?」
遥広報官が姿勢を正し、改めて説明する。
「唯奈さんも結花さんも“育成型ヒロイン”で、まだ実戦は少ないけど
早めに経験積ませたいでね。
みなさんでいろいろ教えてやってくださいねぇ」
すみれも腕を組んで言った。
「こいつらは伸びる。保証する。
鍛え方次第じゃ、おまえたちをすぐ追い越すぞ」
その一言に、5人がピリッと身を固めた。
しかし――唯奈と結花は当の本人同士で
唯奈
「よろしぐやんべ!」
結花
「こちらこそですわ〜んだっぺ♡」
もうカオスである。
遥広報官
「それと…すみれさん、現役復帰しますで」
会議室が揺れる。
麗奈
「うそ…!」
みのり
「また…すみれコーチの殴り込みスタイルが…!」
沙羅
「怪人さん達がかわいそう……」
小春
「いや嬉しいんだけど怖い!」
すみれは飄々と、
「ま、任せとけ。
怪人の方が泣くように鍛えてやっから」
と笑う。
会議室が北関東の嵐に飲み込まれた瞬間だった。
北関東の豪腕コーチ・すみれ。
山の民の天才農機少女・唯奈。
財閥お嬢様×栃木訛りという禁断の融合体・結花。
この3人が富士市に揃った日――
ヒロインプロジェクトに、
新しい風…いや暴風が吹き始めた。




