遠州ピアノ交響喜劇――美音、またしても“ハズレ扱い”の午後――
静岡県磐田市。
サッカー王国の名門クラブの本拠地であり、
世界的楽器メーカーの巨大工場が並ぶ、静岡県内屈指の“音の街”。
その磐田で遠州日日新聞社がまたもや持ち込んだ企画――
「河合美音さんと行く!ピアノ工場見学ツアー in 磐田」
遙広報官は駿河弁で上機嫌。
「美音ちゃん、地元新聞社さんから直接お願い来たもんで、こりゃ断れんよ~」
美音は爽やかな笑顔で
「はい、精一杯務めます」
と応えるが、内心では(また私だけ扱い雑なんですよね…)と苦笑い。
磐田の工場は広く、巨大な木材乾燥庫やハンマー製造ラインがずらり。
子どもたちはわくわくしながら施設を巡り、
最後に案内されたグランドピアノの前で美音が促される。
「では、美音さん…ひとつ演奏を」
美音は椅子に座り、深呼吸――
ショパン「革命のエチュード」を華麗に披露!
子どもたちは「すげぇ…」と口を開けたまま固まる。
この瞬間だけは、美音は完全にスターだった。
遠州日日新聞社提供。
参加者に配られたのは、戦隊ヒロイン缶バッチ(シークレット仕様)。
美月、綾乃、彩香、あかり、麻衣、美音の6種類。
袋を開くと、あちこちから声が上がる。
「やった!綾乃さんだ!」
「美月だぁー!」
「麻衣ちゃん可愛い!!」
そして――
「……美音だ」
「うわ…“ハズレ”じゃん…」
「誰か交換してぇぇ!あかりのと替えてぇ!」
「美音かぁ…今日ツイてねぇな…」
美音、沈黙。
隼人司令補佐官は苦い顔でつぶやく。
「なぜ…彼女はこんなに不人気なのか…」
一方、袋に同梱されていた 三ケ日みかん にだけは大歓声。
「わぁ!みかんだ!」
「当たり!」
「うめぇ!!」
完全にみかんの完勝である。
■ 翌日の「遠州日日新聞」の雑な扱いの記事
《小学生向けピアノ工場見学ツアー開催》
当社主催で磐田市の楽器工場見学会が行われた。
戦隊ヒロイン・河合美音さん(浜松市出身)も参加し、ピアノ演奏を披露。
参加児童には三ケ日みかんが配られ、子ども達は嬉しそうに頬張った。
イベント自体は大成功。
しかし、美音人気は今回も上昇せず。
遙広報官はため息をついた。
「どうして美音ちゃん、こんなに完璧なのに…」
「……人気だけは調整しようがないですね」と隼人司令補佐官。
美音は微笑んで言う。
「いつか“当たり”って言われるように頑張ります」




