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ゆれる情熱、ふたつの顔

夕暮れのキャンパス。吹奏楽部の音が練習棟から漏れ聞こえ、赤嶺美月はチアリーディングサークルの仲間たちと次の試合応援に向けたルーティンの確認に余念がなかった。汗をぬぐう間も惜しんで飛び跳ねる彼女の笑顔に、後輩たちはいつも勇気づけられている。


だが、美月の心には一つの影があった。


「…今度の週末、また“特別任務”入ってもうた…」


独りごちた言葉は、誰にも届かない。スケジュールアプリには、学内での練習と、極秘裏に指定された戦隊ヒロインとしての作戦実施予定が重なる印が赤く点滅していた。


地元・東大阪での応援活動も、仲間との練習も、すべて彼女のかけがえのない日常だった。それを守るためにこそ、美月は“ライトウィンドレンジャー”として戦っているのだと自分に言い聞かせてきた。


「なぁ、美月。最近、顔疲れてへん?」


後輩の何気ない言葉に、一瞬だけ美月の笑顔が翳る。


「そ、そうか? ちょっと寝不足なんや。夜な、家で筋トレしすぎてもうて!」


照れ隠しに笑い飛ばすが、胸の奥はざわめいていた。もう一人の自分を、どこまで隠せるのか。いつまで、隠し通せるのか。


夜、指定された訓練場で変身し、風をまとって疾走する美月。その背中に、チアのポンポンと大学の仲間たちの笑顔が、いつも重なって見えた。


「戦うんは、守りたいもんがあるからやろ?――せやったら、あたしは全部、守ったる」


そう自分に言い聞かせ、また走り出す。誰よりも熱く、誰よりも強く。


ふたつの顔を持つ少女の決意は、静かに、しかし確かに燃えていた。

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