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ヒロインズ・リンク 〜戦隊ヒロインプロジェクト〜  作者: スパイク


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泣く陽菜、抱き合うグレースフォース、走れない彩芽――大脱出の夜、ゲスト席まで伝説になった

『木曜スーパーライブ特番 高田美雪の戦隊ヒロイン大脱出!』は、放送翌朝から完全に社会現象になっていた。


高田美雪が巨大水槽、鋼鉄檻、爆破、炎、煙をくぐり抜け、観客席後方の高台から妖艶に「お待たせ」と微笑む。

この場面だけでも十分に伝説だった。


だが、視聴者が食いついたのは、それだけではなかった。


実況席では、百戦錬磨のベテランアナが完全に取り乱し、


「爆破が早いぞ!」

「聞いてないぞ!」

「カメラを止めろ!」


と絶叫。

その横で、三好さつきが淡々と実況を続けた。


そしてゲスト席である。


そこには、戦隊ヒロインたちの“素”が、あまりにも鮮やかに映ってしまっていた。


まず、前回すでに問題になったのは、美月と彩香である。


美月は河内弁全開でスタッフに詰め寄り、彩香は播州弁でディレクターを震え上がらせた。


「あれはヤクザより怖い」

「でも仲間を本気で心配してた」

「関西ヒロイン、圧がすごい」


SNSでは称賛と恐怖が半々。

もちろん、ヒロ室ではすぐに遥室長と真帆による道徳的指導が入った。


「戦隊ヒロインは健全な青少年育成を目標としているので、子どもたちが見ている全国放送では言葉遣いに気をつけましょう」


完全に小学校の道徳だった。


美月はしゅんとし、彩香も神妙に頷いた。


ただし、帰り際に美月が、


「ほな次からは“担当者の方、現状を共有してくださいやでコラ”で行くわ」


と言い、真帆に無言で睨まれた。


彩香も、


「“ご説明いただけますか、播州として”ならええんちゃうか」


と謎の改善案を出し、遥室長に「地域を背負って怒らないだよ」と止められた。


だが、話題になったのは二人だけではない。


一番映像的に強かったのは、白石陽菜だった。


爆破が起き、美雪の姿が消えた瞬間、陽菜は完全に泣いていた。

ぽろぽろと涙をこぼし、両手を胸の前で握りしめ、震える声で、


「美雪さぁん……」


とつぶやく。


そのアップが、あまりにも美しかった。


SNSは一気に沸騰した。


《陽菜ちゃんの泣き顔、映画のワンシーン》

《美少女すぎて番組内容を一瞬忘れた》

《涙が芸術》

《守りたい、この泣き顔》

《高田美雪より一瞬こっち見てた》


本人はまったく狙っていない。


後日、ヒロ室で陽菜は困ったように言った。


「私、本当に心配だっただけですぅ……」


小春が頷く。


「陽菜ちゃん、あれは天然の名画だったよ」


陽菜はさらに困る。


「名画じゃないですぅ……泣いてただけですぅ……」


そこへ美雪が優雅に微笑む。


「人を本気で心配して流す涙は、美しいものよ」


陽菜はその言葉に感動して、また泣いた。


「美雪さぁん……」


小春が即座に言う。


「はい、第二の名画入りました」


次に話題になったのは、グレースフォースだった。


みのりとひかり。

普段から穏やかで品のある二人だが、爆破の瞬間、二人は手を取り合い、そのまま抱き合って美雪の安否を見つめていた。


爆風、煙、混乱。

その中で、二人だけが静かな絵画のように寄り添っている。


視聴者は見逃さなかった。


《爆風より強い絆》

《グレースフォース、尊い》

《みのりとひかり、完全に二人だけの世界》

《大脱出なのに急に百合映画始まった》

《抱き合うだけで絵になるの反則》


みのりは顔を赤くした。


「そんなつもりではなくて……本当に心配で……」


ひかりも控えめに頷く。


「でも、みのりちゃんが隣にいてくれて安心しました」


その瞬間、ヒロ室の空気がざわついた。


美月が小声で言う。


「もう公式やん」


彩香がすぐに肘で小突く。


「黙っとれ」


だが、彩香も少し口元が緩んでいた。


一方、彩芽の場面も大きな反響を呼んだ。


美雪の姿が消えた瞬間、彩芽は本気で走り出そうとしていた。


「私、助けに行くべさ!」


それを、すみれコーチが全力で羽交い締めにして止める。


「行くな! お前が行ったら救助対象が増える!」


このやり取りが、妙に心に残ったという声が多かった。


《彩芽ちゃん、真っ直ぐすぎる》

《すみれコーチの止め方が本気》

《彩芽、行こうとするのは危ないけど優しい》

《見守る勇気を覚える回だった》


後日、すみれは彩芽に言った。


「お前、今回は走らなかった。そこは成長だ」


彩芽は目を輝かせる。


「走らなかっただけで褒められたべさ!」


小春が笑う。


「札幌妹、基準が小学生なんすよ」


だが、美雪は静かに言った。


「見守る勇気も、立派な勇気よ」


彩芽は胸元の姉の形見に触れた。


「彩世姉ちゃん、私、ちょっと待てるようになったべさ」


すみれは、それを見て少しだけ目を細めた。


そして、地味に評価されたのが救護班だった。


ライフセイバーの平塚美波は、爆煙の中で即座に救助体制に入ろうとした。

今回は結果的に出番はなかったが、動きは速かった。


医師兼ヒロインの藤崎紗絢は、現場状況を冷静に確認。

看護学生の松本美紀も、救急バッグを抱えて必死に走った。


美紀は後でこう語った。


「先生、あれは救急対応なのかテレビ対応なのか分からなくて……」


紗絢は涼しく答えた。


「両方よ」


この一言も妙にバズった。


視聴者は、派手な脱出だけではなく、ヒロインたちが本気で仲間を心配し、支えようとする姿に感動したらしい。


そして、まったく別方向で再ブレイクしたものがある。


ヒロヒロ公式応援しゃもじである。


爆破直後、江波のどかと山根梨乃がしゃもじを握ったまま呆然と立ち尽くしている場面が映った。


あまりにも間抜けで、あまりにもヒロヒロらしかった。


《しゃもじ持ったまま固まってるの草》

《応援しゃもじ欲しい》

《あの場面でしゃもじ握ってるの強い》

《ヒロヒロ公式グッズ、謎に縁起よさそう》


放送後、通信販売を手掛けるブラックキャププロダクションには注文電話が殺到した。


「はい、ブラックキャププロダクションです! 応援しゃもじですね、二本セットですか? ありがとうございます!」


所属グラビアアイドルたちも総出で電話対応に追われた。

その中にはもちろん、富山湾の爆乳マーメイド・氷見ゆりえもいた。


「はい、しゃもじですね。水槽爆破モデルは現在品薄です。たわしとのセットもございます」


なぜか堂々と売っている。


ノムさんまで自ら電話に出た。


「はいはい、しゃもじ十本? まいど! これでスナックのツケが払えるわ!」


横で経理担当が真顔になる。


「社長、それ会社の売上です」


ノムさんは笑ってごまかした。


「細かいこと言うなや。ヒロヒロ経済回しとるんじゃ!」


その頃、ヒロ室では遥室長が放送反響資料を眺めていた。


陽菜の涙。

グレースフォースの抱擁。

彩芽の見守る勇気。

美波、紗絢、美紀の救護体制。

ヒロヒロしゃもじの再ブレイク。


遥は静かに言った。


「結果的に、チームの良さが伝わっただよ」


真帆も頷いた。


「ただし、次回からは爆破ドッキリの事前共有範囲を見直しましょう」


その瞬間、会議室の全員が首藤凪を見た。


凪は淡々と言った。


「安全上は問題ありませんでした」


小春が笑う。


「問題は心臓上でしたね」


美雪は優雅に紅茶を飲みながら、涼しい顔で言った。


「少しびっくりした方が、いい顔になるのよ」


すみれがぼそっと返す。


「びっくりしすぎて全員壊れかけてましたけどね」


こうして、『戦隊ヒロイン大脱出』は美雪の脱出だけでなく、ゲスト席の素顔まで含めて伝説になった。


泣く陽菜。

抱き合うグレースフォース。

走らなかった彩芽。

救護に走る美波たち。

しゃもじを握るヒロヒロ。


そして、全部知っていて涼しい顔の美雪。


戦隊ヒロインプロジェクトは、またひとつ、妙な形で結束を深めたのだった。

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