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ヒロインズ・リンク 〜戦隊ヒロインプロジェクト〜  作者: スパイク
プロローグ

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84/443

豊川稲荷恋慕奇譚 〜そして天竜川に散った美音人気〜──遠州の空に風任せ──

豊川稲荷の参道。

香ばしい油揚げの匂い、鳴り響く鈴の音。

参拝を終えた遥広報官と隼人司令補佐官は、昼ドラ級にいい雰囲気で歩いていた。


そのとき。

隼人司令補佐官が“例の目”になった。

ズレたひらめきの前兆だ。


「遥さん……思いつきました」

「また……?」

「はい。浜松の風物詩、“凧揚げ”です。

 **天竜川で美音さん主催の“勇者の大凧揚げ大会”**を開催しましょう」


遥広報官は一拍おいて、

「めっちゃいいじゃんそれ!!」

と、またしても仕上がったノリである。


こうして、後日──


天竜川の河川敷に、色とりどりの凧が舞い上がる。

国家特務戦隊ヒロインのイベント「天竜川大凧揚げ大会」は、季節外れの大盛り上がりを見せていた。


美月と彩香は「うちの凧が一番高い!」「いやウチや!」といつもの子供じみた口げんか。

綾乃ははんなり笑いながら「凧まで喧嘩させはるとは、ほんま忙しいお二人さんどすなぁ」。

あかりは「ほら!風来とるで!もっと走るで!」と暴走。

麻衣は「たのし〜わ〜、凧ってええなぁ」とほんわか。


そして本日の主役・河合美音はというと、

風を読み、姿勢も美しく、凧揚げも鬼のように上手い。

凧が空に吸い込まれるように急上昇すると、観客から拍手が起こった。


「美音さん、すごいですね!」

「やっぱりパーフェクトヒューマンや…!」

と周囲はざわめくのに、その“ざわめき”はなぜか淡泊。


イベント終了後のサイン会。

美月・彩香・綾乃・あかり・麻衣の列は見事な蛇の列。

一方、美音の列だけは……

風が通り抜ける音しか聞こえない。


「すみません、写真お願いできますか!」

と近づいてきた家族連れに、美音は笑顔でサインペンを構える。


「いえ、あの……スマホで集合写真を撮ってもらえます?」

「ついでにトイレの場所わかります?」

「凧、どこで売ってます?」


——サイン会じゃない。


美音は完璧な笑顔を貼りつつ、

「ええと……こちらがトイレで……凧はあちらのテント……」

と案内係と化していた。


イベントは終始盛り上がったものの、

美音の人気はほぼ横ばいだった。


そして翌日。

その現実をさらに突きつけるように、地元紙「遠州日日新聞」が冷淡な記事を載せた。


============

【遠州日日新聞】

〈浜松〉天竜川で凧揚げ大会 親子連れで賑わう


天竜川河川敷(浜松市)で週末、「天竜川勇者の大凧揚げ大会」が行われ〜(中略)〜

人気戦隊ヒロインの美月さん、彩香さん、綾乃さん、あかりさん、麻衣さんらが来場者と一緒に凧を揚げ、歓声が上がった。

なお、河合美音さん(浜松市出身)も参加していた。

============


ある意味、最も残酷な文章がそこにあった。


美音の名前は……

“なお” の一言で片付けられていた。


「な、なお……?」

美音は記事を見て、思わず声を漏らした。

“なお扱い”は、ヒロインのカテゴリーでは最下位級だ。


そんな美音を見て、遥広報官は焦り、

「だもんで!美音ちゃんにもっと人気が出るように、イベント考えんと!」と駿河弁で奮起。


隼人司令補佐官は腕を組み、

「僕に考えがあります。浜松餃子、凧揚げ……まだ手はありますよ」と爽やかに微笑む。


——遠州の勇者、美音。

その人気獲得への道のりは、凧より高く、風任せのまま続くのであった。

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