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ヒロインズ・リンク 〜戦隊ヒロインプロジェクト〜  作者: スパイク
プロローグ

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82/447

名古屋ブレンド・恋とズレ企画とハーモニカの音色

名古屋・久屋大通。

街路樹はライトアップされ、

「ここを歩くだけで恋が始まりそう」

と観光パンフレットが盛りがちに書きそうな夜。


その道端で、遥広報官はため息をふんわり吐いた。


「……美音ちゃん、なんであんな完璧なのに、今ひとつ仲間に溶け込めんだらねぇ」


隼人司令補佐官は、やわらかく笑って返す。

「河合さんは優秀すぎるんです。

 戦闘、機動力、免許の数、全部ハイスペック。

 ヒロインとしては理想そのものですが……

 “人間味のスキマ”がないと、人気に跳ね返るんです」


二人は喫茶店へ入る。

外観はおしゃれでも、中身は昭和レトロな“名古屋の魂”がむき出しの店。

カップを置く衝撃でカウンターの灰皿が揺れる、あの雰囲気。


頼んだブレンドコーヒーには、当然のように小倉トーストが付いてきた。


「……静岡代表としては、美音ちゃんが気になるだら。

 話し方は優しいし、実力は申し分ないのに……

 なんで人気が出んだら」


隼人

「人気は“隙”です。

 河合さんにはその隙が少し足りません」


「……いい子なんにねぇ」


隼人補佐官はカップを置き、わずかに身を乗り出した。

「では、美音さんの良さを引き出すイベントを考えましょう。

 僕と遥さんで」


「え? こんな雰囲気で企画会議やるだら?」


隼人

「はい。今夜は“恋と業務の境界線”を曖昧にしてみようかと」


「言い方ェ……」


二人は顔を見合わせて笑った。

どこか懐かしい、新人の頃に戻ったような空気が流れる。



隼人

「まずは浜松らしさを押し出した案です。

 美音さんと一緒に“浜松まつりの凧揚げ体験”はどうでしょう?」


「戦隊ヒロイン、凧揚げる……?

 まぁ映えそうだけど……なんかズレとるねぇ」


隼人

「では“ハーモニカ100人合奏企画”」

──昭和の商店街でありそうな発想。


「うーん、こちらも……嫌いじゃないけどズレとるねぇ」


隼人

「それでも、盛り上がるはずです」


「人気はどうだら?」


隼人

「……現状維持かと」


遥はコーヒーを吹き出した。

「現状維持て! うちら何しとるだら!」


隼人

「ですが、美音さんの魅力は引き出せます。

 人気は……徐々に、です」  


遥は苦笑しつつも、隼人の横顔に昔のときめきを少し思い出す。

(まったく……昔からこうだら。この人、説明は丁寧なのにズレとる……)



店を出ると、名古屋の夜風は少し冷たく、

遥はマフラーをきゅっと締めた。


隼人

「河合さんの件、僕に任せてください。

 必ず彼女を“人気も実力も備えた勇者”に引き上げます」


「……ありがと。ほんと頼れるねぇ」


ほんの一瞬、沈黙。

ほんの一瞬、隼人は遥の顔に視線を落とす。


「……ねぇ、隼人くん」


隼人

「はい」


「美音ちゃんの件で、また名古屋で会議やろまいかね」

(名古屋弁混じるのは照れてる証拠)


隼人

「喜んで」


二人の距離が、わずかに近づいた。


恋と仕事が同じテーブルに置かれる夜。

名古屋の街は、二人の再会に少しだけ彩りをくれた。


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