遠州の勇者、降臨!──完璧すぎて逆にザワつく初日
「それじゃあ……紹介するね。
私と同じ静岡の子、遠州の勇者・河合美音さんだで」
国家特務戦隊ヒロイン中央研修複合学習センター富士川分室り会議室に
またひときわ強い風が吹いた。
窓の隙間をビュウッと揺らすその風の正体は──
静岡県浜松市からの刺客、“遠州の勇者” 河合美音。
遥広報官が胸を張って紹介する。
「浜松の子だよ。名前からして……まぁ、楽器に関係があるお家でね。
遠い親戚に“世界的な楽器メーカー”の創業家がいるとかいないとか……」
ヒロイン達の視線が一斉に「ガチのお嬢様!?」とざわめいた。
そして美音本人はと言うと、
ショートカットが風になびく、クールビューティーそのもの。
しかも彼女、完璧っぷりが尋常じゃない。
・大型免許→持ってる
・大型二輪→乗れる
・船→操縦できる
・武術→段持ち
・トーク→理路整然
・戦闘→敵陣に先陣切って突っ込むアタッカー
・音楽→ハーモニカで味方の士気を爆上げ
唯一無二の存在、まさに
“1億人に1人のパーフェクトヒューマン”。
これに美月が小声でつぶやいた。
「なぁ……完璧すぎて逆にウチら勝てる要素どこ……?」
彩香は腕を組んで沈思黙考。
「……ほんまに1億に1人系やな。怖っ。」
綾乃は儚げに微笑む。
「ここまで隙がないと、逆に人間味がのうて……」
麗奈は遠い目をする。
「もう勝負の土俵に立てないじゃん……」
みのりは肩を抱きしめて震えた。
「千葉の叡智……今日だけで5割くらい減った気がする……」
そんな空気もなんのその、美音は朗らかに笑って言う。
「ハーモニカは、祖父に習ったんです。
みなさんと一緒に吹ける日が楽しみで……どうぞよろしくお願いします!」
──完璧だ。これも完璧。
誰も勝てないどころか、もはや敵わない。
コードネームもカッコよすぎる。
★コードネーム
《HAMAMATSU・VIOLET・BLASTER》
(ハママツ・バイオレット・ブラスター)
浜松らしい楽器の魂と、紫のイメージカラー、
そして突撃型アタッカーとしての爆発力をまとめた名。
美月
「なんか……コードネームだけで勝てんわ」
彩香
「ウチらの誰より強キャラ感あるで……」
綾乃
「おすまし顔でハーモニカ吹かはる姿、優雅どすな……」
麗奈
「ふとん屋と比べんなって話よね?ね?」
みのり
「千葉の叡智……が、また2割減った……」
そして、遥広報官が付け加える。
「ただね、美音ちゃんは完璧すぎて……
市民人気はまだ今ひとつなんだわねぇ。
“隙がないと推せない”っていうか……」
美音は苦笑しながら肩をすくめた。
「……短所がなくて短所です、ってよく言われます」
完璧すぎて逆に隙がない──
そこが唯一の弱点。
でもその弱点が、妙に親しみを生んでしまうから不思議だ。
浜松が生んだ“勇者”が、
今日も富士川の風の中、静かにハーモニカを鳴らす。
その音色は、戦隊ヒロインプロジェクトに
また新しい伝説が始まる予感を満たしていた。
富士川の風がまた吹いた。
その風に、美音のショートヘアがふわっと揺れた。
──こうして、最強新人の物語が幕を開ける。
明るくて騒がしくて、ちょっとだけ未来が楽しみになる。
そんな初日の午後だった。




