濃尾の跳躍姫、日の当たる場所へ ―初めて見た“プロの戦隊ヒロイン”は、眩しすぎた―
岐阜でのイベント二週目。
極秘メンバー・伊吹真白の存在を知るのは、この時点で美月ただ一人。
遥広報官からも
「まだ極秘任務中だから、他の子には内緒ね」
と念押しされていた。
だが、この日――
ついに彩香と綾乃へだけ“こっそり”紹介されることになった。
美月に連れられて控室の前まで来た瞬間、
ドアの向こうから聞こえてきたのは――
美月
「外カリカリが正義やっちゅうてるやろがぁっ!!」
彩香
「はぁ!? しっとり以外ありえへんのじゃボケコラァァ!!」
綾乃
「どっちでもよろしおすえ……メロンパンどすえ……」
真白
「(……えっ……ここ、戦隊ヒロインの控室……?)」
真白は震えた。
初めて聞く戦隊ヒロインの“戦い声”が、まさかパン派閥争いとは思いもしなかった。
そこへ当の遥広報官が優雅に登場。
遥
「美月ちゃん、彩香ちゃん、綾乃ちゃん。
きょうはね、極秘なんだけど……伊吹真白ちゃんを紹介するよ」
彩香
「極秘て……なんでウチら知らされてへんかったん?」
綾乃
「遥さん、だいぶ焦らはりましたなぁ」
遥(駿河弁)
「いやぁ〜ごめんねぇ〜。上の事情だら〜」
美月
「ウチは知ってたで! なんか秘密任務らしいで」
真白
「あ、あの……いぶき、ましろです……よ、よろしく……」
三人の視線が一斉に真白へ集中。
真白の声は限りなく蚊の泣くような音量。
控室のカオスとは裏腹に、本番ステージが始まると
先輩ヒロイン達は“別人”だった。
彩香
「会場のみなさ〜ん! 播州のストイックが来たで〜!!」
綾乃
「お越しいただき、ほんまにおおきに〜。
きょうは楽しんでいっておくれやす」
美月
「うちらの全力、見せたるでぇぇぇ!!」
客席
「うおぉぉぉぉぉぉ!!!」
観客の声援、
テンポよく回るトーク、
華やかに舞うアクション、
息の合った掛け合い。
真白は衝撃を受けた。
真白
(……すご……なに、この完成度……
さっきメロンパンで喧嘩してた人たちと、同じ……?
私……ついて行けるのかな……)
膝が、また震えた。
イベントの最後、
美月が背後からそっと声をかけてきた。
美月
「真白、大丈夫や。
ウチらも最初はみんな不安やったんや。
一緒に頑張ろな」
彩香
「これからいろいろ叩き込んだるわ!」
綾乃
「跳躍、得意なんやて?
ほなら心配いりまへんえ。
真白さん、あんじょうやっていきまひょ」
真白
「……はい……がんばります……!」
プロのステージに胸をすくませつつ、
真白は静かに、小さく決意する。
“跳べるだけ、跳ぶしかない。”




