完全適合!? ― 宇宙刑事トラクターと助手、まさかの黄金コンビ誕生
常陸太田の昼下がり。
抜けるような青空の下、田んぼには――
やたら“決まりすぎた”声が響いていた。
「状況確認。周囲クリア。作業を開始する」
低く、落ち着いた声。
だがどこか熱を帯びた響き。
ドリームトラクター蒼牙2000・改――
現在のモードは、宇宙刑事である。
「了解しました」
すぐに応じるのは山口唯奈。
妙に姿勢がいい。
声も落ち着いている。
数日前まで、
「うるせぇ!!」
「お前が邪魔だっぺ!!」
と怒鳴り合っていた人物とは思えない。
「ターゲット確認」
「雑草、左側に密集してます」
「排除を開始する」
「はい」
完全に任務。
完全にコンビ。
しかも無駄にカッコいい。
「行くぞ」
「はい」
「蒸――」
「それは言わなくていいっぺ」
「了解」
一応ツッコミは入るが、
基本的に従順。
遠くで見ている二人。
すみれコーチと明日香。
「……」
「……」
しばらく無言。
先に口を開いたのは明日香。
「すみれさん」
「なんだ」
「これ……完成してません?」
すみれ、腕を組む。
「……してるな」
さらに観察。
「水分量、適正」
「了解、次の区画に移ります」
「よし、行くぞ」
「はい」
無駄がない。
衝突もない。
しかも――
「いい動きだ」
「ありがとうございます」
唯奈、完全に“助手ポジション”。
すみれが小さく言う。
「……おい」
「はい」
「唯奈、なんか変じゃないか」
明日香、苦笑。
「変ですね」
一拍。
「でも、可愛くないですか?」
「……」
すみれ、少し考える。
「しおらしいな」
「ですね」
「普段のあいつと別人だ」
「はい」
その瞬間。
唯奈が振り返る。
「何見てるっぺ」
ちょっとだけ強い。
だがすぐに戻る。
「……次、どうしますか」
声が柔らかい。
明日香、吹き出す。
「やばいですねこれ」
「うん」
「完全にハマってますよ」
蒼牙が静かに言う。
「唯奈」
「はい」
「この任務は重要だ」
「分かってます」
「気を抜くな」
「はい」
完全に信頼関係。
すみれ、ぽつり。
「……嫉妬バグ」
「はい」
「消えてるな」
明日香、頷く。
「はい」
「菜帆の話、全然出ませんね」
その通り。
あれだけ頻発していた“菜帆さんは――”が
一切出ない。
すみれ、結論。
「……これでいいか」
明日香、少し遠慮がちに言う。
「よろしいんですか?」
「問題ない」
一拍。
「現場が回ってる」
明日香、笑う。
「合理的ですね」
その間にも。
「任務の進行は順調だ」
「はい」
「いいコンビネーションだ」
「恐縮です」
完全に出来上がっている。
すみれ、ため息をつきつつも。
どこか笑っている。
「……戻す理由がないな」
明日香、素直に頷く。
「はい」
「じゃあ帰るぞ」
「はい」
二人は車へ向かう。
エンジン始動。
ドゴォォォ!!
相変わらずの爆音。
「すみれさん」
「なんだ」
「ちょっとスピード出しすぎでは」
「いつも通りだ」
砂塵が舞う。
そのまま帰路へ。
車内。
明日香がぽつり。
「……あの」
「なんだ」
「結果的に、成功では?」
すみれ、短く答える。
「……ああ」
一拍。
「たぶんな」
その頃。
畑。
「任務完了まであと少しだ」
「はい」
「最後まで気を抜くな」
「了解」
夕陽が差し込む。
二人が並ぶ。
「任務完了」
「収穫完了です」
「同義だ」
静かに頷く蒼牙。
少しだけ微笑む唯奈。
こうして。
嫉妬で暴走したトラクターは――
まさかの“宇宙刑事モード”によって、
最強のコンビへと進化した。
それはバグか、奇跡か。
誰にも分からない。
ただ一つ確かなのは――
この二人、妙にカッコよくて、妙に面白いということだった。




