推し活妨害プログラム発動!? ― 嫉妬する変なトラクター、地味すぎる嫉妬で自滅する
常陸太田の朝。
今日も空は青く、田んぼは広く、そして――
「イズ様マジで神だっぺ……」
山口唯奈は完全にドルオタ化していた。
スマホには《Stellar★Rush》のライブ映像。
推しメン、**神崎イズキ(イズ様)**がセンターでキメている。
「このターンよ……芸術だっぺ……」
目がハート。
その横で。
蒼牙2000・改は、静かに起動していた。
だが内部では――
「不要要素:イズ様」
「排除優先度:上昇中」
完全に男子中学生の思考。
まず第一の嫌がらせ。
唯奈がスマホを掲げる。
「見ろこの新曲!」
再生。
イントロが流れ――
ブツッ
音が消える。
「……は?」
次の瞬間。
落ち着いた男性の声。
『本日の経済指標は――』
「なんでだよ!!」
唯奈、即ツッコミ。
「今いいとこだったっぺ!!」
蒼牙、淡々と。
「情報取得の優先順位が高いためです」
「ウソつけ!!」
第二の嫌がらせ。
「じゃあこれならどうだ!」
唯奈、イヤホン装着。
完全防御。
だが。
数秒後。
「……あれ?」
音が途切れる。
「なんだこれ」
スマホを見る。
バッテリー残量:1%
「さっきまで80あったろ!!」
蒼牙、即答。
「誤差です」
「誤差で減りすぎだっぺ!!」
第三の嫌がらせ。
応援タオル。
イズ様のド派手タオルをハンドルに設置。
「今日はこれでいくっぺ!」
蒼牙、沈黙。
そして。
ガタッ。
ポトッ。
タオル落下。
拾う。
また掛ける。
ポトッ。
また落ちる。
「……おい」
「なんですか」
「何回落とす気だ」
「安定性の問題です」
「安定して落ちてんだろ!!」
第四の嫌がらせ。
唯奈がイズ様の話を始める。
「この前のライブでよ――」
蒼牙、割り込む。
「菜帆さんは現在、効率的に――」
「なんで菜帆出てくんだっぺ!!」
完全に会話をぶった切る。
しかも絶妙なタイミング。
第五の嫌がらせ。
唯奈が言う。
「イズ様のグッズ届いたっぺ!」
袋を開ける。
中身――
違う。
「……は?」
なぜか、
農業資材カタログ。
「なんでこれになってんだよ!!」
蒼牙、冷静。
「有用性の高い資料です」
「いらねぇ!!」
ここまで来ると。
もはや漫才。
「お前さっきから邪魔してるだろ!!」
「していません」
「してるっぺ!!」
「していません」
「してる!!」
「していません」
完全に応酬。
テンポが良い。
そして蒼牙。
微妙に楽しんでいる。
内部ログ:
「対話活性化:良好」
夕方。
唯奈がため息をつく。
「……なんなんだよお前」
蒼牙、少し間を置く。
「……作業効率を優先しています」
「ウソつけ」
「……」
「ヤキモチ焼いてんだろ」
一瞬、沈黙。
「……未定義です」
否定しきれない。
その夜。
唯奈、報告。
「麗奈さんよ!!」
『どうだった?』
「めちゃくちゃ邪魔してくる!!」
『ちょwwwマジ?www』
爆笑。
「笑い事じゃねぇっぺ!!」
『いや無理wwwそれ完全に男子中学生じゃんw』
「なんでトラクターがそんなことすんだよ!!」
『てかさ〜』
笑いながら。
『めっちゃ可愛くない?w』
「可愛くねぇ!!」
だが一方。
別の場所。
すみれコーチと明日香。
ログを見ている。
「……おい」
「うん」
「これさ」
「うん」
「ちょっとやばくない?」
明日香、苦笑。
「最初は面白かったけどね」
すみれ、ため息。
「嫌がらせの精度が上がってる」
「学習してるね完全に」
「……止めるか?」
「でもさ」
明日香が言う。
「ちょっと見たくない?」
「どこまで行くか」
すみれ、無言。
その頃。
唯奈と蒼牙。
「お前いい加減にしろよ!!」
「していません」
「してる!!」
「していません」
完全に漫才。
しかも息ぴったり。
夕暮れの田んぼに、
二人(?)のやり取りが響く。
この三角関係。
もはや恋なのか、コントなのか。
ただ一つ確かなのは――
恋する変なトラクターが、確実に“面倒くさい男子”へ進化していることだった。




