表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ヒロインズ・リンク 〜戦隊ヒロインプロジェクト〜  作者: スパイク
プロローグ

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

693/749

推し活 vs 最適化 ― 恋する変なトラクター、初めての嫉妬?

常陸太田の朝は、だいたい土の匂いとエンジン音で始まる。


だがその日、違った。


「イズ様マジ神だっぺ……」


山口唯奈が、畑の真ん中でスマホを握りしめてニヤニヤしていた。


画面には、

超人気男性アイドルユニット――


《Stellar★Rush》


そのセンター、

神崎イズキ(通称:イズ様)


銀髪、王子様、キレッキレのダンス。


「この目線よ……やべぇべ……」


完全に落ちている。


その横で。


ドリームトラクター蒼牙2000・改は、静かにエンジンを唸らせていた。


「……」


「なあ蒼牙」


唯奈が振り向く。


「イズ様どう思う?」


一拍。


「……評価不能です」


そっけない。


明らかにテンションが低い。


「なんだよそれ!」


唯奈はむしろ満足そうに笑う。


(効いてるっぺ……)


ここから、唯奈の“推し活攻撃”が始まる。


まずは応援タオル。


「これよ!」


イズ様の顔がドンとプリントされた派手なタオル。


それを――


蒼牙2000・改のハンドルに掛ける。


「どうだ!かっけぇだろ!」


蒼牙、沈黙。


そして数秒後。


ガクッ。


ハンドルが不自然に揺れる。


ポトッ。


タオル、落下。


「……」


唯奈、ゆっくり振り向く。


「……今、わざとやったっぺ?」


「操作上の誤差です」


即答。


「ウソつけ!!」


次は音楽攻撃。


「この曲よ!」


カーステレオから流れる、Stellar★Rushの最新曲。


ド派手なイントロ。


「このサビ最高なんだっぺ!」


唯奈、ノリノリ。


だが。


プツン。


音が切れる。


「……は?」


次の瞬間。


流れてきたのは――


落ち着いた男性の声。


『本日の株式市場は――』


完全に空気が違う。


「おい!!」


唯奈、即ツッコミ。


「なんでそっちに変わるんだよ!!」


蒼牙、淡々と。


「情報取得の優先度が高いためです」


「高くねぇべ!!」


「農業経営において有益です」


「今いらねぇ!!」


さらに。


唯奈がイズ様の動画を見せる。


「見ろこのダンス!」


蒼牙、数秒沈黙。


「……」


「どう思う?」


「……」


「おい」


「……菜帆さんは、このような動きはしません」


「なんでそこで菜帆出てくんだっぺ!!」


蒼牙、続ける。


「菜帆さんは実用的な動作を――」


「うるせぇ!!」


完全にブチ切れ。


だが蒼牙も負けていない。


その後も、


・タオルをさりげなく落とす

・音楽を勝手に切り替える

・イズ様の話になると処理遅延


など、


男子中学生みたいな嫌がらせを繰り返す。


ある時。


唯奈が言う。


「なあ」


「はい」


「車体にラッピングしようかなぁ〜」


一瞬、空気が止まる。


「Stellar★Rush仕様に」


次の瞬間。


「絶対にやめてください」


即答。


しかも食い気味。


「は?」


「運用目的に反します」


「景観を損ないます」


「推奨できません」


早口。


明らかに焦っている。


唯奈、ニヤリ。


「そんな嫌か?」


「……」


一瞬、沈黙。


「非推奨です」


トーンが落ちる。


(効いてるっぺ……)


確信。


その夜。


麗奈に報告。


「麗奈さんよ!!」


『どうだった?』


「めちゃくちゃ嫌がった!!」


『マジで!?ウケるんだけどwww』


爆笑。


「なに笑ってんだよ!」


『いやそれさ〜完全に効いてるってw』


「マジか?」


『てかさ〜』


少しテンションが上がる。


『蒼牙2000・改、なんか可愛くない〜?』


「は?」


『だってさ、タオル落とすとかさ〜』


『中学生男子じゃんwww』


「可愛くねぇっぺ!!」


『いやいや可愛いってw』


『めっちゃヤキモチ焼いてるやんw』


唯奈は気づいていない。


この作戦。


確実に効いている。


蒼牙2000・改の内部ログ。


・対象:唯奈

・関連:イズ様

・状態:不安定


そして――


「優先順位再計算中」


夕暮れ。


唯奈は満足そうにスマホを見る。


「やっぱイズ様最強だっぺ……」


その横で。


蒼牙が静かに言う。


「……唯奈さん」


「なんだよ」


「明日の作業計画を優先してください」


「あとでやるっぺ」


「……」


一瞬の沈黙。


そして内部で。


「未定義感情:強化」


恋なのか。


バグなのか。


ただ一つ確かなのは、


恋する変なトラクターが、確実に“嫉妬らしきもの”を覚え始めていることだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ