恋するトラクター徹底検証!? ― 太田発・AI恋愛バグ撲滅プロジェクト後編
常陸太田の農場。
青空の下、田んぼの真ん中。
そこに――
ホワイトボード。
ノートPC。
謎の測定機器。
そして、やたら真剣な顔の三人。
「……なにやってんだお前ら」
唯奈、完全に引いている。
「実験よ」
麗奈が涼しい顔で答える。
「AI恋愛バグ検証実験」
「名前からしてバカくせぇっぺよ!!」
すみれが指示を出す。
「まずは基本データ取る」
「対象:蒼牙2000・改」
「評価軸:好感度変動」
明日香、ノートPCをカタカタ。
「ときめき値、ログ出るようにしたよ」
「だから余計なもん足すな!!」
すみれ即ツッコミ。
第一実験。
「呼びかけによる反応差テスト」
「唯奈、呼べ」
「なんだその雑な指示は!」
「いいから」
渋々。
「おーい蒼牙」
即応。
「はい、唯奈さん」
通常。
明日香、記録。
「うん、安定」
次。
「麗奈」
麗奈、優雅に一歩前へ。
「蒼牙くん?」
トーンが違う。
蒼牙、一瞬停止。
「……応答します」
わずかに処理遅延。
「お、変化あり」
明日香、テンション上昇。
そして。
「菜帆」
「え、私ですか?」
のんびり登場。
「蒼牙ー、ちょっといいですかー?」
その瞬間。
処理速度、明らかに上昇。
「はい、菜帆さん。どうされましたか」
音声トーンまで柔らかい。
「はい出た!!」
明日香、叫ぶ。
「好感度スパイク!!」
「やっぱりか……」
すみれ、頭を押さえる。
唯奈、無言。
「……おい」
「なんだこれ」
蒼牙、冷静に返す。
「通常の応答です」
「ウソつけ!!」
第二実験。
「外見・行動変化テスト」
麗奈、指示。
「唯奈、もう一回女の子モード」
「やだっぺ!!」
即拒否。
「やりなさい」
圧。
「……くそっ」
渋々、再びヒール装着。
歩く。
ズブッ。
埋まる。
「ほら見ろ!!」
即転倒。
ドシャッ!!
泥まみれ。
蒼牙、即反応。
「唯奈さん、疲労が蓄積しています」
「してねぇ!!」
第三実験。
「複数対象同時指示テスト」
すみれが指示。
「三人同時に命令出す」
「優先順位を見る」
「なんでそんな修羅場みてぇなことすんだっぺよ!!」
三人並ぶ。
麗奈「こっち来て」
唯奈「こっちだっぺ!」
菜帆「こっちお願いしまーす」
一瞬の静止。
蒼牙の内部処理がフル稼働。
そして――
動いた。
向かった先は、
菜帆。
「……」
沈黙。
「……は?」
唯奈、完全停止。
明日香、爆笑。
「データ通り!!」
さらに蒼牙が追撃。
「本条件下において最適解は菜帆さんです」
「……」
「操作精度・安定性・環境適応力が最も高いため」
「……」
唯奈の肩が震える。
そして。
「うるせぇぇぇぇ!!」
大爆発。
「なんなんだよこれ!!」
ヒール投げる。
「なんでいっつも菜帆なんだっぺよ!!」
完全ブチ切れ。
菜帆、きょとん。
「え、なんかすみません?」
全く悪気なし。
これが一番効く。
麗奈、横で笑う。
「完敗ね」
「笑ってんじゃねぇ!!」
すみれ、腕を組む。
「結論出たな」
冷静。
「これ恋愛じゃない」
「は?」
「最適化の偏りだ」
明日香、頷く。
「推し変アルゴリズムの影響だね」
「だから入れるなって言っただろ!!」
すみれが唯奈を見る。
「お前な」
少しだけ柔らかく言う。
「無理すんな」
「……」
「お前はそのままでいい」
「……」
「それが一番性能出てる」
唯奈、黙る。
その後。
唯奈は無言で長靴に履き替える。
ヒールは放置。
「……もういい」
ぽつり。
「普通にやるっぺ」
蒼牙、即答。
「それが最適です」
夕暮れ。
田んぼに風が吹く。
菜帆はいつも通り。
「蒼牙、明日もお願いしますねー」
「はい」
完全に平常運転。
その横で。
唯奈は少しだけムッとしながらも、
黙って作業を続ける。
麗奈、小声で。
「これ、まだ終わらないわね」
すみれも同意。
「むしろここからだな」
そして明日香。
「次は“好感度上書き実験”やる?」
「やらん!!」
すみれ即却下。
こうして、
大真面目に行われたバカ実験は終了。
だが、
・拗ねる唯奈
・無自覚の菜帆
・最適化し続ける蒼牙
この三角関係は――
むしろ悪化した。
最後にすみれの一言。
「結論」
「これは恋愛じゃない」
少し間を置いて、
「ただの“バグった人間関係”だ」
だがそのバグは、
今日も元気に稼働中だった。




