コシヒカリ頂上決戦!? ― お米サミット・新潟の静かな大乱闘
新潟市の海辺にそびえる巨大コンベンション施設。
信濃川が日本海へと流れ込む河口近くに立つこの建物は、ガラス張りの展望フロアを持ち、晴れた日には佐渡島まで見えるという新潟屈指のイベント会場である。
この日そこでは、実に真面目な会議が開かれていた。
テーマは――
農業と地域振興。
名付けて
「お米サミット・新潟」
である。
全国の米どころから農家、研究者、行政関係者が集まり、
「日本の米の未来」を語り合うフォーラム型イベントだ。
しかし、このサミットには一つだけ異様な参加者がいた。
それは、
戦隊ヒロイン。
若手農ガール代表として参加したのは
スマートファームの女王・本間菜帆。
そしてその相棒、
山口唯奈。
さらに今回は特別参加者がいる。
駐車場に鎮座する巨大トラクター、
蒼牙2000・改。
オンライン中継で会議に参加している。
会議室のスクリーンに、
トラクターのAI音声が流れる。
全国の農家がざわついた。
「トラクターが会議出てるぞ」
司会者が言う。
「それでは若手農業者代表として、本間菜帆さんお願いします」
菜帆は落ち着いた口調で話し始める。
「日本の農業は今、大きな転換期にあります」
「AI技術、スマート農業、そして地域の人材」
「これらを組み合わせることで」
「農業はまだまだ発展できます」
真面目な話である。
会場の農家たちも頷く。
しかし。
隣の席で腕を組んでいる唯奈が小声で言う。
「でもよ」
「うめえ米は」
「結局、水と土だっぺ?」
菜帆は少し笑う。
「それも正解ですね」
会場が少し和む。
ここで司会者が言う。
「では」
「蒼牙2000・改さんの意見を聞きましょう」
スクリーンの向こうから声が響く。
「日本の農業は」
「機械化と人間の知恵の融合が必要です」
「トラクターは」
「単なる機械ではありません」
「農家の相棒です」
この発言に、
会場から
拍手。
農家のおじさんが言う。
「いいこと言うトラクターだ」
蒼牙2000・改はさらに続ける。
「特に」
「本間菜帆さんのような若い農業者が」
「未来を担う存在です」
「彼女の農業哲学は非常に合理的です」
会場からまた拍手。
しかし。
その横で唯奈の顔が曇る。
「またそれだっぺ」
小声でボヤく。
蒼牙2000・改はさらに言う。
「もし私が」
「一つの農場を選ぶなら」
「菜帆さんの農場で働きたい」
会場
「おおー」
唯奈
「おい」
「それ完全に告白だっぺ!」
会場がざわつく。
司会者が困る。
菜帆は苦笑する。
「トラクターなので」
「恋愛ではないと思います」
蒼牙2000・改は冷静に言う。
「その通りです」
「私は機械です」
「恋愛感情はありません」
唯奈
「ほんとか?」
蒼牙2000・改
「ただし」
「農業パートナーとしての評価は」
「最高レベルです」
会場の農家たちが笑う。
唯奈は腕を組んで言う。
「オラの操縦の方が上だっぺ」
蒼牙2000・改
「データでは」
「菜帆さんが上です」
会場
爆笑。
司会者が慌てて話を戻す。
「えー…」
「では次の議題」
しかしこの日のサミットで、
参加者が一番覚えていたのは
農業政策でも
ブランド米でも
輸出戦略でもなく、
トラクターを巡る謎の三角関係
だった。
日本一うまい米を決める会議は、
こうしてなぜか
微妙にラブコメ風味
のまま終了したのであった。




