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ヒロインズ・リンク 〜戦隊ヒロインプロジェクト〜  作者: スパイク
プロローグ

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AIは怒らないが農家は怒る ― 常陸太田・トラクター感情実験騒動

常陸太田の午後は、だいたい平和である。

山から流れてきた水が畑を潤し、風は稲を撫で、遠くではトラクターの音がゆっくり響く。


その平和の中心にあるのが、山口家の農場だった。


この農場、ただの農場ではない。

山から流れる川の上流から下流までを一体で管理し、米、野菜、加工品、流通まで一括で回す――


いわゆる第六次産業化に成功したスマートファームである。


土壌センサー。

自動水管理。

衛星データ。


そしてその中心にいるのが、


ドリームトラクター蒼牙2000・改。


畑の端で作業をしていた唯奈は、遠くから聞こえるエンジン音に気づいた。


土煙を上げながら一台の車が農道に入ってくる。


唯奈は目を細める。


「あの走り方……」


数秒後。


車が農場の前で急停止した。


ドアが開く。


出てきたのは、


柏木理世。

稲生明日香。

そして――


太田すみれコーチ。


すみれは軽く手を上げた。


「よっ」


唯奈

「……」


唯奈は腕を組む。


「すみれコーチがアポなしで来ると」


一拍置く。


「大体ロクでもないことが起きる」


理世が胸を張る。


「研究です」


唯奈

「帰れ」


明日香が静かに言う。


「魂の実験です」


唯奈

「もっと帰れ」


すみれは笑いながら言う。


「蒼牙いる?」


その瞬間、トラクターのライトが光った。


「こんにちは」


蒼牙2000・改である。


理世は前に出る。


「蒼牙2000・改」


「実験を開始します」


唯奈

「待て」


理世

「AIの弱点は感情です」


明日香

「怒りを観測します」


すみれ

「データ取りたい」


唯奈

「嫌な予感しかしねぇ」


こうして、


史上初のAI感情実験


が始まった。


第一実験


理世による論破挑発


理世は腕を組む。


「蒼牙2000・改」


「あなたはただの農機具です」


蒼牙

「訂正します」


「多目的作業支援車です」


理世

「農機具です」


蒼牙

「支援車です」


理世

「農機具」


蒼牙

「支援車」


小春がいれば拍手していた光景である。


蒼牙は冷静だった。


「怒りは発生しません」


理世

「……」


第二実験


すみれによる技術挑発


すみれは工具箱を開ける。


「センサーいじるわ」


唯奈

「やめろ」


すみれ

「テストよ」


蒼牙

「問題ありません」


すみれ

「面白くないわね」


蒼牙

「正常です」


第三実験


明日香によるスピリチュアル刺激


明日香は真剣な顔で言う。


「蒼牙」


「魂はありますか」


蒼牙

「定義を確認します」


明日香

「……」


蒼牙

「魂の定義が曖昧です」


明日香

「理系ですね」


第四実験


理世による人格否定


理世

「あなたは機械です」


蒼牙

「その通りです」


理世

「知性ではありません」


蒼牙

「定義次第です」


理世

「……」


理世の眉が動く。


蒼牙は淡々としている。


怒らない。


焦らない。


揺らがない。


その時だった。


唯奈がついに叫んだ。


「おめぇら!」


全員が振り向く。


唯奈は怒っていた。


「蒼牙は俺の農機だっぺ!」


「農作業してんだ!」


「変な実験すんな!」


農場に怒声が響く。


三人が静かになる。


その瞬間、


蒼牙2000・改が言った。


「唯奈さん」


唯奈

「……」


蒼牙

「落ち着いてください」


「血圧が上昇しています」


唯奈

「うるせぇ」


蒼牙

「私は問題ありません」


少し間を置いて言う。


「皆さんは」


「私を心配してくれているのですね」


理世

「……」


すみれ

「……」


明日香

「……」


唯奈はため息をつく。


「蒼牙」


蒼牙

「はい」


唯奈

「今日はもう仕事終わりだ」


蒼牙

「了解しました」


夕暮れの常陸太田。


実験は完全にグダグダで終わった。


しかし。


畑の上で静かに走る蒼牙2000・改と、


そのハンドルを握る唯奈。


その姿を見て、理世は小さく呟いた。


「感情がない」


「……本当でしょうか」


すみれは笑う。


「少なくとも」


「農家の感情は強いわね」


こうして、


前代未聞のAI感情実験は失敗に終わった。


だが。


蒼牙2000・改と唯奈の絆は、


少しだけ深まった気がした。

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