爆発五回、魔法覚醒!? ― 唯奈、ブロンズ・ベクターを本気で羨む夜
横浜港北区でのヒロインイベントが無事終了し、控室にはイベント後の独特のゆるい空気が流れていた。
ヒロインたちは椅子に腰かけ、飲み物を片手に今日の出来事を振り返っている。
小春が言った。
「いやー今日も盛り上がったね!」
麗奈が笑う。
「エミリーパパが主役でしたけどね」
沙羅も頷く。
「ヒロインイベントなのにパパのサイン列ができるってどういうことよ」
澪がぽつり。
「カリスマ」
その中心でエミリーはのんびりと椅子に座り、靴紐を結び直していた。
イベントで披露したステージパフォーマンス――
ジャンプ、ダッシュ、ステップ。
どれも軽やかだった。
小春が改めて言う。
「それにしてもエミリー、やっぱ身体能力おかしいよね」
みのりが冷静に分析する。
「走行速度、跳躍距離、反応速度」
「すべて平均値を大きく上回っています」
理世は腕を組む。
「運動エネルギーの効率が良すぎる」
「説明がつかない」
エミリーは笑う。
「ブロンズ・ベクター」
小春
「それそれ!」
エミリーの戦闘服の下に着られているインナー素材――
ブロンズ・ベクター。
運動補助機能を持つ次世代素材だ。
まだ研究段階でトップシークレットだが、ヒロインたちは「エミリーが何かすごい装備を着ている」くらいは知っている。
小春が感心する。
「いいよねー」
「軽いんでしょ?」
エミリー
「Very light」
みのり
「安全設計」
理世
「爆発の危険もない」
その瞬間だった。
控室の隅で黙っていた人物が突然口を開く。
「……いいなぁ」
全員振り向く。
唯奈だった。
小春
「どうしたの」
唯奈は腕を組んでエミリーを見る。
「おめぇよ」
「あんたの装備だっぺよ」
「爆発しねぇんだろ?」
小春
「爆発?」
唯奈はため息をついた。
「こっちはよぉ」
「何回爆発したと思ってんだ」
みのり
「何回ですか」
唯奈
「五回」
小春
「五回!?」
話は諏訪精巧機電研究所での実験にさかのぼる。
唯奈はそこで、若手技術者で週末ヒロインの中村玲と、鬼教官のすみれコーチが共同開発した兵器――
多目的補助ユニット
の被験者にされていた。
理世が静かに言う。
「その名前の時点で危険です」
唯奈は頷く。
「最初の爆発はな」
「すみれコーチの工場で起きた」
小春
「工場!?」
唯奈
「天井の棚からよ」
「金ダライ落ちてきた」
小春
「昭和のコント!」
みのり
「安全管理が疑問です」
唯奈
「二回目は倉庫」
「三回目は駐車場」
小春
「増えてる!」
唯奈
「四回目はな」
「買ったばっかのトラクター巻き添え」
小春
「トラクター!?」
そのトラクターこそ――
蒼牙。
爆発でボロボロになったそれを、すみれコーチが修理した。
しかし。
普通には直さない。
魔改造。
こうして誕生したのが
ドリームトラクター蒼牙2000
そして現在の
蒼牙2000・改。
控室の外で、エンジンが静かに唸る。
蒼牙2000・改
「唯奈さん」
「その説明には誤差があります」
唯奈
「うるせぇ」
小春は笑い転げていた。
「でも唯奈さ」
「爆発だけじゃないじゃん」
みのりも頷く。
「稲生明日香さんの案」
理世
「透視機能」
唯奈は顔をしかめる。
「あれな」
多目的補助ユニットには、明日香の発案で
スピリチュアル透視機能
が搭載された。
結果。
爆発と謎機能の影響で
唯奈は
スピリチュアル能力に目覚めた。
つまり。
魔法少女化。
小春
「いまだに信じられない」
沙羅
「ヒロインに魔法少女混ざってるのよね」
澪
「カオス」
唯奈は肩をすくめる。
「まぁな」
「簡単な魔法ぐれぇ使えっけどよ」
エミリーが笑う。
「Magic good」
唯奈はエミリーを見て言った。
「あんたよ」
「あんた大事にされてっから羨ましいんだっぺよ」
「安全装備でよ」
エミリーは笑う。
「Dad careful」
小春が言う。
「でも唯奈もすごいじゃん」
みのり
「魔法少女」
理世
「AIトラクタードライバー」
蒼牙2000・改
「肯定します」
唯奈は少し照れくさそうに言う。
「まぁな」
「蒼牙2000・改もあっからよ」
その言葉に、エミリーが親指を立てる。
「Good partner」
こうして
ロッキーの風・エミリー
そして
爆発体質魔法少女・唯奈
この二人の底知れぬヒロインが、
これからの戦隊ヒロインプロジェクトを
ますます
面白くしていきそうだった。




