文教地区パニック!ヒロインイベントを乗っ取った男 ― エミリーパパ襲来主役は誰だ!? ― エミリーパパ、イベント会場ジャック事件
横浜市港北区。
日吉、綱島といえば、都心へのアクセスも良く大学や学校が多いことで知られる文教エリアだ。落ち着いた住宅街と学生の街が混ざり合い、休日には家族連れや学生が行き交う穏やかな雰囲気が漂う。
そんな街のイベントホールで、この日――
戦隊ヒロインプロジェクトのファンイベントが開催された。
出演は豪華だ。
ロッキーの風・エミリー・ハート
江戸っ子ギャル・月島小春
千葉の叡智・館山みのり
寡黙なサックスブルー・水無瀬澪
自称ハマのプリンセス・南部沙羅
孤高のシロガネーゼ・柏木理世
そしてイベントの女王・大宮麗奈
朝から会場は満員だった。
「ヒロイン来るぞ!」
「エミリー楽しみ!」
ファンの期待は最高潮。
――のはずだった。
事件は開場前に起きた。
会場入口で、背の高い外国人男性が現れた。
「Hello!」
それはエミリーの父。
MIT卒、NASA経験あり、日米共同研究に関わる材料工学者――
ジョナサン・ハート博士。
通称。
エミリーパパ。
娘の応援に、いつものようにふらりと来ただけだった。
しかし。
観客の一人が気づく。
「あっ」
「エミリーパパ!」
すると。
「エミリーパパー!」
会場がざわついた。
エミリーパパは満面の笑みで手を振る。
「Yes!エミリーパパ!」
その瞬間。
観客が集まり始めた。
「パパ写真いいですか!」
「握手してください!」
「サインください!」
普通なら戸惑うところだが、エミリーパパは違った。
全部応じる。
「OK!」
「Nice photo!」
「Good pen!」
しかも。
カタコト日本語。
「アリガトゴザイマス!」
「ナイス応援!」
「Very元気!」
意味はよく分からない。
だが。
なぜか楽しい。
気づけば。
会場入口には
エミリーパパ列
が出来ていた。
その様子を見た小春が言った。
「ちょっと待って」
「今日の主役って私たちだよね?」
みのりは冷静だった。
「統計的に見て」
「現在パパの人気が上回っています」
沙羅が驚く。
「なんでよ!」
麗奈は笑っていた。
「すごい人ですね」
澪は一言。
「カリスマ」
理世は腕を組む。
「研究者としての肩書き」
「人当たり」
「希少性」
「すべて揃っています」
エミリーは笑う。
「Dad famous」
やがてイベントが始まった。
ヒロインたちがステージに登場。
観客が歓声を上げる。
「エミリー!」
「小春!」
しかしその中に混ざる声。
「エミリーパパー!」
小春
「混ざってる!」
さらに司会者がうっかり言った。
「今日はエミリーのお父様も来ていらっしゃいます!」
会場。
「おおおお!」
そのままステージに呼ばれた。
エミリーパパ登場。
歓声。
ヒロイン以上。
小春
「ちょっと!」
エミリーパパはヒロインたちを指差す。
「コハル!」
「Very元気!」
小春
「ありがと!」
「ミノリ!」
「Veryクール!」
みのり
「どうも」
「サラ!」
「Veryビューティフル!」
沙羅
「当然よ」
「レイナ!」
「Event queen!」
麗奈
「恐縮です」
「リセ!」
「Very serious!」
理世
「……」
最後に娘を見る。
「Emily!」
「Rocky wind!」
観客大拍手。
そして。
例のセリフ。
「キミたちもエミリーみたく走れるようになるかもよ!」
小春
「それ来た!」
理世
「素材の構造は?」
エミリーパパ
「トップシークレット!」
「HAHAHA!」
会場爆笑。
イベント終了後。
ファンの列は。
ヒロインよりも
パパの方が長かった。
小春が言った。
「完全に主役取られた」
みのりが静かに言う。
「今日のMVPはパパです」
沙羅
「認めたくないわ」
麗奈
「でも人気でしたね」
澪
「ゆるキャラ」
理世は小さく呟いた。
「……戦隊ヒロインプロジェクト」
「新マスコット誕生です」
エミリーは笑う。
「Dad good hero」
エミリーパパは手を振る。
「Thank you!」
「エミリーパパ!」
こうして港北区のイベントは、
ヒロインではなく
エミリーパパが完全に空気を支配したまま
大成功に終わったのだった。




