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ヒロインズ・リンク 〜戦隊ヒロインプロジェクト〜  作者: スパイク
プロローグ

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泥だらけのロッキーとAIトラクター ― 船橋いちご畑チェイス事件

千葉県船橋市。


東京から電車で少し走っただけとは思えないほど、のどかな田園風景が広がる地域である。実は船橋は農業が盛んで、観光農園も多い。春先にはいちご狩りの客で賑わい、地元のいちごは甘くて香りが強く、都市近郊とは思えないほど味が良いと評判だ。


その平和な農園地帯で事件が起きた。


研究データを盗んだ犯人が、観光いちご農園のビニールハウス地帯へ逃げ込んだのである。


畑、農道、排水溝、ぬかるみ。

追跡には極めて厄介な地形だった。


ヒロ室から出動したメンバーは


エミリー・ハート

柏木理世

月島小春

館山みのり

そして


山口唯奈と

ドリームトラクター 蒼牙2000・改


現地に到着すると、甘いいちごの香りが風に乗って漂ってきた。


小春が声を上げる。


「うわー!いちご畑!」


唯奈も感動している。


「ここ有名なんだべ!めちゃ甘いやつ!」


エミリーは笑う。


「ロッキーにもいちごはあるけど、これはいいね」


しかし、その横で腕を組んでいる人物がいた。


柏木理世である。


「今回の作戦は私が立案します」


その声は静かで、しかし自信に満ちていた。


小春が笑う。


「理世の作戦タイム!」


理世はタブレットの地図を開いた。


「犯人はこの農道を逃走中」


「畑の排水溝が多く、足場が不安定です」


そして、エミリーを見た。


「エミリーはこのルートを担当してください」


小春が地図を見る。


「……そこぬかるみゾーンでは?」


理世は涼しい顔。


「農地ですから」


しかし理世の心の中では。


(ここでエミリーが足を取られる)


(そして私が確保)


(功績は私)


完璧な計算だった。


追跡開始。


犯人が農道を走る。


エミリーが追う。


そして。


ぬかるみ。


ズボッ。


エミリーの足が泥にはまる。


小春が叫ぶ。


「泥トラップ!」


しかしエミリーは言った。


「OK」


次の瞬間。


全力ダッシュ。


泥を蹴り上げ、

ぬかるみを突破し、

畑の畦をジャンプ。


みのりが冷静に言う。


「むしろ速くなっています」


唯奈。


「泥ランニングだべ!」


エミリーはそのまま農道をショートカットし、数分後。


犯人をビニールハウスの前で確保した。


任務成功。


エミリーは泥だらけだった。


顔も服もブーツも泥。


しかし彼女は笑った。


「ロッキーでは普通だよ」


小春爆笑。


「ロッキー万能すぎ!」


そして。


任務成功の儀式。


小春が叫ぶ。


「やったーー!」


エミリーとハイタッチ。


パン!


「ナイス泥チェイス!」


「ナイスラン!」


二人は派手に喜ぶ。


唯奈も参加。


「すげぇべ!」


みのりも微笑む。


蒼牙2000・改のエンジンが静かに鳴った。


そして丁寧な声が響く。


「エミリーさん」


「泥んこになりながらも任務を遂行するそのガッツ」


「誠に称賛に値します」


エミリーは笑い、アメコミヒロインのようなポーズを決めた。


片手を腰に当てて。


「Thanks」


小春。


「映画みたい!」


しかし。


蒼牙2000・改は続けた。


「一方で」


その視線というかライトが理世へ向く。


「理世さん」


理世。


「……」


蒼牙2000・改。


「今回の作戦には、合理性の乏しい泥地帯ルートが含まれていました」


「意図的なものと判断されます」


小春。


「AIの査問だ!」


理世は冷静に答えた。


「農機具に一体何がわかるの?」


場が静まる。


蒼牙2000・改。


「私は農機具ではなく、高度AI搭載多目的作業支援車両です」


理世。


「トラクターです」


蒼牙2000・改。


「太田すみれさんと稲生明日香さんにより設計された高度AIです」


理世。


「農機です」


蒼牙2000・改。


「農業知識データベースは日本国内トップクラスです」


理世。


「農機具です」


唯奈が慌てる。


「やめるべ!」


しかし論争は止まらない。


蒼牙2000・改。


「農地において泥は避けるべき地形です」


理世。


「戦術では利用可能な要素です」


蒼牙2000・改。


「合理性が不足しています」


理世。


「戦術の理解が不足しています」


蒼牙2000・改。


「農業的には」


理世。


「農業の話ではありません」


小春は腹を抱えていた。


「理知的ケンカ!」


みのりが小さく言う。


「相性が悪いようですね」


エミリーは笑っていた。


船橋のいちごハウスには甘い香りが漂う。


そしてその農道では。


泥だらけのロッキーの風と、


白金の策士、


そして


AIトラクターの知的口論が続いていた。


――事件よりそっちの方が面白かった。

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