ロッキーは止まんねぇ!木曽山地大疾走 ― エミリー・ハート“人間機関車”作戦
岐阜県の中央部に広がる木曽山地。
御嶽山や木曽駒ヶ岳などの名峰が連なる、日本でも有数の山岳地帯だ。深い森、急峻な尾根、入り組んだ林道。かつて中山道の宿場町が栄えたこの地域は、今でも人の気配より鹿や熊の気配のほうが濃い。
その山奥へ、逃走犯が車で逃げ込んだ。
「岐阜県警より要請!山中逃走犯の追跡任務です!」
今回の任務メンバーは、
エミリー・ハート、
山口唯奈、
月島小春、
館山みのり、
杉山ひかり、
柏木理世。
そして山道を轟音で突き進むのは――
ドリームトラクター蒼牙2000・改。
巨大なタイヤが岩を踏み砕き、木曽の林道を突進する。
操縦席では唯奈がハンドルを握っていた。
「よーし蒼牙ァ!ぶっ飛ばすどぉ!逃げられっかよあんな野郎ぁ!」
蒼牙が落ち着いた声で答える。
「了解。追走モード起動。
この程度の山道、問題ありません」
後部座席で小春がテンション爆上がり。
「うおおお!これ完全に山ラリーじゃん!」
みのりが即ツッコミ。
「ラリーじゃありません!」
ひかりは青ざめていた。
「この道……普通の車通れませんよ……」
理世が冷静に双眼鏡を覗く。
「犯人、さらに山奥へ逃走しています」
唯奈がニヤリ。
「逃げられっかよバカタレぇ!蒼牙ァ!もっと踏めぇ!」
蒼牙が加速する。
しかし――
山道はどんどん細くなる。
岩。
崖。
倒木。
ついに蒼牙が減速した。
「警告。
この先、車両走行限界です」
唯奈が叫ぶ。
「はぁ!?何言ってんだ蒼牙ぁ!まだ行げっぺ!」
蒼牙が静かに答える。
「これ以上は危険です。
無念です」
小春が驚く。
「蒼牙がしょんぼりしてる!」
みのりがため息。
「さすがの蒼牙でも無理ですか……」
その時だった。
エミリーが静かに立ち上がった。
金髪が山風に揺れる。
碧眼が山の奥を見据える。
「OK」
みのりが聞く。
「何がOKなんです?」
エミリーは当然のように言った。
「ここからはランニング」
全員。
「は?」
次の瞬間。
エミリーは山道を駆け出した。
速い。
異様に速い。
唯奈が叫ぶ。
「おいおいおい!あの女なにやってんだよ!車より速ぇぞおい!」
小春が大爆笑。
「山岳生物出た!」
蒼牙が冷静に分析。
「時速二十五キロ。
人間として異常です」
みのりが呟く。
「ロッキー山脈って恐ろしい……」
エミリーは岩を飛び越え、
斜面を駆け上がり、
倒木を踏み越える。
完全に山岳動物だった。
その頃。
逃走犯は息を切らしていた。
「はぁ……はぁ……
ここまで来れば追って来られねぇだろ……」
その背後から声が響く。
低く落ち着いた声。
まるで西部劇の保安官。
「その考えは――
間違いだ」
犯人が振り向く。
そこには金髪の女。
息一つ乱れていない。
「な……なんだお前!?」
エミリーがゆっくり歩み寄る。
「逃げるのはここまで」
犯人がナイフを構える。
「来るな!」
エミリーは肩をすくめる。
「カウボーイはこう言う」
そして静かに言った。
「山は逃げる者より、追う者に味方する」
犯人が混乱。
「なんだそのセリフ!?」
エミリーはさらに一歩。
「もう一つ教える」
碧眼が鋭く光る。
「ロッキーでは――」
「私より速いのは熊くらい」
犯人。
「え?」
次の瞬間。
エミリーが一歩踏み込む。
一瞬でナイフは地面に落ちていた。
数分後。
山道に岐阜県警が到着。
警察官が驚く。
「どうやって追いついたんですか?」
エミリーは爽やかに答えた。
「ランニング」
小春が笑い転げる。
「山岳逃走犯をランニングで確保する人初めて見た!」
唯奈が蒼牙のボンネットを叩く。
「蒼牙ァ、あんた負げだなぁ!人間に負げっとは情けねぇ!」
蒼牙が静かに言う。
「認めます」
少し間を置いて。
「人類の中に例外が存在するようです」
ひかりがぽつり。
「エミリーさんだけ例外です」
みのりが苦笑。
「デンバー怖いですね……」
エミリーは遠くの山を見た。
そして爽やかに言う。
「デンバーでは普通だよ」
唯奈が即ツッコミ。
「普通なわげねぇだろバカヤロォ!!」
木曽山地に、
茨城弁のツッコミが豪快に響き渡った。
ロッキーの風は今日も――
日本の常識を軽々と追い越していた。




