ロッキーの風、横浜直撃!エミリー衝撃デビュー
横浜・みなとみらい。
海は青く、観覧車はのんびり回り、赤レンガの壁は「今日は何か起きるぞ」と言わんばかりに陽を反射している。潮風がステージをかすめ、週末の人波がイベントスペースを埋めた。
本日のヒロインは、小春、沙羅、みのり、陽菜、美紀、詩織、乙実。そして――初登場の新戦力。
DJブース風に設えた中央ステージに、小春が跳び出す。ヘッドセットを指で弾き、低音を効かせた声で叫ぶ。
「ヨコハマァァァ!準備はいいかぁぁぁ!」
歓声。
「今日はただの新メンバー発表じゃない!標高1600メートルの青空から、ロッキー山脈のワイルドな風がここ、みなとみらいに直送だ!雪解け水で磨かれたハート!スノーボードで鍛えた体幹!トレイルを駆ける脚力!自由とスマイルのハイブリッド、コロラド州デンバーの誇り!」
無駄に壮大だ。だが勢いがすごい。
「さあ、ロッキーの頂からやってきたグローバル・ヒロイン!エミリー・ハート、登場だぁぁぁー!!☆」
ドラムロール、スモーク、光。
現れたのは、長身の金髪碧眼。青い空に映える白い歯。絵に描いたようなアメリカンビューティーに、観客が「おお……」と息をのむ。
エミリーはマイクを握り、満面の笑みで――
「みなさん、こんにちは。本日はお越しいただきありがとうございます。横浜の海風、とても気持ちいいですね。」
完璧な日本語。
観客、どよめき。
「え?」「通訳どこ?」「今の発音、横浜育ち?」
小春が両手を広げてツッコむ。「ちょっと待って!その日本語、ロッキー山脈で習ったの!?」
エミリーは肩をすくめる。「小学校です。」
爆笑。
沙羅が「横浜代表は私だからね」と小声で釘を刺すと、エミリーは即座に頷く。「横浜代表は沙羅。ワタシはデンバー代表。」
会場、さらに沸く。
みのりは「国際案件の通訳、確保」と理知的にメモを取り、陽菜は「英語しゃべってぇ~!」と無茶振り。詩織は静かに感心し、美紀は「体調管理は高地仕様だね」と真面目にうなずく。乙実は控えめに拍手しつつ、目がキラキラだ。
そこへ、エミリーが突然、表情を変えた。
「ワタシ、ガイジンダカラ、ニホンゴワカリマセン~」
流ちょうな発音でカタコトを演じる。
観客、総ツッコミ。
「今さっき完璧だったろ!」「演技派か!」
小春が乗る。「ロッキー仕込みの演技力!標高が高いほどボケも高い!」
エミリーはニヤリ。「標高差でツッコミが鍛えられました。」
もう完全にヒロ室のノリだ。
そのとき、客席の一角が異様に盛り上がる。
「エミリー!ベリーグッド!ガンバリマショウネ!」
星条旗柄のハチマキ、身振り大きめ、怪しげな日本語。目立ちすぎる外国人がいる。
小春が指差す。「そこのハイテンションな方!どなたですか!」
エミリー、苦笑い。「……パパです。」
会場、爆発。
小春が即紹介。「みなさーん!あちらがエミリーパパです!MIT卒、NASA経験あり、でも日本語はまだ工事中!」
エミリーパパは両手を広げる。「ミナトミライ、サイコー!エミリー、ナンバーワン!」
観客のスマホが一斉に向く。気づけば、エミリーより先にパパが写真を求められている。
「握手お願いします!」「サインください!」
パパは快く応じる。「オーケー!ライン、ツクッテクダサイ!秩序ダイジ!」
なぜか交通整理まで始める。
美紀が小声で「医療ボランティアより手際いい」とつぶやく。
エミリーがステージから抗議する。「ちょっと!今日の主役ワタシ!」
小春が笑いながらまとめる。「みなとみらい、本日より“親子セット”で国際交流だぁ!」
潮風が吹く。観覧車がゆっくり回る。赤レンガが笑っている気がする。
エミリーは最後に、少しだけ真面目な声で言う。
「デンバーで学んだこと、横浜で育った時間、ぜんぶ持ってきました。今日は楽しみましょう。」
そして、またとぼける。
「ワタシ、ニホンゴムズカシイネ~」
分かっている。全部、分かっている。
それでも笑ってしまう。
ロッキーの風は、確かに横浜に届いた。
そして今日、ヒロ室に“国際仕様の笑顔”が加わった。
主役はエミリー。
――たぶん、パパも。




