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ヒロインズ・リンク 〜戦隊ヒロインプロジェクト〜  作者: スパイク
プロローグ

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デンバー魂、横浜スマイル――戦隊ヒロイン国際仕様

新橋ヒロ室に、風向きが変わる瞬間がある。

それは爆発でも号令でもなく、だいたい“笑い声”で分かる。


その中心にいるのが、エミリー・ハート、21歳。


都の西北にキャンパスを構える、あの伝統ある私大に通う現役女子大生だ。構内には大隈像が静かに立ち、学生はレポートとサークルと将来の不安に追われる。その中に、米国国籍保持者でありながら日本語ネイティブのヒロインが普通に混ざっているのだから、世界はなかなか面白い。


出身はコロラド州デンバー。

現在は横浜の、外国人が多く住むエリアに家族と暮らしている。カフェのメニューは英語と日本語が半々、隣の席からはスペイン語も聞こえる。そんな環境で育ったせいか、エミリーの会話は空気を越境する。


父はMIT卒のエリート技術者。NASA勤務経験あり。米軍とも近い。現在は某研究所で戦隊ヒロイン制服の新素材開発に関与しているという、どう考えても履歴書が分厚い人物だ。

だが本人はというと、「エミリー、キョウモ ガンバリマショウネ!」と怪しげな日本語を駆使してイベントに乱入してくる陽気なパパである。ヒロインたちからは密かに人気だ。


母は美人で明るい日本人。

家の中では父が英語、母が日本語、娘が両方でツッコむという国際漫才が日常だ。


エミリーはトリリンガル。

英語、日本語、スペイン語。

発音は完璧、敬語も自然。なのに時々、


「ワタシ、ガイジンダカラ、ニホンゴワカリマセン~」


と流ちょうな日本語でとぼける。

ヒロ室は総ツッコミだ。


デンバー育ちだけあって、ウインタースポーツとトレッキングはお手の物。ロッキー山脈で鍛えた体幹は伊達ではない。スキーもスノーボードも滑れるし、高地での持久力はヒロイン層でも上位だ。


10歳までデンバーに住んでいた。

そのため故郷への愛着は人一倍。


「横浜代表やな」と言われると即座に否定する。


「横浜代表は沙羅だよ。ワタシはデンバー代表。」


本気半分、誇り半分。

横浜も好きだが、デンバーは魂の原点なのだ。


ヒロ室に合流してからの適応速度も異常に速い。


美月が「宇宙刑事やるで」と言えば、


「いいね、ワタシは宇宙からの交換留学生役?」


と即乗る。

幼稚なボケにも全力で付き合う。


詩織や陽菜のやや脱線気味の会話にも同じ目線で笑い、

みのりとひかりのグレースフォースとは理知的な議論をする。

空気を読む力が高い。相手に合わせてチューニングできる。


それが彼女の最大のスペックだ。


日本人らしいお人やかな気遣い。

だが意見ははっきり言う。


「それは違うと思うよ。」


笑顔で、しかし曖昧にしない。

アメリカ的自己主張と日本的調和の融合。


ある日、美月が真顔で聞いた。


「エミリー、お前ほんま何者や?」


エミリーは肩をすくめる。


「ワタシ? ただのデンバー代表だよ。」


そしてまた、とぼける。


「ワタシ、ニホンゴムズカシイネ~」


ヒロ室、再び総ツッコミ。


彼女は象徴だ。

日米交流の顔。

だがそれ以上に、場を明るくする存在。


三つの言語。

二つの祖国。

一つの自然体。


エミリー・ハート。


横浜経由、デンバー代表。

戦隊ヒロイン史上、もっとも国際的で、そしてたぶん、もっとも笑いを取る新人がここにいる。


そして今日も、ヒロ室のどこかで声が響く。


「ワタシ、ガイジンダカラ、ワカラナイヨ~」


分かってる。

全部、分かってる。


それでも笑ってしまうのが、エミリーというヒロインだ。

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