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ヒロインズ・リンク 〜戦隊ヒロインプロジェクト〜  作者: スパイク
プロローグ

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ホワイトハウスが笑った夜――勇敢な若い女性が大好きだ

米国大使館人質占拠事件は、ニュースでは「迅速解決」「被害軽微」と短く報じられた。

だが、現場を知る者は分かっている。


あれは“奇跡”ではない。

綿密な判断と、胆力と、ほんの少しの大胆さが噛み合った結果だ。


水面下で動いたのは赤嶺美月と西園寺綾乃。


美月は現場で空気を変えた。

敵の緊張を読み、冗談めかした一言で呼吸をずらし、銃口の向きよりも心の向きを逸らす。


綾乃は静かに盤面を組み替えた。

通信、動線、心理。

敵が“自分は有利だ”と錯覚している場所を見つけ、その前提を崩す。


派手な突入はない。

大爆発もない。

だが人質はほぼ無傷で帰還した。


この結果は、太平洋を越えた。


ホワイトハウス。

豪華な祝賀晩さん会。

金色の装飾、磨かれた銀食器、そして“成功”の空気。


そこに現れたのは、豪快な笑い声を響かせる米国大統領だった。


背筋は伸び、握手は強く、声はよく通る。

場を支配するタイプの人物。だが、どこか陽気だ。


大統領は二人を見るなり、にやりと笑った。


「あなたたちがヒロインか? 信じられないほど若い。しかも信じられないほど強い」


通訳が訳す間もなく、大統領は続ける。


「私は勇敢な若い女性が大好きだ」


会場がどっと沸く。

豪快なアメリカンジョーク。だが賛辞は本気だ。


美月は一瞬きょとんとし、それから肩をすくめた。

「ほなウチ、今日から大統領の推しでええですか?」


通訳が必死に言葉を整える。

綾乃は涼しい顔で補足する。


「閣下、美月は“光栄です”と申しております。ただし推しは有料どす」


大統領は腹を抱えて笑った。


「いいね、ビジネスも分かっている。米国で選挙に出たらどうだ?」


さらに笑いが起きる。


やがて大統領は少しだけ真面目な顔になった。


「あなたたちは銃より強い。勇気は伝染する。これは軍事ではない。文化だ」


その言葉は重い。


そして再び、豪快な笑み。


「このまま米国に残ってみないか? 投打二刀流の野球選手みたいに活躍できる。ヒーローとヒロイン、両方やればいい!」


冗談のようで、本気が混ざっている。


美月が即座に返す。

「二刀流? ほなウチ、投げて打ってツッコんでボケて四刀流いきますわ」


通訳が一瞬固まり、英語が迷子になる。

綾乃が静かに補う。


「彼女は“可能性は無限”と言うております」


大統領は満足そうに頷いた。


「素晴らしい。私は勇敢な若い女性が大好きだ。そして私は勝つのも好きだ。あなたたちは勝者だ」


拍手が鳴り響く。


その夜、ホワイトハウスの内部報告書にはこう記された。


“戦隊ヒロインは、安全保障の補完ではない。

それは国のイメージを変える装置である。”


大統領は側近に言う。


「米国にも必要だ。ヒロインを創ろう」


即断だった。


日本ではすでに戦隊ヒロインは人気を博している。

地域イベント、青少年教育、防災訓練、そして時に本気の任務。

“真面目とバカを同時にやる”その姿勢が支持されている。


米国側の分析チームは結論を出した。


「ソフトパワーとして有効。若年層への影響大」


日本側も考える。

米国との連携強化は戦略的に重要。象徴的な交流枠は歓迎すべきだ。


利害は一致した。


日米合同検討会。

資料は山積み。

だが結論は速い。


「交流枠ヒロインを創設する」


条件は明確。


・日米双方に通じる

・象徴性がある

・政治的に安心

・言語能力が高い


リストの最上段にあった名前。


エミリー・ハート。


横浜在住の日系米国人。

日本生活十年以上。

英語・日本語・スペイン語ネイティブ。

父はMIT卒の技術者で、制服新素材開発に関与。


大統領は写真を見て言った。


「完璧だ。彼女にオファーを出そう。私は勇敢な若い女性が大好きだからね」


豪快な笑いが会議室に響く。


こうして、国家レベルの決定は下された。


そのころエミリーは、横浜でいつもの日常を過ごしていた。

自分が“国家間プロジェクトの鍵”になるとは、まだ知らない。


運命は、すでに動いている。


太平洋の両岸で、

ヒロインという言葉が、静かに翻訳され始めていた。

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