四国ライン、始動。蜜柑とうどんとダッシュ力
四国が、やたらと騒がしい。
発端はもちろん、大西結月(香川)である。
元女子競輪選手。
小柄だが、現役時代に鍛え上げた逞しい太腿は健在。任務となれば、その脚から繰り出されるダッシュ力はもはや物理兵器級だ。
港湾封鎖、山間部搬送、狭路追走――
どの任務でも、結月は一瞬で間合いを詰める。
そして何より強いのが、山口唯奈(茨城)が操縦するドリームトラクター「蒼牙2000・改」(愛媛)との“戦隊ヒロインライン”。
自転車とトラクター。
普通ならジャンル違いである。
しかし、先行は結月、番手から蒼牙が発射。
あるいは蒼牙が先導し、結月が横から捲る。
この異種混合ラインが、なぜか噛み合う。
隼人補佐官(東京)も腕を組んで唸る。
「理にかなっている。番手の位置取りが完璧だ」
理論派からの高評価。
香川県当局は胸を張る。
「これで安心してうどんを啜れる」
県民も静かに頷く。
うどんのコシは平和の証である。
一方、愛媛。
松山の至宝と呼ばれた元ご当地地下アイドル「オレンヂ☆ステップ」のみーちゃんこと越智美晴(愛媛)は、一度は「普通の女の子に戻ります」と宣言した。
だが三日後。
「やっぱりライトが恋しかったけん」
電撃復帰。
しかも戦隊ヒロイン入り。
歴女として城郭史や難波京を語るが、会場の反応は正直微妙。
「むずかしい〜!」
「ライト眩しすぎ〜!」
しかし、ヒロヒロのバカバカしいイベントでは本気。
老体に鞭打って(※本人は全否定)、全力疾走。全力ダンス。全力ジャンプ。
その姿に県民は涙ぐむ。
しかも「蒼牙2000・改」は松山生まれ。
凱旋イベントでは蒼牙が伊予弁で語り出す。
「わしは松山の子じゃけん。帰ってきたけん」
観客大歓声。
みーちゃんも負けじと叫ぶ。
「松山は技術と文化の町!」
愛媛県庁当局は小さくガッツポーズ。
県民は今日も蜜柑が美味い。
そして徳島。
阿波のスピードスター三好さつき(徳島)は清楚で上品。言葉遣いも丁寧。
「皆様、本日もお越しいただき誠にありがとうございます」
情報番組のキャスターにも起用され、爽やかに四国を語る姿はまさに優等生。
走れば速い。
喋れば上品。
踊れば華やか。
徳島県当局は言う。
「さつきがNo1」
その自信、揺るがない。
そして高知。
土佐の突進娘・神代なつめ(高知)。
「やっちゃろうぜよ!」
理屈より勢い。
現場ではまず突進。考えるのは後。
だがその明るさと分かりやすさが圧倒的。
会場の空気を一瞬で持っていく。
「なつめはもう土佐の偉人やき」
早くもそんな声まで出ている。
こうして四国四県、ヒロイン勢揃い。
うどん、蜜柑、阿波踊り、坂本龍馬。
それぞれの誇りが、まるで独立リーグのようにぶつかり合う。
「ラインは強いが、県は譲らん」
そんな空気。
波田顧問(東京)は腕を組み、満足げに頷く。
「これぞ地域創生。オイラのやりたかったのはこれだ」
誰も聞いていないのに名言風に言う。
結月は静かにペダルを回す。
みーちゃんはライトを当てる。
蒼牙は伊予弁でうなる。
さつきは優雅に微笑み、
なつめは全力で叫ぶ。
四国は、完全に火がついた。
県の意地とお国自慢が交錯するなか、
なぜかラインは崩れない。
蜜柑とうどんとダッシュ力。
四国が、面白くなってきた。




