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ヒロインズ・リンク 〜戦隊ヒロインプロジェクト〜  作者: スパイク
プロローグ

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623/680

難波京の風に誓う――ヤジの聖地で響いた交通安全ライン宣言

森ノ宮駅から歩いてすぐ。

いまは巨大ショッピングモールとして家族連れでにぎわうこの場所、かつては“大阪らしさ”を凝縮したボロ球場があった。


スタンドとグラウンドの距離は異様に近い。

声はそのまま選手に直撃。

ヤジは文化。

気性の荒いファンからは、試合後にバスへ生卵が飛ぶ事件まであったという、誉めているのか貶しているのか分からない昭和の熱量。


「大阪って、ええ意味で圧が強いねん」


その跡地で今日行われるのは、戦隊ヒロイン交通安全イベント。


司会はもちろん、生粋の河内人・赤嶺美月(大阪)。


「さぁ始まりましたー!ヤジの聖地から安全運転を叫ぶでぇ!」


拍手。笑い。


登壇するのは、大西結月(香川)、坂井まどか(大阪)、みーちゃん(愛媛)、岡本玲奈(兵庫)、三好さつき(徳島)。


結月の横に立つのは、兵庫県警の現役警察官でもある玲奈。凛とした制服姿で一礼する。


「今日はな、自転車のルールの話や。最近ほんま厳しなっとるからな」


玲奈は神戸訛りの柔らかな関西弁で語る。


「ながらスマホあかんで?酒気帯びも当然あかん。青切符の対象も広がる方向やし、軽く考えたらあかんのや」


会場から「へぇー」とどよめき。


結月が実演用の自転車にまたがる。


「後方確認、手信号、減速。この三つ守るだけで事故は減ります」


太ももが頼もしすぎる。

説得力が物理。


まどかが横から茶化す。


「この脚で急ブレーキかけたらアスファルト削れるんちゃう?」


笑い。


さつきが丁寧に補足する。


「自転車も軽車両でございます。歩道走行や逆走は原則違反です。皆様どうかご注意を」


その真面目な説明に、会場から一人の子どもが叫ぶ。


「むずかしー!」


ここで歴女のみーちゃんが前へ出る。


「実はこの辺り、難波京の時代から交通の要衝でして――大阪城公園の成り立ちはですね――」


ライトが当たる。


強い。


まぶしい。


「みーちゃんライト眩しすぎー!」

「わからんー!」


ヤジ飛ぶ。


完全に昭和球場の再現。


しかし美月が即フォロー。


「ほら!ヤジの質は当時と変わらん!でも今日は生卵ちゃうで!拍手で頼むわ!」


爆笑。


みーちゃんはめげない。


「奈良時代からこの地域は物流の中心で――」


美月が割り込む。


「つまり昔から交通の要所や!せやから今もルール守らなあかんっちゅう話や!」


拍手。


玲奈がうなずく。


「せやねん。秩序は昔も今も大事や」


結月がマイクを持つ。


「競輪でもラインを守らないと落車します。公道も同じです」


一瞬、空気が引き締まる。


かつてヤジが飛び交った土地で、いまは交通安全の声が響く。


美月がまとめに入る。


「大阪のヤジは愛や。でも事故は愛ちゃう。ヘルメット被って、安全第一や!」


大歓声。


最後は全員で宣言。


「自転車は正しく乗りましょう!」


拍手喝采。


ショッピングモールの吹き抜けに反響する声は、かつての怒号とは違う。


生卵は飛ばない。

代わりに配られるのは反射材キーホルダー。


玲奈が小声で言う。


「今日のヤジは健全やったな」


美月がニヤリ。


「せやろ?大阪はちゃんと進化しとんねん」


結月は自転車を押しながら、静かに笑う。


ヤジの聖地に、今日はペダルの音が戻った。


それもまた、大阪らしい進化の形だった。

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