先行一本、湾岸一直線。蒼牙番手死守の逃げ切り劇
舞台は大阪府内の湾岸エリア――夢洲へと続くバイパス道路。
巨大なコンテナクレーンが並び、海風が吹き抜け、遠くには観覧車がきらめく。物流と未来都市が交差するこのエリアは、直線が長く、風が強い。スピード勝負にはうってつけの場所だ。
その日、違法物資を狙う妨害グループが湾岸バイパスへ侵入。証拠品を積んだ車両を妨害しようとしていた。
証拠を輸送しているのは――
唯奈(茨城)がハンドルを握るドリームトラクター蒼牙2000・改(愛媛)。
「後続、三台!」
無線が鳴る。
蒼牙2000・改が低く唸る。
『進路確保を要請します』
隼人補佐官の声。
「狭い。横に出させるな。ラインを組め」
一歩前に出る影。
大西結月(香川)。
「私が先行します」
美月(大阪)が驚く。
「トラクターとライン組むんか!?」
結月はヘルメットを締める。
「先頭、私。蒼牙、番手でお願いします」
蒼牙2000・改が即答。
『番手死守』
完全に競輪。
スタート。
結月が前へ出る。
一定ペースで引く。
湾岸の横風が吹く。
敵車両が横に並ぼうとする。
だが――
蒼牙2000・改が絶妙な車幅で蓋をする。
合法、ギリギリ。
『ライン維持、良好です』
実況か。
結月は振り返らない。
呼吸一定。
ペダルはリズムよく回る。
「ここで踏みます」
ギアを上げる。
先行ペースアップ。
敵が焦る。
「速っ!?トラクター守ってるぞ!」
まどか(大阪)が無線で叫ぶ。
「完全にライン戦やん!」
唯奈が真剣な声で言う。
「蒼牙、幅寄せ合法範囲で」
『承知しました。番手は命です』
命て。
最終直線。
海風が強まる。
結月は立ち漕ぎに入る。
太ももが唸る。
湾岸に風切り音が響く。
蒼牙2000・改が風を受け止める。
物理的ドラフティング。
敵車両は横風にあおられ失速。
距離が開く。
「逃げ切れる!」
美月が叫ぶ。
残り500メートル。
結月、さらに踏む。
逃げ切り体勢。
蒼牙2000・改が後ろで安定走行。
『残り三百。先行有利』
完全に専門紙記者。
ゴール地点。
警備隊が封鎖。
敵は追いつけない。
任務成功。
結月はゆっくりと減速する。
呼吸は荒いが、表情は涼しい。
唯奈が蒼牙2000・改を止める。
美月が駆け寄る。
「お前ら、完全に競輪やん!」
まどかが笑う。
「トラクターが番手って初めて見たわ」
蒼牙2000・改が低く言う。
『勝因はペース配分と風向き判断。理想的な逃げでした』
隼人補佐官が一言。
「ライン完璧」
結月は蒼牙2000・改のボンネットに軽く触れる。
「蒼牙2000・改には感謝します」
蒼牙2000・改が少しエンジン音を上げる。
『光栄です』
美月が呟く。
「トラクターにお礼言うヒロイン、初やな」
湾岸の夕陽が沈む。
直線の海風。
先行一本。
逃げ切り勝利。
競輪で培ったライン戦術が、湾岸バイパスを制した日だった。




