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ヒロインズ・リンク 〜戦隊ヒロインプロジェクト〜  作者: スパイク
プロローグ

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618/681

最終1キロ、風を読め。河川敷ナイトレースの捲り一閃

大阪府内を流れる大きな川。その広い河川敷は昼はランナーと少年野球、夜は静かな風の通り道になる。だがその夜、闇の中で違法ドローン搬送グループが動いていた。信号妨害装置の起動キーを持ち、スポーツタイプの電動クロスバイクで一直線に逃走中だという。


「対象、下流方向へ高速移動!」


無線が弾ける。


赤嶺美月(大阪)が前へ出る。「追うで!」


坂井まどか(大阪)が続く。「一本道なら勝負や!」


山田真央(愛知)は状況を即座に整理する。「向かい風区間があります。後半で減速が見込まれますね、たぶん、いや、確実に、あの、理論上はですね――」


「長い!」と美月。


唯奈(茨城)はドリームトラクター蒼牙2000・改を河川敷入口で待機させる。だが段差と砂利で進入不可。


『車両重量および接地圧の観点から侵入は非推奨です』


今日も理詰めだ。


結月は後方で静かにヘルメットを締める。「私、後ろにつきます」


犯人の電動クロスバイクは一定のトルクで滑るように進む。ライトが揺れ、川面に反射する。


結月は追い抜かない。風下に入り、一定距離を保つ。ドラフティング。空気抵抗を削る。心拍は落ち着き、呼吸は一定。


真央が無線で興奮する。「今は脚を温存してますね!最終直線での加速を見越して――」


「実況やめ!」とまどか。


河川敷の風向きは刻々と変わる。結月は肌で読む。芝の揺れ、川面のさざ波、犯人の肩の上下。


「あと一キロ」


向かい風区間が近い。電動は一定出力。だが向かい風では空気抵抗が増す。


犯人が減速する。


「くそ、風が……!」


その瞬間、結月がギアを一段上げる。


踏み込む。


太ももが唸る。重いギアを踏み倒す。立ち漕ぎではなく、腰を安定させた強い踏み。


風を裂く。


外から一気に被せる。


捲り。


ライトが並び、そして前へ出る。


進路を奪い、減速させる。


ワイヤーデバイスが後輪を絡める。


停止。


静寂。


犯人、呆然。「なんで……電動なのに……」


結月は息を整え、淡々と鍵を回収する。


「四日市で勝ったときと、同じ風でした」


一瞬、全員が固まる。


美月がぽつり。「急に名言出すなや」


まどかが笑う。「風に勝つ女かいな」


唯奈が蒼牙2000・改のハンドル越しに親指を立てる。


蒼牙2000・改が低く唸る。


『勝因分析。第一に風向きの読解。第二に脚力の残存管理。第三に最終局面での加速タイミング。以上、完勝です』


「専門紙か!」と美月。


『本紙見解としては、仕掛けどころが絶妙でした』


「完全に記者やん!」


河川敷に笑いが広がる。


結月は静かに自転車を止める。呼吸は整っている。


「風は味方にも敵にもなる。読めば、味方です」


美月が肩を叩く。「かっこええやん」


まどかが頷く。「今日は完全にエースやな」


真央がメモを取る。「空力と心理戦の融合……」


唯奈が蒼牙2000・改に言う。「次は入れる道、探そうな」


『了解。空力研究を開始します』


「やめなさい」


夜の河川敷に再び静けさが戻る。


ライトは消え、風だけが流れる。


最終1キロで勝負を決める。


捲りは、逆転の技。


そして結月の脚は、今日も風を味方につけた。

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