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ヒロインズ・リンク 〜戦隊ヒロインプロジェクト〜  作者: スパイク
プロローグ

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617/680

最終直線は空の上。屋上回廊、捲り一閃

大阪市内の高層ビル群。

ガラス張りの外壁が夕陽を反射し、地上では人波が途切れない。だがその上、ビルとビルを結ぶ屋上連絡通路は、風が強く、足音がやけに響く静かな世界だ。


その日、重要施設の認証キーを奪った犯人が屋上回廊へ逃走。地上封鎖は済んだが、上空ルートは盲点だった。


「対象、屋上通路へ侵入!」


無線が飛ぶ。


赤嶺美月(大阪)が拳を握る。

「上かいな!」


西園寺綾乃(京都)は冷静に状況を見渡す。

「地上は混雑。上からの制圧が最適どすな」


白浜麻衣(和歌山)が息を整える。

「風、強いですね……」


エレベーターで屋上へ。だが通路は幅が狭い。全力疾走は危険。押し合えば転落のリスクもある。


犯人は鍵を握り、連絡通路を走る。短い直線と急カーブの連続。まるで人工のバンクだ。


そのとき、結月が静かに言う。


「折りたたみ、使えますか?」


屋上保守用の小型バイク。軽量、ハンドルは低い。


美月が驚く。

「ここで走るんか!?」


結月は頷く。

「追い込みます。でも、今はまだ行きません」


綾乃が目を細める。

「まさか……泳がせるおつもりどすか?」


結月は小さく笑う。

「脚を使わせます」


犯人は全力で走る。通路の風が強まり、体勢が不安定になる。


結月は後ろで一定距離を保つ。呼吸は整い、視線は冷静。


「最終コーナーまで」


通路がわずかに広がる区間がある。最後の直線。


そこへ入る瞬間。


「今です」


ギアを上げる。


踏み込む。


屋上に風切り音が響く。


美月が叫ぶ。

「速っ!」


麻衣が目を丸くする。

「自転車って、そんな音出るんですか……?」


結月は外側から加速。犯人の横へ並ぶ。


捲り。


一気に前へ出る。


進路を塞ぐ。


犯人は慌てて減速。


その瞬間、結月が腕を伸ばす。


鍵を掴む。


静止。


風だけが吹く。


犯人、呆然。


「なんで……」


結月は息を整えながら言う。


「位置取りです」


美月が追いつく。

「位置取りで全部いけるんか!」


麻衣がほっと息をつく。

「無事でよかったです……」


そして綾乃。


はんなりと扇子を開くように一言。


「まあまあ……屋上で捲りとは、風情がございますわ」


結月が振り向く。

「風情、ですか?」


「ええ。空の上で競輪なさるとは。京都ではなかなか見られへん光景どす」


任務成功。


地上へ戻るエレベーター内。


美月が結月をじっと見る。

「ほんま、競輪やってたんやな」


「やってました」


綾乃が静かに続ける。

「本番であれだけ冷静なのは、修羅場をくぐってはる証拠どすな」


結月は少しだけ照れる。


「バンクも屋上も、曲がり角は同じです」


麻衣が感心する。

「でも、落ちたら大変でしたよ?」


「落ちません」


即答。


全員、苦笑。


ビルの谷間に夜景が灯る。


屋上連絡通路は再び静寂を取り戻す。


今日の任務は派手ではない。


だが確実だった。


最終直線での捲り。


競輪で磨いた一瞬の判断。


空の上でも、結月の脚は迷わない。


そして綾乃が最後にぽつり。


「次は地上でお頼みしますえ。屋上は心臓に悪いどす」


結月は笑う。


「最終直線があれば、どこでも行けます」


大阪の夜風が、高層ビル群をすり抜けていった。

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