最終バックからの逆襲。南港コンテナ迷路を捲れ
大阪南港。
巨大なコンテナが積み上がり、クレーンが空を切り、海風が鉄の匂いを運ぶ人工の港湾都市。フェリーが発着し、物流が唸るこの場所は、昼夜を問わず忙しい。だが一度コンテナヤードの奥に入り込めば、そこは迷路だ。狭い通路、急な曲がり角、死角だらけ。
その日、違法物資の受け渡しが発覚した。
「対象、コンテナCブロックを移動中!」
無線が飛ぶ。
敵は電動アシスト自転車+小型台車。狭い通路を縫うように逃走。
パトカーは入れない。大型車両は論外。
唯奈(茨城)のドリームトラクター蒼牙2000・改は入口で停止。
『物理的に無理です。幅が足りません』
今日も正直だ。
隼人補佐官(東京)が短く指示する。
「機動力重視。追える者が行け」
一歩前に出る影。
大西結月(香川)。
「私が行きます」
支給された軽量ロードバイクを受け取り、サドルを一瞬で合わせる。ギアを触る。タイヤの空気圧を指で確認。
まどか(大阪)が小声で言う。
「真顔やな……」
結月は頷く。
「最終バックまで脚を残します」
誰も分からない。
スタート。
コンテナの壁に囲まれた狭路。電動アシストのモーター音が前方で唸る。
結月は追いかけない。
距離を保つ。
心拍を一定に。
「焦らない。ここは前を泳がせる」
競輪で叩き込まれた戦術。先行を泳がせ、脚を削らせる。
敵は必死に漕ぐ。電動アシストを過信している。
直線。
曲がり角。
また直線。
コンテナの隙間から海風が吹く。
結月、呼吸が整っている。
最終コーナー手前。
狭いが、わずかに広がる区間。
「ここ」
ギアを一段上げる。
踏み込む。
太ももが唸る。
空気が変わる。




