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ヒロインズ・リンク 〜戦隊ヒロインプロジェクト〜  作者: スパイク
プロローグ

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615/685

包囲せよ、ペダルで。ママチャリが街を静めた日

大阪市内のとある下町エリア。

昼間でもネオンが消えない飲み屋街、古い簡易宿泊所、狭い路地が迷路のように絡み合う街。


その日、労働者団体による大規模なデモが発生した。


本来は平和的な集会のはずだった。だが一部が過激化し、路地へと流れ込み、押し合いへし合い。車両は入れず、警備隊は進路を塞がれ、現場は混乱していた。


隼人補佐官(東京)の無線が冷静に響く。


「過剰制圧は避けろ。接触ゼロで流れを止める」


唯奈(茨城)のドリームトラクター蒼牙2000・改は路地入口で停止している。


『車幅、物理的に侵入不可です』


珍しく弱気だ。


「無念です」


蒼牙2000・改はまた言った。


今日は機械の出番ではない。


結月が前に出る。


「私、行きます」


誰かが振り向く。


目の前にあるのは――


商店街の貸し自転車、通称“ママチャリ”。


カゴ付き、三段変速、やや錆び気味。


まどか(大阪)が言う。


「それで?」


結月はサドルを上げる。


「十分です」


ヘルメット装着。


発進。


デモ隊の流れは速い。狭い道で押し合えば転倒事故も起きる。


結月は真正面から突っ込まない。


競輪で培った“ライン読み”を使う。


人の流れを見る。


重心を見る。


歩幅を見る。


そして――円弧を描く。


ママチャリで。


集団の外周を高速で周回。


「なんだあれ」


「速っ」


狭い路地を滑るように回り、自然に進路を変えさせる。


ハンドルを少し切る。


ベルを鳴らす。


チリン。


場違いな音。


だが視線が集まる。


その瞬間に、前へ出る人の流れを横から遮断。


力で止めない。


“流れを曲げる”。


競輪の包囲走。


デモ隊の一部が気づく。


「囲まれてる?」


囲んでいるのは――


ママチャリ一台。


結月は声を張る。


「押さないでください!危険です!」


冷静、的確。


動揺はない。


再び円を描く。


包囲範囲が徐々に縮む。


押し合いが減る。


怒号が静まる。


ヒロインたちが歩行で追いつき、補助。


最終的に、デモは自然に停止。


衝突ゼロ。


怪我人ゼロ。


静かに収束。


沈黙。


誰かが呟く。


「ママチャリ……」


結月は息を整えながら言う。


「ライン取りです」


隼人補佐官が頷く。


「理にかなっている。接触なしで群衆制御」


唯奈が蒼牙2000・改のハンドル越しに言う。


「次は入れる道を作っておきます」


蒼牙2000・改が低く唸る。


『人力、恐るべし』


結月はママチャリを返却する。


商店街のおばちゃんが言う。


「姉ちゃん速いなぁ」


「普通です」


普通じゃない。


まどかがぽつり。


「だんじりより速かったんちゃう?」


結月は少し笑う。


「だんじりは押しますけど、自転車は回します」


その日の映像は記録に残る。


武器も装甲もいらない。


ただのママチャリ。


だがそこには、競輪で磨いた技術と冷静な判断があった。


暴走を力で止めない。


流れを変えて静める。

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