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ヒロインズ・リンク 〜戦隊ヒロインプロジェクト〜  作者: スパイク
プロローグ

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614/719

ペダルは止まらない。山を越えて命を運べ

中国地方のとある山間部。


その日、記録的豪雨によって大規模な土砂崩れが発生した。山肌が崩れ、道路は寸断。孤立した小さな集落があるという報が入る。


「負傷者あり。止血剤と応急処置キットを至急搬送せよ」


無線が緊迫する。


山口唯奈(茨城)が彼氏以上の存在という相棒のドリームトラクター蒼牙2000・改(愛媛)のエンジンを唸らせる。


だが、一本道の手前で全員が沈黙した。


道が――消えている。


蒼牙2000・改がスピーカーから低い声を出す。


『無念です』


伊吹真白(岐阜)のカンガルーマークのトラックも立ち往生。


「これは……到底無理ですね」


隼人補佐官(東京)が歯を食いしばる。


徒歩では時間がかかる。負傷者は出血が多いという。


その時だった。


「私が行きます」


大西結月(香川)が前に出た。


「自転車なら、抜けられます」


用意された業務用カーゴバイク。後部に医療キットを固定する。


ぬかるんだ山道。


崩れかけた斜面。


細い橋。


誰かが言う。


「危険すぎる」


結月はヘルメットをかぶる。


「競輪よりは、優しい道です」


それはたぶん違う。


だが目は真剣だ。


スタート。


ペダルを踏む。


泥が跳ねる。


前輪が滑る。


体幹で修正。


腰はもう万全。怪我を乗り越えた身体は強い。


一定のリズムで回す。


焦らない。


心拍管理。


「一定、一定」


独り言。


途中、倒木。


担ぐ。


カーゴを押す。


息が上がる。


だが止まらない。


ヒロインたちは無線越しに固唾をのむ。


みーちゃん(愛媛)が呟く。


「結月……」


唯奈が蒼牙2000・改のハンドルを握りしめる。


蒼牙2000・改がまた言う。


『彼女は、人力の希望です』


なんだそのポエムは。


やがて、崩落区間を抜ける。


目の前に集落。


人影。


「来た!」


住民たちが駆け寄る。


「ヒロインだ!」


結月は息を整えながらキットを渡す。


「まず固定して、止血剤を。焦らないで」


声は落ち着いている。


応急処置が始まる。


数分後。


安定。


安堵。


集落の空気が緩む。


「ありがとう……」


結月は汗だく。


だが笑う。


「間に合ってよかった」


無線。


隼人補佐官。


「任務成功。帰投できるか?」


「帰りは下りです」


それはそれで危険。


下山。


慎重に。


滑らない。


制動。


体重移動。


見事に帰還。


ヒロインたちが迎える。


真白が拍手。


唯奈が抱きつく。


蒼牙2000・改がエンジン音を少し上げる。


『大西結月殿、感謝します』


結月、思わず吹き出す。


「トラクターにお礼言われる日が来るとは」


隼人補佐官が真顔で言う。


「今日のMVPはお前だ」


結月は少し照れる。


「ペダル踏んだだけです」


誰かが言う。


「それができるのがすごい」


山間に夕日が差す。


派手な戦闘ではない。


爆発もない。


だが命は救われた。


結月は思う。


競輪でゴールできなかった悔しさ。


今日は、ちゃんとゴールできた。


しかも、人を運んだわけじゃない。


“希望”を運んだ。


蒼牙2000・改が最後に一言。


『次は共に走りたいものです』


結月、笑う。


「道があれば、ね」


ペダルは止まらない。


それは、命を繋ぐための回転だった。

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